その九 ニートの扉
「はい。薬草たくさん取ってきたわよ」
「確認しました。こちらが今回の報酬です。クエストに書いてあった数よりも多かったので少しプラスしてますよ」
「それは助かるわ。ありがとね」
「いえいえ、また来てくださいね」
「ええ明日も来るわ」
クエストのクリア報告を終えたのだろう、ミノルが何か金属みたいな物を持ってきていた。
「ミノルの持っているそれ何だ?」
「かつはこれも知らないの!?これはお金よ、お金。お金も知らないなんてあんた本当にやばいわよ」
「何だよその言い方。俺はこの島に来たことないんだから知るわけ無いだろう」
にしてもこれがお金か。
金貨や銀貨見たいな感じで日本とは少し違うようだな。
「分かってるわよ。しょうがないから教えてあげる。この世界でのお金の単位はガルアって言うの」
「ガルアってなんか言いにくいな」
日本で言うところの円か。
やっぱ最初はちょっと違和感あるな、多分金を払うときたまに円って言ってしまうなこれ。
でもそのうち慣れてしまうんだろうけど。
「まあこのお金の単位は王様の名前なんだけね」
「なるほど、王様が自分の名前をお金に残したかったから入れたって事だな」
この島には王様がいるみたいだな。
するとミノルはお金を机に並べ始めた。
「そういう事、それでさっきの話に戻るけど、ここに金貨があるじゃない。この金貨1つが銀貨1000ガルアの価値があって、この銀貨1つは銅貨100ガルアの価値があって銅貨は1ガルアって事」
まあ要約すると金貨が千ガルアで、銀貨が百ガルア、銅貨は1ガルアって事だろう。
「なるほど、だいたい分かった」
「それじゃあ問題、ここにガルア金貨10枚と銀貨200枚あります。さあ合計何ガルアでしょう」
「いきなりだな。えっと、金貨一枚に付き銀貨1000ガルアだから………3万ガルアだ!」
「正解よ。はい、正解のご褒美に半分上げる」
おれはミノルから15000ガルアを貰った。
「いいのか貰って?」
「あんたもクエストやったんだから上げるに決まってるでしょ。それで今日休む宿探しなさい」
何か初めての仕事で給料貰ったみたいだな。
ていうか今回のクエスト薬草1つに付き100って書いてあったからおよそ300個も取ってきたのか。
改めて考えるとすごい取ったな。
「ありがとう………って今日休む宿ってなんだ?」
「何って、かつは今日野宿するの?今日休むための宿が必要でしょう。だからそのためのお金よ」
それは分かるのだが……
「ミノルの家に泊めてもらえないのか?」
「絶対ヤダ!」
「ええ……」
そんなに嫌がられると傷つくのだが。
でも確かに今日知り合った人を家に入れないか。
ましてや男なんて泊まらせるわけ無いよな。
ミノルを頼ってばっかだし少しは自分でやんなきゃな。
「分かったよ。宿は自分で探すよ。今日は色々ありがとな、またどこかで会おうぜ」
俺はミノルに別れの挨拶をして協会を出ていった。
さあまずは宿探しだな。
15000ガルアで泊まれる宿はあるのだろうか。
まあ探して行けばそのうちあるだろう。
ーーーーーー
「無理だね」
「いや、そこを何とかお願いしますよ」
「いやいや無理なものは無理だよ。第一そんな金でよく街を歩けるな。15000ガルアじゃな〜んにもできないよ。さあ帰った帰った、営業の邪魔だ」
「分かりました……」
現在宿探し難航中。
これでもう五件目だ。
正直舐めていた。
宿なんて探せばすぐに見つかるだろうと思った俺がバカだった。
このにゃんこ島はとにかく高い。
食べ物も道具も服も宿も挙げ句の果によくわからんガラクタみたいな道具すら買えなかった。
「腹減ったな〜」
このままじゃ宿どころか餓死してしまいそうだ。
ミノルに助けてもらおうとしてもどこにいるか分からないし。
「俺の異世界生活まさかの餓死で終了ってそんなダサい終わり方だけはやだな」
だけど今日一日何も食べてないからもう体力の限界だ。
俺はそのままお腹を押さえながら倒れてしまった。
「誰か〜食べ物をくれ〜」
俺の人生は所詮こんなもんか。
まあ少しは楽しかったかな。
俺はゆっくり目を閉じ………ん?何だ目の前に誰かいるのか?
俺は最後の力を振り絞って目を開けた。
「食うか?」
そこにはところどころ泥で汚れている薄汚いおじさんが立っていた。
異世界生活の前にニート生活の扉が今勢い良く開いた。
《ただ今絶対かつ魔力レベル1 覚えた魔法ゼロ》




