表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/55

16話 今後方針と探偵視点

執行者についての報告が始まった。

キャロルが仕切る。

「まず奴らの正体についてだが、ヤードの別働隊で間違いないだろう。能力に関しても今まで遭遇した別働隊と瓜二つの煙の能力だった」

「前にも戦った事が?」

ジャックが割り込む。

「そうだ、レジスタンスは何度も戦ってるよ。今の政府の敵組織なんだから当然だろ?」

「確かに」

「で目的についてだが、ジャックの話から推測するに、恐らく能力を手に入れた子供達の奪還と不要なサンプルの処分だろう」

「キャロル!そんな言い方しないでもいいでしょ!!」

「いいんです。本当の事なので……」

リアとアルクが悲しい目をしている。

「ぼ、ぼくらにチカラがあったからみんなが死んだんだ。みんなぼくらのせいだ……」

「そんなことないわ。少なくとも貴方達が悪いんじゃない」

カトレアが子供を気にかける。何か子供達に思うところがあるのだろう。

「さっきの言葉は訂正するよ。でだ、これから私達は能力者を募りつつ、ヤードに不利な証拠を集める。こんな命を粗末にするような事を止めさせる為に」

「まだ戦うのね、キャロル……リアとアルクはいいの?」

「はい……被害者は私達だけでいい。もう苦しむ人はいないほうがいいと思うので……」

「ぼくも……そう思います…………」

「子供達が言うなら…………それで良いわよ」

カトレアは不満そうだが、仕方無しに納得する。

「オレも賛成。こんな思いはもうしたくないし」

「賛成してくれてありがとう。明日から活動していくから、今日はもう休め。じゃあ解散」

報告会が終わり、各自部屋へ帰っていったが、ジャックは自室に戻らず、中庭に建てられた簡易墓地へ出向いた。


【シャトー 中庭 簡易墓地】


十日前、中庭の一角に子供達の名前を彫った石柱を建てた。

黄昏時、ジャックはそこの前に膝をついて呟く。

「みんな、この前までここで遊んでたよな。いつも頭から離れないよ」

ジャックは子供達を失った事で深く心に傷が入った。

「ヒトになって初めてだよ。こんな気持ちは。これが悲しいっていうのかなぁ…………」

涙がポツポツと地面に落ちる。

しかし涙というものがジャックは何か分からない。

「あなたも泣くのね。なんだか意外」

カトレアが後ろから口を出す。

「カトレアも悲しいって思わない……のか?」

「悲しいわ」

「ならどうして目から水がでないんだ!!」

「ああ、涙のことね。涙はニ年前に枯れたわ。悲しくても出ないのよ」

ジャックは思い出した。

カトレアが仲間を全員失った事、過酷な殺し合いをしていた事を。

「そうか……オレより辛かったんだな」

「勘違いしないで、悲しみはどれも等しいものよ。辛さはどれも変わらない。私は悲しみを受ける心の器が小さかったから涙が枯れただけ」

「器ってのは?」

「いつか分かるわ。ただ、何時までもそこで泣き続けるよりも、その涙を堪えて次に進んだほうが良いわよ」

「そっか……子供達の為にはそのほうがいいよな。じゃあ行ってくるよ、お前達。オレはお前達の名前を忘れはしない」

ジャックは亡くなった子供達の名を背負って未来に生きると誓った。

「明日からなんだろ?頑張りますか!」

「いつもの君に戻ったわね。じゃ、戻ろうか」

「もしかしてオレに気を使ってくれたのか?」

「……ちょっと心配になっただけよ」

「ありがとう」

カトレアは照れ、ジャックは本調子に戻った。

そんな彼らはの運命は捻れ始める。


【だいぶ前 ノウリミット 繁華街 マグニ探偵事務所】


繁華街のBarカリオストロの上に事務所を構える探偵事務所に時間が舞い込む。

「なぁカステル、あの子の事覚えてるか?」

よれたスーツを着た三十路の男がソファで寝ながら問う。

「覚えてるに決まってるだろ!飲んだ帰り、泣いてたあの娘を保護したのはお前だぞ!マグニ!」

眼鏡をかけ、Tシャツを着た細身の男が小声で喚く。

「あーそうだったーッ頭痛え……」

「俺だって昨日能力使ったせいで頭痛てぇんだよ!で?どーすんだよあの娘!」

