2話 運命と決断
続きます。誰かの目に止まってくれることを願って
「取引を始めよう。人間になりたいカカシ君」
畑に居たはずなのにいきなり知らない部屋に招かれ、そこで願いを叶えてやるという男と取引をしようとしている。
ジャックは状況が飲み込めず、頭のカボチャが破裂しそうになっていた。
「状況が飲み込めていないのかね?これでは先が思いやられるな。ジョセフィーヌ、書斎の2番の棚にある書類を持ってきてくれ。あと下から3段目にある本も頼む」
ジョセフィーヌと呼ばれる白髪に赤い目が印象的なメイドの少女は靴をコツコツと鳴らしながら壁を伝って部屋を出ていった。
「すまないね。彼女は目が見えていないのだよ。客人の前で失礼した」
(いや、それは良いんだが、ココは何処なんだ?)
「その話をする前に、君に声帯をプレゼントしよう。それで声が出せるはずだ」
それを聞いた途端、喉に違和感が生じた。
木の棒であるはずの喉に不自然な膨らみができた。
これで本当に喋れるのか分からないだけでなく、声の出し方が分からないのでジャックは不安になっていた。
分からないが今思っていることを念じてみることにした。
「どうスれば喋れルンだ?」
「自分で解決出来たじゃないか。まだうまく使えてないようだが、これなら他の変化にも耐えれそうだな」
初めての体験だった。
あの老人のようにはっきりとはまだ喋れないが、それでもカカシである自分が声を出せるようになったことで「人間にする」といる言葉に信憑性が高くなり、同時にジャックの期待も高まった。
「さて、ジョセフィーヌが書類を持ってくるまでに私の話をしておこう。私はマキーナと呼ばれている"悪魔"なのだよ。もう悪魔としての仕事はしていないがね。今は2つの運命を持つ者を私の部屋に招待し、望む力を与え、協力をしているのだ」
「フたツの運メい?」
「そう、2つの運命だ。1つ死ぬまでの一生の運命。もう1つは命を擦り減らして戦う運命だ」
「ちょっと待て、戦うだと?オレは人間になりたいだけなんだが?」
「感情的になると言葉も鮮明になるのだな。君は私の力を遺憾なく発揮してくれそうだ」
「はぐらかすなよ老人。オレは何故戦わなきゃいかんのだ!いいから教えろ!!」
「書類と本をお持ちしました、ご主人様」
扉の開く音で会話が中断され、ジャックは少し冷静になった。
それまで話していたことを思い出し、少し感情的になり過ぎたと感じたジャックには罪悪感が芽生えていた。
「あぁ有難うジョセフィーヌ。さて話を戻そうかジャック」
「スまなカった。アンな口をキいて」
「構わんよ。そんな事より今から言うことに答えてもらう。契約の為にね」
とうとうこの時が来たかと喜ぶ反面、ジャックには命を擦り減らして戦うという言葉に不安も感じていた。
「君は1人の人間になる力がほしいか?」
「ソうダ」
「君はその力を操り、運命を乗り越えたいか?」
「もちロんダ」
「最後に、君は自分の為に全てを捨てる事を誓うか?」
人間になる為なら自分は全てを捨てたって構わない。
立つだけの仕事も、変わらない景色も、何もかも。
「もちろんだ」
「おめでとう。ここに契約は成立した。躊躇せず全てを捨てたヒトデナシの君の願いを叶えよう。人間生活を楽しみたまえ!私は何時でも君を見ているからな!!フハハハハ!!!」
高笑いと共に又しても景色が変わり、気づけば霧の中にネオンが光る怪しい街にいた。