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その日少年は異世界に転生した

できるだけゆっくり読んでください。

「ここは一体どこだろう。森の中みたいだが」

「初めまして。地底から現れた地底人です。地底人なので猫耳が生えています」

「藪から棒に地底人。とりあえず初めまして。ここがどこだか知ってる?」

「地底人なので分かりません」

「それは仕方ない。森といっても道がある。どっちに向かうべきだろう」

「地底人なので分かりませんが、ここは棒を立てて倒れた方に進むべきだと思います」

「名案だ。手ごろな棒は持ってるの」

「持ってません。地底人なので」

「じゃあ手分けして探そう。幸いにも森の中だ、手ごろな棒ぐらいいっぱいあるだろう」

「さっそく見つけました」

「きみ、見どころがあるね。名前は」

「ホニャ子と申します」

「僕はたびと。旅の人と書いて旅人だ。さっそく棒を立ててみよう」

「わくわくしますね」

「まったくだ。さて、どっちに倒れるかな」

「あっちに倒れました」

「よし、じゃああっちに行ってみよう。町があるといいな」

「そうですね。道中お話でもしましょう」

「名案だ。ホニャ子はどうして地底から出てきたんだい?」

「バカがスイッチを押しまして、地底帝国が崩れてしまいました」

「バカはスイッチを押す。不変の定理だね」

「そういう旅人さんこそどうしてここに?」

「よく分からないんだ。高校に行く途中でトラックに轢かれかけた子猫を見つけて、助けようと思ったらここにいた」

「それもあるあるですね。不用意にトラックに轢かれそうな子猫を助けてはいけません。異世界に転生してしまいます」

「そうなのか。じゃあここは異世界なのかな」

「私にとっては異世界確定ですが」

「地底人だからね」

「その通りです。ところで川が見えてきましたよ」

「ほんとだ川だ。これは渡れないやつかな」

「大丈夫そうです。橋がかかっています」

「それはよかった」

「橋――それは人類の英知の証。未踏の地へと渡る勇気の結晶。この先にあるのは人類に幸をもたらすものか、それとも不幸をもたらすのか」

「急にどうしたんだい」

「言ってみたかったんです」

「あるね。ところで川についたけど、思っていたより小さいね。小川だね」

「ジャンプしたら渡れそうですね。なぜ橋をかけたんでしょう」

「橋の前に看板があるよ。どれどれ……『このはしわたるべからず』」

「橋の端を渡るなってやつですね」

「間違いないね。じゃあ真ん中を行こうか」

「いえ、ここはあえて橋を無視してジャンプしましょう」

「それもいいね。じゃあ、いっせーのーで」

「ほいっ!」

「あっ、今のまだ確認だったのに」

「すみません。もう一度やり直しましょうか」

「いやいいよ。僕も渡っちゃったし」

「そうですね。しかし、橋があるという事は人がいるという事です。よかったですね」

「そうだね。町がある可能性も高くなってきた」

「言ってるそばから町が見えてきました」

「本当だ。町全体に高い壁が建てられているね」

「モンスターでも出るのでしょうか。それとも戦争でもしているのでしょうか」

「どちらにしても嫌だね。もっと都合のいい解釈はないかな」

「ではこういうのはどうでしょう。あの町の人は壁が好き」

「よし。それでいこう。早く壁好きな町に行きたいな」


「壁の町に着きましたが、入り口が見当たりませんね」

「きっと壁が好き過ぎて入り口作るの忘れたんだろうな」

「このままでは入れません」

「大丈夫。僕に手がある。ホニャ子、僕の手首を掴んでいてくれないか」

「こうですか」

「そうそう。ちょっとおえってなるかもだけど、我慢してね」

「恐ろしい予感が――なんと! 一瞬で町の中に!」

「これは僕の力でね、片手で触れたものをもう片方の手に移動させる事ができるんだ。こういう大きな壁みたいなものだと僕の方が移動しちゃうって寸法だよ」

「随分と地味な力ですね」

「うん、我ながら初めて役に立った」

「見知らない奴らめ、お前らが犯人だな!」

「さっそく変な事に巻き込まれましたよ?」

「うん、そうみたいだ」

「つべこべ言わずにこっちへ来い! 詳しい話は牢屋で聞かせてもらおうか!」


「いきなり牢屋に連れてこられてしまいました」

「手の力を使えば出られるけど、出るべきじゃなさそうだ」

「逃げたら犯人確定ですしね。まずは疑惑を解かなくてはいけません」

「やいやい、お前らだな。この町の美しい壁に落書きし続けているのは!」

「落書き犯と間違えられているようですね」

「しかも壁好きは当たってたみたいだ」

「こそこそ喋ってないで本当の事を話せ! どうしてあんなひどい事したんだ!」

「待ってくれ、僕たちはやってない。やってないんだ」

「これは何かの誤解です」

「そういえばお前ら、塗料も何も持っていないな」

「そうです。それに壁をこよなく愛する私たちがそんな事するはずありません」

「えっ、そういう方向でいくの?」

「はっはっは! 何だお前たちも壁好きか! 壁好きに悪いやつはいない。勘違いして悪かった」

「あっさり誤解が解かれた」

「いえいえ。こちらこそ勝手に侵入してしまいましたので。よろしければ落書きの犯人逮捕、協力しましょうか?」

「それは助かる! 我々は壁を作るのに夢中でな、人手が足りなかったところだ!」

楽しんで頂けたなら幸いです。

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