13話 子供達と気配
シャトーにリアと子供達を招いたが、キャロルは自室に引き篭もってしまった。
なんでも子供が苦手らしい。
仕方がないのでカトレアとジャックで子供達の面倒を見ている。
「中庭で走らせてるけどさ、なんで私には子供が寄り付かないのかしら?」
「さぁ?カトレアがピリピリしてるからじゃないか?」
「どうして君みたいなオレンジ髪に黄色の目を持った怪しい人に近づくのはホントによく分からないわ」
「オレだってまさかカボチャの下に顔があるとは思ってなかったよ!もっとこう……黒髪とか?はいっててほしかったよ。おっと、話は後で」
ジャックは子供達にグイグイ引っ張られて行ってしまった。
「ジャックね……さっきの話といいまだまだ分からない事が多すぎるわ……」
【1時間前 シャトー カトレアの部屋】
向かい合って木の椅子に座って、ジャックは少しソワソワしている。
「ジャック、自分の姿を受け止めなさい……」
「え、えぇ…………オレ普通じゃないじゃん……」
カトレアが鏡を見せ、ジャックは自分の姿にショックを受けた。
「オレンジだし……黄色……?柑橘類じゃあるまいしさ……」
「さっきまでカボチャの被り物で歩いてた事に比べれば少しはましね」
「……これじゃ気味悪がられて避けられる」
「見た目の話はここまでにして、貴方の素性を話していただけないかしら?」
カトレアがピリッと冷たい空気を出している。
「普通は私の能力で人間1人程度の事は分かるのだけど、貴方にはそれが効かなかった。何か心当たりは?」
「そうだな……今から言う事を信じてくれるなら」
「信じられる分は信じるわ」
ジャックは自分の知っている事を全て話した。
自分がカカシだったこと。マキーナという悪魔にヒトの体を貰ったことを。
「にわかに信じ難いわね。今の説明ではその体が特殊な体だと推測することしかできないわね」
「身体能力だって普通じゃないしな。軽く5mは跳び跳ねできるし」
「まだまだ謎が多いわね。じゃあ次は」
((だー!!お前ら早く来い!!子守を交代しろー!!!))
キャロルが念話で叫んでいる。どうやら子守が嫌いらしい。
「……行ってあげましょうかね」
「仕方ないな」
2人はそそくさと中庭へ行った。
【現在 シャトー中庭】
ジャックは子供達と鬼ごっこで遊んでいる。
子供達は誰が見ても幸せそうな顔をしている。
「ホラホラ!捕まんないよ!」
子供達は手加減しているジャックを煽る。
「走ってるわね、アイツ。まぁ流石に本気で走らないでしょうけど」
そう言ってすぐ、一人の少年がいつの間にか移動していたジャックに持ち上げられた。
「まずは1人!あと6人!待ってろよ!!」
子供達は1人また1人と捕まっていき、最後の1人もなす術なく捕まった。
「これでオレの勝ちだな」
やりきった顔をしているジャック。
「クッソー!次は絶対勝つからな!」
「フフ、勝てるかなぁ?勝てるとイイね」
「最後に勝つのはこのジョンだ!覚えとけ!」
ガキ大将気質のジョンは走り去っていった。
((子守ありがと。リアを連れて私の部屋に来てくれ))
指令通りリアを連れてキャロルの部屋へ出向いた。
【シャトー 本館3階 キャロルの部屋】
リアはガチガチに緊張している。
「あの、私に何か……?」
「君に聞きたいことがあってね。今からいろいろ質問したいのだがよろしいか?」
「は、はい……」
キャロルが率先して話を進める。
「じゃあまずどうして君が能力を持っているのかを聞きたい」
「私はノウリミットにある……地下施設から逃げてきたんです。その施設では、身寄りのない子供達を使って実験をしていたんです」
場の3人が凍りつく。
身寄りのない子供と言う事は、それを止める保護者が居ないということ、つまり何をしても咎められないという事だ。
「……辛かったろ、もう言わなくていい」
「いえ、言わせてください!」
「なら話してくれ。嫌になったら言わなくていいから」
「はい。実験とは私達に注射して人間とかけ離れた能力を持たせるもので____」
「注射された液体は赤色だった?覚えているなら話して欲しいのだけど」
やはりカトレアの問いかけにリアは怯えて答えようとしない。
「教えてくれないかな?答えたくないのならいいが……」
「……確か赤だったと…………思います」
ジャックの質問には答える辺り、やはり何かしらカトレアに恐怖を抱いているのだろう。
「そうか……やはりアンプルの投薬実験だろうな」
「アンプルってのは確か能力を目覚めさせる特殊な薬だったよな」
「そうね、私の目のような能力を発現させる薬ね。彼女の場合は恐らく何らかの方法で相手が何人の人間を殺めたかが分かる能力だと思うけど」
「そ、その通りです…………だからカトレアさんが怖いんです。本当はキャロルさんも怖いんです……」
リアの声が震える。
振り絞って発言したのだろうと察したジャックはリアを抱きしめた。
「すまなかった。怖い思いをさせた事も、君の気持ちを考えてやれなかった事も」
抱きしめたリアから反応がない。
「ねぇジャック?気づいてる?その子気絶してるって」
「あれ?」
ジャックはカトレアに言われてようやく気づき、リアから離れた。
「あ!ごめん……慰めようと……」
「首を突っ込んで悪いが、2人で子供達を地下へ逃してくれ。招かれざる客が現れた」
キャロルが今までにない真剣な顔で言う。
「ジャック急いで。私の目で視認できるほどまで近付いているわ。早く!」
「わ、分かった!」
ジャックはリアとカトレアを抱えて窓から飛び降りた。
飛び降りた先の庭に唖然としているカトレアを降ろした。
「ほら!カトレア早く!」
「早くとは言ったわ。あ、あなた3階よ……?やっぱ人間じゃないわね……」
「あれ?……なんで外に?さっきまで」
「リア、お願いだ。皆をここに集めてくれ、頼む」
「なんだか良く分からないけど、何かとてつもないモノが近付いてるのは分かります。今すぐに集めてきます!」
リアは走り去った。
「あなたにご執心ね。リアも女の子だわ」
「どういう事だ?」
ジャックは不思議そうな顔をしている。
「いつか分かるわよ。ほら、さっさと子供達を集めて」
「そうだな、じゃあ集めてくる」
ジャックが一歩踏み出すと共に風が吹き荒れた。
「さて、こんな禍々しい気配久しぶりに感じたわ。中々悪い状況ね」
3人は手分けして子供達を集めに行った。
この手分けが最悪の事態を引き起こす事をまだ知る者はいない。