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神様に土下駄した俺は異世界でハーレムを作る

作者: 森野カエル

 俺はとある村の前に立っていた。

「やっとここまで来たか」

 長かった。

 山を越え、谷を越え。

 探しまくった。

 このために俺は転生させてくれる神様に土下座までした。

 この村の中にあるのだ。

「さあ、行こう!」

 もうすぐ手に入る。

 俺のためのハーレム!




 俺は一度死んだ。

 それはもうどうにもならないのでどうでもいい。

 俺は死に、神様にあった。

 神様は俺の願いを一つだけ叶えてくれると言った。

 神様のペットが下界へ脱走した時に、助けてあげたお礼らしい。

 俺はよく動物の保護をしていた。

 その中に神様のペットもいたのだろう。

 俺はその願いを転生に使った。

 地球の猫と似た性質を持った猫獣人がいる異世界に、マタタビの人外として人化させた状態で転生させてほしい、と。

 神様は一つだけって言ったじゃんと渋い顔をしたが、俺は土下座して頼みこんだ。

 ついでに俺は、この願いを一つのつもりで言ったし、どんなことが一つになるのか後だしとか酷いとも言っておいた。

 俺の夢は猫耳の獣人女の子とイチャイチャすること。

 現実ではありえないと諦めていたが、目の前にそれを実現するかもしれない力がある。

 諦められるわけがない!

 マタタビ人外として転生して、魅力チートで猫獣人ハーレムを築くのだ!

 そして、俺の夢は神様のため息とともに叶えられることとなった。

 俺は異世界にマタタビの人外として転生した。

 しかし、そこに待っていたのは猫耳獣人ではなかった。

 右を向いても左を向いてもただの人間。

 どこを見てもただの人間。

 近くにいた人間に聞いたところ獣人は基本的に山奥に住んでいて、人里には下りてこないということだった。

 俺はショックを受けつつも、猫獣人を見つけるべく旅に出た。

 そして、それをついに見付けたのだ。

 猫獣人が住む村を。

 それが俺の目の前にある、このキャンディッシュ村である。




 俺は村を眺める。

 村は山あいにある小さな村だった。

 簡易の柵で村を囲い、家は木造。地面は土がむき出しだった。

「ここに猫獣人がいるのか」

 俺は村の中に入る。

 まだ誰にも会えていないが、村がとてものどかなのが伝わってくる。

「どこかにハーレム王国でも作ろうかと思ったが、ここに住み着くのもいいな」

 穏やかな時間を猫耳娘たちに挟まれながら暮らす。

 最高だな。

「さーて、俺の猫獣人ちゃんはどこかな〜?」

 村の中を見回しながら歩いていると、視界の端に人間サイズの獣っぽいものが映った。

「おお! そこか!」

 情報によれば、猫獣人の身体は全身毛皮に覆われているものや肩や膝からだけ毛皮のものもいて、獣人により様々ということだった。

 俺は肌の露出が多いタイプが好きだが、毛皮で覆われているタイプも好きだ。

 どちらでもどんとこいである。

 俺は家の影に消えていった獣人を追う。

 う〜!

 早く会いたい!

 小走りで家の角を曲がると、ドンと柔らかなものにぶつかった。

 俺は下を向いてぶつかった顔を手で押さえる。

 痛……くはない。

 柔らかなというよりふわふわに近かった。

「大丈夫ですか?」

 声が目の前からする。

 つまりぶつかったのは人だったのだ。

 ふわふわなのはきっと毛皮。

 来たああああああ!

 俺は満面の笑みで顔を上げた。

「大丈……ぶううう?」

 俺は目の前の獣人に目をむく。

 そこに立っているのは猫獣人は猫獣人でも男の猫獣人だったのだ。

 たくましい身体つきはどう見ても男だった。

「大丈夫……ですか?」

 今度の言葉には不審げなニュアンスも含まれている感じがあった。

 ヤバい。

 俺は後ずさる。

 俺は猫獣人に男がいる可能性を全く考えていなかった。

 猫獣人ハーレムに気を取られ過ぎていた。

「ん? なんか良い匂いが……」

 男の猫獣人が鼻をひくひくさせている。

 ヤバいヤバいヤバい。

 さっさと女の子を見つけて匿ってもらわねば。

「あ、あの……。女の子はいますか?」

「ん〜? 女ぁ?」

 早くも男の猫獣人の目がとろんとし始めた。

「女はぁ〜。別れて暮らす決まりだからぁ〜。もっと山奥にいるぞお〜」

 なんだと!

「じゃ、じゃあこの村には……」

「男しかいないよぉ〜」

 男の猫獣人は目を細め、喉をゴロゴロ鳴らす。

「ふ〜ん。たまらんなぁ〜」

 男の猫獣人は口を半開きでだらしなく笑った。

 女の子がいないのなら、逃げる一択だ。

「教えてくれてありがとうございました!」

 俺は逃げるために男の猫獣人背中を向けて走り出す。

 が、また顔を何かにぶつけた。

 痛くなく、柔らかいというよりふわふわ。

 俺は恐る恐る顔を上げた。

 そこには別の男の猫獣人がいた。

「何だぁ〜? 何だか良い匂いがするぞぉ〜?」

 ひいいぃ!

 この男の猫獣人もすでにマタタビの影響を受けていた。

 気付けば俺の周りは猫獣人だらけになっていた。

「に、逃げ……」

 逃げ出そうとするが、腕を掴まれて引っ張られる。

「こいつから良い匂いがするぅ〜」

「や、やめ!」

 後ろから耳を嗅がれて鳥肌が立ち、思わず声を失った。

「これはたまらんわぁ〜」

「最高だぁ〜」

「俺にも嗅がせてくれぇ〜」

 俺に幾本もの手が伸ばされてくる。

 ベロリと俺の身体を舐めてくるものまで現れた。

「やめてください! お願いします!」

 そう言って、聞くものは誰もいなかった。

「あ、あ、ああ。アッーーー!」

 俺の声がむなしく村の中に響いた。




 end


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