マグニの向かい側のソファに、引き取った少女のアリスが座って辺りを見渡している。

「いつまでもぶかぶかのYシャツ着せとく訳にもいかんだろ?どーするんだ?」

「そんなのお前が買ってこいよ。金は出してやるから……」

「金じゃねーよ!オッサンが女向けの服買ったら気色悪いと思われっからやなんだよ!」

「うっせーな、ジャンケンすっぞ」

「いいぜ分かった文句言うなよ!」

「一回勝負だ、いくぞ!」

「「ジャンケンポン!」」

カステルのチョキに対してマグニはグーを出している。

「よーし行ってこい」

「クソが!」

「ちびっ子に聞かせちゃいけません」

「うっせー!!」

カステルがアリスの服を買いに出かけ、事務所はアリスとマグニの二人になった。

「あーアリスちゃんだっけ?汚いところですまんね」

「アリスでいいですよ。部屋は私の部屋より楽しそうな部屋ですね。お友達もいて」

「お友達ねぇ……まぁそうなのかもな。アリスの部屋ってどんなだったんだ?」

「…………ぬいぐるみとかはいっぱいありました。家には沢山人もいたけれど、皆私を真剣に見てくれなくて、そんな家が嫌だったから家出したんです……」

金髪碧眼の人形の様な家出少女は語る。

「親は心配しているんじゃないか?君みたいな女の子……まってろ」

ドアベルが鳴り、マグニがドア開けに立ち上がる。

ドアノブを握った瞬間、ドアが勢い良く開き、マグニはドアに吹っ飛ばされて床に倒れた。

「ドアノブ鳴らしたんだから開けろよ!気が利かねえんだからよ…………どこで寝てんだよ風邪引くぞ?」

「後で覚えとけよクソ野郎」

袋を抱えたカステルに怒りの炎を燃やしながらマグニはソファに座り直した。

「俺が買ってきた服があうといいけど……着てみなよ」

「ありがとうございます。待っててください」

奥の部屋でアリスを着替えさせた。

「どうです……か……?」

アリスはドアの隙間から頭だけを出して恥ずかしがりながら言う。

「洋服を見せてほしいんだが」

「じゃ、じゃあこれで……」

出てきたアリスはスカジャンにGパン、「とらんぷ」と書いてあるダサめのTシャツを着ている。

「おいカステル」

「女物のコーナー行きたくなかったからこれに落ち着きましたが何か?」

「はぁ…………まぁいいよ。今度は俺が行くよ」

「わ、私は好き……ですよ?この服も」

「き、気に入ってくれたしいいんじゃな……」

ドンドンとドアを叩かれる。

「客だといいが」

「カステル出てくれ」

「へいへい」

カステルがガチャリとドアを開けると、丸眼鏡をかけた頑固そうなオバサンが現れた。

「マグニは?」

「大家さん、ちょっと用事があってマグニはいないんスよ」

「嘘つくんじゃないよ!さっさと先月の家賃払わないと立ち退いてもらうからね!!」

大家が来て事務所の空気が凍りつく。

「あー、来月払うから今月は勘弁してくれませんかね……?」

マグニが自ら大家に交渉する。

「またそんな事言って! 大してこの事務所も稼いでないんだから出ていけばいいで…………あら、可愛い子ね〜あんな娘いたの?」

大家がアリスをべた褒めする。

「家出少女ですよ。どうですか?この子に免じて家賃は先送りで」

「…………ケッ!また来るよ」

大家は仕方無しに出て行った。

事務所の全員が安堵する。

「さっさと死にゃいいのにあのババア……!」

「口に出すもんじゃねーよ。どこで聞いてるのか分かんねぇんだから」

「聞こえてるよ!!!」

「ほら」

マグニとカステルの愚痴に大家が外から大声で叫ぶ。

「ホントどっから聞いてんのかな?」

「あの、さっきのは……?」

「悪いおばさんだよ。この建物の管理人さ。もうほんとにうるさくて……」

カステルの説明中にまたしてもドアベルが鳴る。

「客かな?アリスは着替えた部屋に居てくれ」

「は、はい……」

アリスが部屋に行ったのを確認してから、カステルがドアを開ける。

開けた先には、額に蜥蜴のタトゥーをいれた大男が立っていた。

「ここが探偵事務所であってる?相談があんだけどよ」

「どうぞソファにお座り下さい。話はそれから」

依頼人の話を聞くことから探偵の仕事は始まる。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