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8話 底力と成長

「…………懺悔の時間だ」

 月に照らされた妖しき男は死から逃げ延び、殺し屋の前に立ち塞がった。

「ち、窒息したはず…………」

「オレを殺したいならこの身が粉々になるまで粉砕することだな」

 その言葉は鋭く、とても冷たい。

 この男は願いの為に全てを犠牲にする覚悟がある。

 ドルダムは理解した。自分もそうだったから。

「ク、クソォ!よくもドルディを…………弟をぉぉぉぉぉ!!!」

「お前たちに殺された人々もそう思っただろうよ。大切なヒトを失うその気持ち、お前も知れ」

「い、嫌だ!!来るんじゃねぇ!!!」

 ジャックの身体に傷が刻まれていく。

 しかしまるで効いていない。もろともせず近付いてくる。

「お、お前…………痛みを感じてないのか…………?」

「いいやとても痛い。倒れていいならもうとっくに倒れてる。でもな、カトレアはもっと痛かった筈だ。それでもオレを守る為に体を張ってくれたんだ。だから今度は……俺が守る番だ」

 ジャックは一瞬で距離を詰め、ドルダムの手からナイフを奪い取り、背中に突き刺した。

「ガァ"ァ"ァ"ァ"!!」

 ドルダムはあまりの痛みに叫び、光っていたはずの左目の輝きは無くなっている。

「これが彼女の受けた痛みだ。痛いだろう?」

「クソ…………がぁぁぁぁ!!!!!」

 ドルダムの左目に真っ赤な炎が灯り、身体の周りに冷たい風が取り巻き始めた。

 風は辺りの塵を巻き込み、その風がどんな形をしているのかジャックに理解させた。

「へへ……見えたろ。これが俺の能力だ。塵を使った刃は応用で、本来は風を操る能力だ。だからなァ……!」

 塵を巻き込んだ黒い風はドルダムの身体を覆い、黒い身体の中で目だけが禍々しく光っている。

「……俺はすぐに死ぬ。だがその前にお前だけは殺す。この矛にも盾にもなるドルディの灰を取り入れた風の鎧で、お前を殺す」

「やってみろ……」

 ドルダムは纏った風の力で加速し、霧を掻き消し、そのまま真っ直ぐジャックの元へと突っ込んできた。

 ジャックはそのまま右ストレートを打ったが、風の力でいなされてしまった。

「それだけか…………?能力で戦えよォ!ドルディを消し去った時みたいにさァ!!あぁ……出来ないよなァ!暴風で火は意味ないもんなァ!!ヒャハハ!!!」

 回し蹴りをジャックに直撃させ、ジャックをふっ飛ばし、壁に激突させた。

「さっさと抵抗しろよ……ホラ、死ぬぞ」

 ドルダムの周りに風で出来た塵のナイフが3本形成され、3本はジャックの腹に向かって放たれた。

 ナイフは腹に傷を付け、ジャックは血を流し、目の光は失われている。

「ガバッ…………!」

「この出血量だともう終わりだな」

 ドルダムは能力を解き、背中からナイフを引き抜いた。

「グッ…………痛ぇ……痛ぇけど……それもあとコイツを殺すまでだ…………さようならっ」

 ジャックを刺そうとナイフを振り上げた。

「サヨナラはどっちだと思う?」

「何!?」

 ジャックは燃え盛る炎を出現させた。

 その炎はドルダムの体をじわじわと殺していく。

「お前が痛みを振り切って立ち上がるのを見て思ったんだ。死にかけのふりをすれば良いってな。それで油断したところを攻撃すれば絶対に殺せるって。ヒトの体は不思議だよな」

「感覚が…………無くな……」

「沢山のヒト達を殺したその罪、地獄で懺悔し裁かれろ」

「俺は……俺達は正しいことをしたんだ…………その行動に間違いはなかった……殺人を殺人で返しただけだ……後悔はない……もう抵抗する力も無いんだ…………早く殺せ」

「それも1つの生き方か。勉強になったよ、ありがとう」

 炎の勢いが強まり、ドルダムの姿は灰へと変わり、風で散った。

 命は簡単に散った。

「障害は無くなったが仲間も…………これからどうしようか……?」

 初めて出来た仲間を失い、途方に暮れる。

 この街のことも何もかも知らないのだから。

「とりあえずカトレアの遺体をどこかに…………は!?」

 360°見渡しても元あった場所に遺体がない。

 血の後もすぐに途切れて探す事も出来ない。

「まさか持って行かれたのか……?だとしたら」

「だとしたらどうするつもり?君焦り過ぎよ」

 後ろから親切にしてくれたあのヒトの声がする。

 ゆっくりと振り向いてみた。

「……カトレア…………死んだんじゃ?」

「勝手に殺さないで。まったく……」

「アレ?その目は?」

 カトレアの右目が緑色に光っている。

「コッチは回復の能力。私はもう1つ自己再生能力も持ってるの。君がゆっくり回復するスキを作ってくれたから今立ってられるのよ」

「よかった……本当に良かった…………あれ?地…………面?」

「ちょっとしっかりしなさいよ!……能力の過度な使用のせいか。まぁ頑張ってくれたんだし、それぐらい良いわよね…………ありがとう」

 カトレアから感謝の言葉が漏れた。

 その声は残念ながらジャックには届いていないが。

 今回の戦いで誰かの犠牲で誰かの幸福が生まれる事をジャックは学習した。

 また1つ成長を遂げ、カカシは人へと近づいていく。

 

 







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