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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第六章 ガルア様と黒の魔法使い
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その七 洞窟の宝石

「おい、起きろ!」


俺は寝ている所を知らない男に起こされる。

さっきもそうだけどやっぱり人間しか居ないみたいだな。


「う〜ん……何だよ」


起こされるのが厳ついおじさんだなんて嫌な目覚めだな。


「仕事の時間だ早く来い」


そう言って、後ろの拘束器具を壁から取り外し一時的に自由に慣れたと思ったら両手を前の方に出し鎖でつなぐ。

突起部分を外して後ろと前にも鎖で繋がれるのか。

便利なものだな。


「おい、行くぞ。早く歩け」


俺に繋がれている鎖を持ち後ろから俺が着いていく。

何かペットみたいで不快な気持ちになるが今の俺には抵抗する気力が無い。

俺は素直に着いていく。

声が聞こえないのが気になって牢屋の方を見てみると人がいないことに気づく。

すると牢屋の場所から少し歩いた所に扉があった。


「この扉を開けろ」


そう言って目の前の扉を俺に開けさせようとする。

俺は黙ってそれに従い扉を開けた。


「こ、これって」


中は部屋になっておらずごつごつの岩場で出来ている洞窟がそこには合った。


「何で洞窟がこんな所に……」

「お前がそれを知る必要はない。早く入れ」


中に進んで行くと石に何かを叩き付ける音が洞窟内に響き渡る。

それがバラバラに次々と聞こえてくる。

もしかしてさっき牢屋にいなかった人はここで仕事ってやつをやらされているのか。

すると奥に進むに連れて案の定ツルハシで岩を打ちつけている半獣が所々で仕事をしている。


「止まれ」


俺は荒々しく削られている岩の前で止められた。


「お前の仕事場はここだ。毎日ここを掘れ。一旦手錠を外すぞ」


すると手錠が男の手によって外される。


「扉を出る時また付けるからな。それとこれが道具だ」


そう言って道具を渡される。

道具はツルハシとタオル、そして少し大きめのバケツだった。


「掘って何するんだよ」

「鉱物を取ってもらう。つまり宝石を掘り起こせ。このバケツ1杯がノルマだ。それじゃあ、サボるなよ」

「え、ちょ―――!」


そう言ってその場を去っていってしまった。

なんつーマシンガントークだ。

話に入る事すらできなかった。

俺はとりあえず持っている道具を確認した。


「結構頑丈そうなツルハシだな。これなら壊れる心配は無さそうだけど問題はバケツだよな」


このバケツ1杯にするのがノルマって言ってたが多分いかなかったら罰とかあるんだろうな。


「いや、このバケツを1杯にするのは無理があるだろう」


洞窟を進んでいる時に周りの人のバケツをちらっと見たがやっぱりそんなに溜まってる様子はなかった。


「しかも結構汗かいて頑張ってたのにそこが見えるか見えないかくらいしか集められないなんて、拷問かよ」


すると誰かがこちらに歩いて来た。

猫耳が付いていないのを見ると人間か?

