表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
予言の紅星4 上級学校の学生  作者: 杵築しゅん
不思議な新入生 編
13/116

イツキ、先生と呼ばれる

 今夜エルビス(エンター先輩)の部屋に集まっている5人は、エルビスにとって、信用に足る友人たちと言うことなのだろう。

 メンバーは3年生が2人で(エンター・インカ)、2年生が4人(ヤン・パルとあと2人)の合計6人。

 知らない先輩が2年生だと分かるのは、校章の色が違うからで、1年生は茶色・2年生は深緑・3年生は黒の校章と決まっている。初対面の先輩は深緑の校章を付けている。

 校章は革で出来ており、大きさは横3センチ縦5センチ、染色され上級学校の紋章が刻印してある。

 制服は全員同じで、色は濃紺、上着はブレザーである。

 

 2年生以上になると、その革の校章にピンバッジが付けられる。

 専門スキル修得コースの、文官・経済・医療コースを選んだ者はシルバーの丸いバッジを、軍・警備隊・開発コースを選んだ者は、ゴールドの四角いバッジを付けている。

 そして各々の選択コースの認定試験に合格した者は、選択科目の頭文字1字のバッジが追加される。その1文字のバッジを付けている者は、一目置かれ尊敬されることになる。


 目の前のエルビスの校章には、ゴールドの四角いバッジの横に、警備隊コース合格の証の《K》の1文字が、インカ先輩の校章には、ゴールドの四角いバッジの横に、軍隊コース合格の証の、《G》の1文字のバッジが付いていた。

 2年間で認定試験に合格したところも、学生たちから尊敬されるポイントなのだろう。


「いらっしゃい、まだ会っていない2人を紹介しょう」


エルビスがそう言うと2人の2年生が立ち上がった。


 1人はヨシノリ・ビ・マサキ15歳、1082年9月生まれで、マサキの領主である公爵家の次男である。現在上級学校に在学している学生の中では、最も上位の貴族らしい。

 グレーの髪は長く伸ばされ、さらさらと美しい。優しそうな眼差しの瞳は銀色で、身長は170センチくらい。物腰は柔らかく、何処か気が弱そうな気もするけれど、エルビスいわく、正室の息子である長男が優秀なので、のんびり育ちすぎた・・・らしい。


 もう1人は、ミノル・イミグ・ボラス16歳、1081年8月生まれでキシ出身の男爵家の次男。ブロンドの短めの髪に大きな茶色の瞳。身長は180センチと大きく、見るからに武闘派そうである。剣が得意で同郷のソウタ指揮官とヨム指揮官を崇拝している。将来の目標はレガート軍に入隊し活躍することらしい。


「ナスカ14歳です。よろしくお願いしますヨシノリ先輩、ミノル先輩。恐らくインカ先輩から、僕のことはお聞きおよびだと思いますが、僕は武闘派の先輩と違い、頭脳派ですからお間違えなく」


「おいナスカ!俺は勉強も出来る武闘派だぞ。くそー、何時までも首席でいられると思うなよ」


仲の良い同郷の2人の間には、遠慮は無いらしく、いつもこんな感じなのだろ。周りのメンバーも、微笑ましそうに笑っている。ナスカはヨシノリ先輩とミノル先輩と握手をして着席した。



「イツキ14歳です。お2人共よろしくお願いします。僕は裏口入学なので、正直目立ちたくなかったのですが、何故か入学初日で此処に来ることになりました」


イツキは正直に裏口入学だと告げ、恨めしそうに(他の者には表情は見えていないが)ヤン先輩の方に視線を向けた。


「イツキ君はキシ出身の子爵だと聞いたけど、僕の記憶ではイツキ家という名に、聞き覚えが無いのだけど・・・君自身がキシ公爵家直系子爵であるというのは本当なのかい?父親の名前は?」


ミノル先輩は男爵家だが、キシ公爵家直系である《グ》を名に持つ貴族である。当然聞いたことの無いイツキの名に疑問を持った。

 イツキは、キシ出身者に不審に思われるだろうと覚悟はしていた。それ故、この場にキシ出身の貴族が居たことは、イツキにとって寧ろ好都合だった。

 キシ領の貴族の誰か1人が認めれば、堂々と子爵家当主として振る舞えるのだから。


「僕は最近アルダス様から、直接子爵位を賜りました。僕が初代ですから、ご存じ無いのも無理はありません」


「「ええっ?君が直接子爵位を貰った?」」(エルビス・ヨシノリ)

「「「何故?」」」(ヤン・インカ・ナスカ)

「「14歳の君がどうして?」」(パル・ミノル)


