その一 祝勝会
「えっと、とりあえず金持ってきました」
「残念ですけど。先程の行為は無かったことにはできません」
その言葉で先程の出来事を思い出す。
「いや、あれは事故ですって言ってるじゃないですか!」
「それにしてもあの状態でワープするのはありえないんじゃありません?」
そう言って金持ちそうなおばさんは扇子みたいな物で扇ぐ。
「いや、だから事故なんですって!」
「そうですよ。これは事故なんですよ」
リドルがそれを言うか!
と言いたいところだがこれ以上変な事をして自体悪化させるわけには行かない。
「私との約束を果たしたからと言ってそんな下劣な行為をするなんて失礼極まりないと思わないのかしらね!」
「すいません。でも私達本当にあなたが思ってるようなことしてないんですよ。私も一応被害者ですしね」
そう言ってミノルは俺を睨みつけてくる。
公衆の面前で恥ずかしい思いをしたのは俺も同じなんだけどな。
「お母さま、約束は約束よ。ちゃんと守ってね」
「………分かってるわよ。あんたに言われなくてもね。平民よ!金を見せろ!」
言われた通り俺は、金を見せる。
「1億ちゃんとあるようね。よく集めたわね。卑劣な手でも使ったのかしら?」
「そんな事するわけないじゃないですか。ちゃんとクエストをクリアして持ってきたんです」
「そう、ならいいわ」
そう言って、中身をロクに確認せずパッと見ただけでうけとってしまった。
「中身をじっくり見なくていいんですか?」
「私をそこらの下民と一緒にしないで。金くらい一目見れば分かるわよ」
少しムカつくが地位が上なのは確かなので文句は言えない。
「それじゃあこれで今回のことは許してあげるわ。2度と会わないことを願ってるわ。もう行くわよ。メイ」
「分かったわ。お母様でもちょっと待って」
そう言ってメイが俺の方に近付いてくる。
「かつっち久しぶりー!元気にしてた?て、あんなことしてたんだから元気もりもりかー!ていうかかつっちって意外と肉食なんだねー!私びっくらんすろっとー!って感じだよ!!」
「だからあれは事故だし、ていうかちょっと落ち着け」
久しぶりに話せて興奮してるのか、めちゃくちゃ早口で凄い量を一気にしゃべる。
そのため俺は落ち着くように言う。
「めんごめんご、久しぶりあったから嬉しくって。でも事故は無いんじゃない?あの女の人の服少しはだけてたよ?」
「何の話をしてるのかな〜?」
そう言ってミノルは笑いながら俺たちの話に入ってきた。
口は笑顔だが顔は笑ってない様子だ。
「いや、全然ミノルには関係のない話だから!」
「あー!かつっちと一緒に居た女だー!」
「ば!?お前何言ってんだよ!」
こいつは空気と言うものが読めないのか!?
「だってさっきかつっちこいつは俺の女だって言ってたから」
そういうとミノルの表情がみるみる内に怒りの表情に変わる。
「ちょ〜っといいかしら」
「ちょ、ちょっと待て!俺はそんなことは――――」
だが、有無を言わさず俺の服を掴み、そのまま引きずられながらミノルに連れてかれる。
「お、おい!違うんだって!助けてくれメイ〜!」
「頑張ってねかつっち!私も頑張るから!また遊ぼうね〜!」
そう言ってメイは金持ちそうなおばさんと一緒にコ車に乗っていった。
「な!?ちょっと待てって!あれは冗談で!」
「冗談?へ〜冗談なんだ〜。冗談にしてはちょっと調子乗ってないかな〜?」
や、やばいこのままだと殴られてしまう!
こうなったらミノルの機嫌をとるしかねえ!