辺りを見渡しながら歩いているな。


「なるほど、さぼってるやつが居ないか見回りしてんのか」


俺はすぐに作業をする格好をした。

タオルを首に巻き、バケツを横に置き必死にツルハシで岩を削る。


「ていうか!これ、どれが宝石なんだよ!」


正直素人目じゃ宝石を見分けられる気がしない。

このやり方すらあっているのかも分からない。


「こいつら!いったい何が目的なんだよ!」


だが今の俺にはそんなことを暴く力も無い。

ここは大人しく従うしか無いのだ。

すると昔の自分に戻ったようで無性に情けない気持になった。

その時にツルハシに水が当たった。


「………!?はは……情けねえ」


変わろうと努力した結果、昔と変わらず奴隷のような立場だ。

その時に更に涙が溢れツルハシに染み込んでいく。


「ぐすっ……情けない……情けなさすぎだろ………」


俺は涙を流しながらツルハシをただただ振り続けた。


――――――――――

3時間後


「休憩は1時間だ。その後また来るから準備しとけよ」

「……………」


俺は返事をする気力すらなくなるほどヘトヘトだった。


「逃げるなんて考えるなよ」


そう忠告して牢屋の鍵を閉めた。


「疲れた………」


俺は疲労からくる睡魔に抗えられずそのまままぶたを下ろした。


「ナイトさん!ナイトさん!」


誰かの声が聞こえる。


「ナイトさん!起きてください!!」

「う〜ん……あと5分だけ寝かせてくれ」


俺はうるさい声から離れるために出来るだけ顔を遠ざけて寝る体制に入る。


「そんな!守ってくれるって言ってくれたじゃないですか!」

「守る……」


寝ぼけ気味に聞こえた言葉を口ずさむ。


「守る……守る?守る!そうだ、守るだよ!」


俺はその言葉の意味に気付き飛び起きる。

だが勢い余って前のめりになってしまい壁と繋がれてしまっていた拘束器具に腕を持ってかれ思わず動きを止める。


「痛!あぶねー肩脱臼するかと思った」

「ナイトさん!起きてくれたんですね」


俺は痛む肩を気にしつつ声のする方に顔を向ける。


「ルージュ!目覚めたのか。よかった……心配したんだぞ。体の調子とか大丈夫なのか?」

「はい、大丈夫です。ただ眠らされただけなので」


顔色もそこまで悪くないし怪我したところもあまり見られない大丈夫そうだな。


「それにしても驚いたよ。急に居なくなったからめちゃくちゃ心配したんだからな。ま、俺も捕まったから人のことあんまり言えないけどな」

「そのことはすみません。食べるのに夢中になっちゃって。でも助けに来てくれて嬉しかったです。それでどうやって脱出しますか!」


希望の眼差しで俺を見てくる。

まずいな、脱出の方法は全然思い付いてないんだよな。

それに今の俺にはそんな力はないんだよな。


「あ、えっと………そのことなんだけど」


俺は一瞬ためらったがここは本当のことを言ったほうがルージュの為だろう。

少しばかりの罪悪感を持ちつつ俺はルージュに自分の現状を話すことにした。


「実はルージュお前に言わなきゃいけない事があって。俺はもう魔法が使えなくなっちゃったんだ。だから………」


これ以上は言葉が出なかった。

怒ってるかもしれない、守るって約束したのにって言われるかも知れない。

俺は恐る恐るルージュの方を見た。


「えっと……どういうことですか?」


まさかのルージュは感づいていなかった。


「え、ちょ、今の聞いて何にも思わなかったのか」

「す、すいません。あんまりよく分からなくて」


少し言葉が難しかったか?

いや、これはもう遠回しに言うんじゃなくてはっきりいよう。


「つまり、俺はもうお前を守ることができないんだよ。約束したのにごめんな」


今度こそ怒られるかもしれないな。

こんなはっきり言ったんだ、流石に理解しただろう。

俺は再び恐る恐るルージュのことを見た。

今度はより覚悟を決めて。


「えっと………ごめんなさい。やっぱりよく分からないです」

「え?分からない?いやだからもうルージュのことを守れないんだって!分かるだろ!?」


何で理解してくれないんだ。

もしかして理解したくないのか。

俺が必死に訴えているとルージュは首を傾げた。


「だって魔法が使えなくてもナイトさんはナイトさんです。私が守って欲しいのは魔法が使えるナイトさんじゃなくてナイトさん自身ですよ」

「…………!?ルージュ、お前……」


俺はルージュの言葉を聞いて思わず吹き出した。


「はは……ははは!」

「ちょっとナイトさん何で笑ってるんですか!私変な事言いましたか?」

「いや、違うんだ。ごめんごめん。まさか子供に気付かされるなんてな」


俺は涙目になるがここはぐっと我慢した。


「子供って言わないでください」


そう言ってルージュは頰を膨らませる。

怒ってるのかな?

でも怒ってるように見えないな。


「ごめんなルージュ。俺ちょっと悲観的になってたよ。俺は俺だ。魔法が使えなくってもそれは変わらない」


昔の自分に戻ったと思った。

でもそれは違った俺は昔の状態、魔法がなくなった状態に戻っただけで、今の俺は変わってはいない。

なんでそれに俺は気付かなかったんだ。


「よし、ここを脱出しよう!」


逆にこれは好都合だ。

昔の自分を変えられるチャンスだったってことを。


「はい!脱出しましょう!」


昔のやつに思い知らせてやる俺はもう、無力な絶対かつじゃないってことを!


「それじゃあ、脱出する計画を立てよう」

「はい!でもどうすればいいんでしょうか?私とナイトさん捕まってしまってるし」

「そうだな。まずはこの拘束器具を何とかしないとな」


俺は何か外す方法が無いか辺りを見渡す。

だがここは脱出させない為に余計な物は置かれていない。

物を使っての脱出は無理だろう。

何か一瞬でもいいから外れる瞬間はないのか。


「ん?ちょっと待てよ。そう言えば外れる瞬間あったな」

「本当ですか?」

「ああ、だけどこれは俺にしかチャンスは来ない。だからルージュは合図を送ったら騒いでくれ」

「わかりました、ナイトさんの為に頑張ります!」


ルージュは力強く頷いた。


「よし、それじゃあ合図はえっと……ウインクでいいか」

「分かりました。ウインクですね」


そう言ってルージュは必死にウインクの練習をする。


「ルージュ、やるのは俺だけ。お前はやらなくていいんだよ」

「そ、そうだったんですね。ごめんなさい」


そう言って恥ずかしそうに頬を赤らめる。

何かかわいい……


「それじゃあ計画スタートだ」


――――――――――

「おい、起きろ。時間だ」


1時間経ったのか男が俺を起こしに来た。

よし、来たな。


「う〜ん……もうちょっと寝かしてくれよ」

「駄目だ作業を再開してもらうぞ」


そう言って壁にくっついている鎖を外す。

その瞬間俺はルージュの方に向けて予め決めていた合図のウインクをする。

それを見てルージュは作戦通り騒ぎ出す。


「な、ナイトさんを離せ!」

「ん?お前いつの間に目覚めたのか」


その時一瞬だけルージュの声で気が逸れる。

今だ!


「おりゃ!」


俺は男の急所の玉をぶん殴った。


「ごふっ!?」

「とりゃ!」


そしてトドメに顎を蹴る。


「ぐっ―――――!!!」


そして壁に頭をぶつけ気絶した。

久しぶりに人を殴ってしまった。

でも腕は衰えていなくてよかったな。


「えっと……あったこれが鍵か」


俺は早速自分の手錠を外した。


「よし、次はルージュだな」


それよりまずロープを取り出そうと後ろのリュックに手をかける。

だがそこには何も無かった。


「しまった、リュック取られてたのか」

「ナイトさん早く助けてください」

「ああごめんごめんすぐ行く」


俺はとりあえずルージュの牢屋を開け、すぐに手錠を外す。


「ありがとうございますナイトさん」

「何言ってんだよ。ありがとうはこっちだよ。それじゃあ早速脱出するか!」



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