ヒトの普通はカカシにとってのユメである。

カカシ篇

7話 女医の因縁と決意

　能力者達の目は霧の中でらんらんと輝き、殺し屋達は殺気を放っている。

「おいカボチャ頭、目が光ってないと言う事は能力者ではないのか？」

「オレが発動してないってだけかもしれないぜ？」

「カンケーないね！能力使われたって僕達の方がつよいんだから！」

　ドルディから溢れる自信が2人の実力を物語っている。

「気をつけなさいジャック。見た感じアイツらかなり強いわよ」

「なら逃げたいね。ホント」

「出来るならとっくに逃げてる」

「お話中すまないが、殺させてもらう」

「じゃあね！おかしな人達！」

　ドルディの身体が膨れ上がり、スーパーボールの様にビョンビョン跳ねながらジャック達に近づいて来た。

「ジャック止めて！」

　ジャックはカトレアの指示通りドルディを受け止めた。

「力はある方でね。残念だったな、おかしな2人組」

　ジャックは受け止められたが、何故かドルディの丸い腹に腕が沈んでいく。

「何だこれ！？ヤバイヤバイどんどん沈んでいく！」

「僕の能力を知らないからそうなるんだ！僕の能力は触れた物を自分の体に沈み込む能力さ！おバカさん！！」

「ジッとしてなさい！絶対助けるから！」

　カトレアは白衣から拳銃を抜き、ドルディに撃ち始めた。

　銃弾はドルディに着弾したが、弾丸を沈み込み、何事もなかったかのように話し始める。

「残念だったねお医者さんの君、僕には効かないよ。ウデは良いけどさ。ところでドルダムの事忘れてない？どこにいると思う？」

　カトレアは能力を使い、ドルダムを探している。

「おいおい、探す必要なんてないだろう？ずっとここにいたんだから」

「確かにいたわね。でも、それ以上近づかないで。殺すわよ？」

　カトレアはドルダムに銃を向け、近づけさせないようにしている。

　構わずドルダムは距離を詰めていく。

「近づかないでといったはずよ！」

「君に俺を殺すのは不可能だ。何故なら君の能力は戦闘向きじゃないからだ、カトレア観測手」

「何処でそれを！ギャング程度の調べられる情報じゃないはず……」

「君のいた部隊に俺達の親が殺されたからに決まってるだろ。なぁ？戦争犯罪者様よぉ」

　ドルダムの怒りが伝わって来たかのように辺りの空気がピリピリしだした。

「私だって生きる為に仕方がなかった。それも伝わらないかしら？」

「無理だね……事情はどうであれ君達に僕等のパパとママが殺されたって事実は変わらないんだから……」

　ドルディもドルダムも怒りで冷静さを失いかけている。

　今にもカトレアを殺しそうだ。

「その敵討ちの為、観測手様には死んでもらう。さらば」

　ドルダムがそう言った途端、カトレアの腕からポタポタと血が滴り始めた。

「痛ッ…………視認できない刃か」

「五月蝿いぞ観測手者。両親の痛みを知れ」

　躱してはいるが、それでも躱しきれない攻撃がカトレアに傷をつけていく。

　カトレアの白衣は段々血で赤く染まっていった。

「躱しても躱しても次が来て……キリがないわね…………だけど！」

　カトレアはドルダムに向けて発砲した。

　しかしバキンッ！という音と共に弾丸は軌道を変え、ドルダムの横の建物へ着弾した。

「それだけか。じゃあ地獄でしっかり罪を償え」

　ドルダムが指をパチンと鳴らした途端、カトレアの身体は切り傷だらけになり、カトレアはその場で倒れた。

「…………グッ……ジャックごめ…………」

「まだ死んでないのか」

　懐から取り出したナイフの冷たい一撃がカトレアの背中に突き刺さる。

　カトレアは何も言わなくなった。

「やったねドルダム！これで願いは叶ったね！」

「喜ぶのはまだ早い。そろそろ君にもご退場願おう。ドルダム、やれ」

　手とナイフに付いた血をハンカチで拭いながらドルダムは言い放った。

「じゃ、窒息しなよ。カボチャ頭君」

　ドルディがテンション低めに言い放ち、ジャックの身体は8割沈んだ。

「最後に言い残す事は？」

「…………地獄で燃やされ懺悔し続けろ」

「僕達は間違いなく地獄に落ちるだろうね。地獄があったらの話だけど。じゃあバイバイ」

　ドルディはジャックの身体を完全に沈み込ませ、ジャックの意識は途絶えた。

　________ご主人から能力を頂いた能力を腐らせるおつもりですか？

　頭の中から何処かで聞いた声がする。

　________強く念じれば貴方の能力は応えてくれるでしょう。

　今はその言葉に従わなければならない気がする。

　________女医を助けたいのならばやるしかない。

　そうだ。自分は女医を、カトレアを助けなきゃいけない。

　その為には目の前の奴らを____________殺すしかない。

「どうだドルディ？死んだか？」

「意識を失ったって感じかな。すぐ死ぬよ」

「そうか、帰ったら今日という日を祝おう。ケーキを買って」

「うん！ママ喜ぶだろうなぁ……」

　兄弟は喜びを分かち合い、忘れかけていた幸福を噛み締めている。

「こんな喜びはいつ以来だか………………待ったドルディ、焦げ臭くないか？」

「…………え？」

　辺りにはタンパク質が焦げる匂いが漂っている。

「待ったお前からだ！お前焦げ臭いぞ！」

「僕から？そんな訳…………まさかアイツが……熱い！熱い！！アツイアツイアツイアツイィィィィ！！！！」

　ドルディの身体から火柱が上がった。

　その炎はジャックを沈ませた腹から立ち昇っている。

「ド、ドルディ………………」

　ドルディは無残な燃えカスへ成り下がった。

　燃えカスとなったドルディの身体の中から人型の生き物が現れた。

　その人型の生き物の頭は黄色いカボチャで、右目は炎で燃え盛っている。

「カ………………カボチャ頭………………」

　人間の燃えカスを踏み、ドルダムを見下ろす男は、月に照らされてこの世の者とは思えない妖しさを放っている。

「…………懺悔の時間だ」

　その男ジャックは自分の大切なヒトの命を守るために、命を奪う。