見事なまでにハモりながら、イツキの方を見て全員が質問してきた。

 普通、貴族になるのは15歳以上で、目覚ましい活躍や貢献をして、騎士や準男爵位を授かるのだ。

 いきなり男爵位を授かることが無い訳ではない。領主の命を助けたり、国に貢献し国王から認められた場合があるからだ。

 しかし、いきなり子爵位を授かるなんて・・・王族と親族にでもならなければ考えられないことである。


「それは……僕がレガート国に大きく貢献したからだと、アルダス様は言っておられました」


イツキはとんでもない話をしているという実感が無い。元々教会育ちで、貴族の世界に興味など無かったので、それが異例のことだとは分かっていなかった。


「どんな、どんな貢献をしたんだイツキ?」


ナスカは立ち上がって、イツキの両肩を揺さぶりながら質問する。


「もしかして・・・アルダス様の隠し子とか?」

「やめろ!アルダス様はそのような方ではない!」


パルの言葉に、キシ出身のミノル先輩が怒りを込めて叫んだ。


「ちょっと待て・・・イツキ君・・・そ、その前髪を上げてくれないか?」


エルビスは突然立ち上がり、ナスカをイツキから引き離すと、緊張した面持ちでイツキにお願いする。


「まさかエンター先輩、そんなことは・・・いや、まさか・・・でも」


ヤンまで立ち上がり、イツキの顔を見ようと、よろけながら側に寄る。心では否定していたが、イツキという名前に何処か期待していたヤンとエルビスである。

 周りのメンバーは、何事なのかと立ち上がった2人を見ながら、イツキの顔にも興味があり、双方に視線を向ける。


「いろいろとご心配をお掛けして、申し訳ありませんでした。諸事情有りまして諸外国を巡っていました」


イツキは顔を見せないまま、エルビスとヤンがよく知っている声で謝罪する。


「や、やっぱりイツキ先生なのか?本当に?」


ヤンは既に涙声になりながら、震える右手をイツキの肩に伸ばそうとする。


「どうして?な、なんで上級学校なんかに?」


エルビスの声も震えている。ヤン同様にイツキの肩に手を伸ばしてくる。そして2人はイツキに抱き付き、ヤンは涙をポロポロ溢しながら、エルビスは涙を堪えて、抱き締める腕に力を入れた。



「何?何なの?イツキ先生って・・・えっ?本当に?あのヤンの尊敬するイツキ先生なのか?エルビスが言ってた天才のイツキ先生?」


抱き合う3人の様子を見て、軍学校で働いていた頃のイツキ先生の話を聞いていた、インカ先輩とヨシノリ先輩とパル先輩も立ち上がり驚いている。

 事情の分からないミノル先輩とナスカは、呆然と様子を見ながら、どうやらイツキとエンター先輩とヤン先輩は、知り合いだったらしいと理解した。



 イツキは「苦しい、苦しいよ2人共」と悲鳴を上げているが、エルビスとヤンはもう1度力を入れて抱き締めた。



「酷いじゃないですかイツキ先生、どうして最初に教えてくれなかったのですか?名前を聞いた時は、もしかしたらと思いましたが、イツキ先生が上級学校に入学する可能性が全く無かったので、もしかしてと思う気持ちを否定していたんですよ」


ヤンはまだ泣きながら、イツキの右手を両手で握ったまま、少し恨みがましく文句を言っている。


「そうですよ!秘書官も僕もどれだけ心配したか……それより、その髪型は何なのですか?顔が判らないじゃないですか?」


エルビスも泣いているような笑っているような表情で、左手を両手で握ったまま文句を言う。

 両手をがっしりと握られたまま、イツキも嬉しさと申し訳なさで複雑な表情(皆には見えてないけど)になり、なすがまま状態である。


「ごめんごめん。今回僕は、目立たずひっそりと存在感を消した、冴えない学生に擬態して生活する予定だったから、いきなり風紀部役員とかって、正直予定外だった分、どうしたものかと思案しちゃった」


はははっと元気なく笑い、予定が狂ってしまい逆に困ったんだけどと、遠回しに文句を言う。


「ええっ!す、すみません。何か任務だったのですか?」


エルビスは、イツキの仕事を邪魔してしまったのだろうかと青ざめた。


「うん……仕事半分、休憩半分だったんだけど……アルダス様とギニ副司令官には、目立ってなんぼの上級学校で、ひっそりとか無理だと言われてはいたんだ」


イツキは肩を落とし、力なく呟くように言いながら、周りのメンバーのオーラを確認する。

 アルダス様とギニ副司令官の名前を聞いた時の反応に、悪意がないか黒いオーラを放っていないか注視する。


 どうやら誰も、キシ公爵にもギニ副司令官にも悪意は無いようだ。


「ちょっとイツキ、俺、話が全然見えないんだけど……どうやって子爵位を貰ったのかという話は何処に行ったんだ?」

「俺も話が見えない・・・」


ナスカとミノル先輩は、キョロキョロと周りを見て、イツキがイツキ先生?と呼ばれることも、エンター先輩とヤン先輩が、泣く程に大切な知り合いなのか……とか、何故敬語なの?と疑問だらけなので、口を挟む感じではあるが質問を投げ掛けた。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

風邪ひきました・・・更新が遅れたらごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