「いや、あれだよ、ミノルって美人じゃん?足もスラっとしててキレイだし、優しいし、スタイルいいしで、完璧な女性だなと思って!つい自慢したくなったんだよ。ごめんな?」
その時、俺の作戦が上手く言ったのか表情がみるみる変わっていく。
「ま、まあそこまで言うなら許してあげるわよ」
ふう……これで何とかこの場を切り抜けられたな。
後はこれを言えば機嫌を取り戻すだろう。
「やっぱりミノルはすごいな!最高の仲間だよ!」
「あ!?」
そう言ってミノルの拳が壁に突き刺さる。
「え?な、何で?」
「何となくよ!ふん!」
そう言って怒ったまま行ってしまった。
「女心はよく分からん」
「かつさん、遊んでないで早く行きますよ」
そう、この後は無事達成できたことを祝って祝勝会をする。
その祝勝会の場所をリドルに頼んだのだが………
「なあリドル、お前のおすすめの店って………魔法協会じゃねえかよ!」
散々連れ回された挙げ句普通の魔法協会に戻って来た。
「やっぱりここが我が家って感じでいいですよね」
「でもよう………」
「食べられるならどこでもいいじゃろ!」
「そうよかつ!文句言わないで!」
なんかものすごく俺が悪党みたいになってるのだが。
「ぐっ!分かったよ。それじゃあぱーっと行こうぜ!」
「「「おおーっ!」」」
俺達はしばらく今日までの勝利を祝って飲んだり食べたりしながら楽しんだ。
「おお〜いかつたのしんでおるか!妾は楽しんでるぞ〜!」
「お前酒臭いぞ。飲み過ぎだ」
それにしてもこの世界は酒の規制が甘いらしいな。
魔法使いは命を懸けることも多いので酒を飲んで辛いのをふっ飛ばしたい奴らが多いのだ。
だからこんなちっこいデビですら飲んでもいいのだ。
「お主は飲まんのか?」
「俺はちょっと抵抗があって」
「なぁ〜にいってんのよ〜!飲みまくれりゃいいのりょ!」
そう言って、おじさんのように瓶を片手に俺の肩を組む。
「ろれつが回ってないぞ飲み過ぎだ」
にしても………酒に酔ったミノル凄いな。
服も少しはだけて何か色っぽくなったような。
「なゃんだ見つめて!」
「いや、別に」
俺が急に目を逸らすと、何が気に入らなかったのかミノルは俺の顔を掴み、自分の方に無理やり向けさせた。
「あ、あのうミノルさん?」
何か顔が近いんですけど。
「かつぅってくちびるおいひそう」
そう言うとミノルの顔がどんどん近付いてくる。
「へ?あ、ちょっと―――――」
そして唇と唇が触れあ―――――
「酒くっさ!」
我慢ならずに俺は、ミノルを無理矢理引き離す。
「むちゅむちゅむちゅ!」
「あーもう!お前は肉でも食ってろ!」
俺は近くに合った肉を手に取り、ミノルの口に無理矢理押し込む。
「う〜ん!うまーい!!」
そう言って、肉を食いながらそのまま行ってしまった。
「はあ……!やっぱり酔っ払いは面倒くさいな」
「大変ですねかつさん」
そう言って、相変わらずサラダが好きなのか持っている皿には山盛りのサラダが乗っている。
「お前はいつも他人事だな」
「面倒ごとは見てる方がいいので。横いいですか?」
そう言って自然と俺の隣に座る。
「お前は酒とか飲まないのか?」
「一応飲んでますよ。ほら」
そう言うとリドルは飲みかけの酒の入った瓶を見せる。
「それさっきミノルが飲んだやつだろ」
「………それよりもかつさんこれからどうするんですか」
何かはぐらかされたがまあ良いか。
「どうするって何が?」
「僕達は正式なパーティーではありません。これでお別れです」
「そう言えばそうだったな」
改めてそう思うと少し寂しい気がする。
「なあリドル、最初ドリー盗賊団を倒すまでって言ってそれで本当にドリー盗賊団を倒せた事は感謝してる。それで約束とは違うけど……もしよかったら俺達の―――――」
「ほらかつも飲むのじゃ!」
すると、デビがいきなり俺の口の中に飲み物を流し込む。
「ぐわあ!げほげほ!いきなり口の中に飲み物を流し込むな!!」
当然俺はむせて飲み物を吐き出してしまった。
やばいまじで溺れるかと思った。
「なぁ〜にそんなひょんきくさいかおしてんにょよ!」
「お前はもうなに言ってんのかわかんねえよ!」
こいつどんだけ飲んだんだよ。
「今日は楽しみに来たんじゃぞ!そんな顔してたらせっかく楽しんでおるのに気分が下がるじゃろ!」
そう言って、デビが俺に酒を渡してきた。
「「のーめ!のーめ!のーめ!」」
そう言って、デビとミノルが煽ってくる。
「ああーもう!!」
俺は吹っ切って酒をがぶ飲みする。
「うえーまず!」
初めての酒の味はなんとも言えない味だった。
これを大人は皆好きで飲んでるのかよ。
「何言っておるのじゃ!これが大人の味じゃろ!」
「飲みまくればいいのにゃー!」
「くそ!もうやけくそだー!!」
この後飲みまくって吐いたのは言うまでもない。




