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第七話 異世界にお引越し

第七話 異世界にお引越し




エレノアさんに連れられ、俺達は転移魔方陣のある遺跡に戻っていた。ただ、荷物はそれ程多くは無い。それぞれMagicBOXと呼ばれるコンテナに詰め込まれているのだ。


結局、一つの迷宮に辺り送り込まれるのはダンジョンコアメンタル、ダンジョンマスター、ガードモンスターの三体だ。


そして


BOX1

ダンジョンコア

ダンジョンコア管理システム一式


BOX2

電子機器一式

モニター

サーバー

ブックノート

タブレット


BOX3

浄水セット

炊飯セット

MRE1000食


BOX4

衣服等日用品一式


BOX5

家具等一式


BOX6

武具防具一揃


BOX7

薬品、薬草類一式


BOX8

天然温泉システム


BOX9

転移魔方陣


この後は随時PDAから転移させられる。つまり、受け手の準備を整えるまでの資材と言う訳だ。


「後は定着させる場所を選べば、そちらに再転送させますので、明日から場所選びですね」


そう言ってマニュアルを渡された。一応俺は大学でマーケティング等の数字を扱う社会科学を専攻していた。今日はお勉強だな。


「分かりました。で、希望される候補地はありますか? できれば参考にさせて頂きたく思いますが」


すると、エレノアさんは少し思案して、こう切り出して来た。


「と言いますか、カテゴリー5のダンジョンには定着に制限が有りますから、正確には既にそれ以外はほぼ不可能では無いかと思われます。ダンジョンは世界に穿つ楔の様なものなので、カテゴリーによってほぼ決まるのですが、カテゴリー5は世界七大魔宮に続く存在になる筈なので、やはりユグドラシル最大の地脈と龍脈の接合点に定着させるのが一番だと思います。だからこの五ヶ所が候補地ですね」


そう言って地図を渡された。


「分かりました。では調べさせて貰います」


エレノアさんはニコリと笑いながら


「椎葉さんは真面目なので方のようですね。でも一番はカトリーヌとのコミュニケーションだと理解して下さいね。なにしろ迷宮とはカトリーヌそのものなのですから」


「……はぁ? そんなものなのですかね?」

「貴方達ダンジョンマスターは優秀な方が多いので、我々受け入れる側は最低限のフォローに徹しています。もしも分から無い事があれば幾らでも質問して頂ければと思います」


そう言ってエレノアさんは俺達を遺跡の上層部に案してくれた。





そこは小高い山の上に立つ石の遺跡だった。深い森の奥にひっそりと存在する遺跡はユグドラシルと地球を結んでいるのだ。


「凄い眺めだな」

「……なんて魔力をたたえた森」

「何気に飛竜が飛んでますね〜」


そう、深い森と山の頂きからは遠くまで見渡せるが、ここには人の街の気配は無い。まさに秘境だった。


「ここはユグノー大森林と言われ、世界では七大魔宮がある場所でもあります。そして、多くの冒険者が今日も凌ぎを削る場所です。この世界には無数の迷宮や魔宮、魔境と呼ばれる場所がありますが、その一つ一つがこの世界と深く結びついているのです。椎葉さんとカトリーヌ様にも是非素晴らしい迷宮を作り上げて欲しいと思います」


俺はエレノアさんに尋ねた。


「どうしてエレノアさんはここに俺たちを連れて来てくれたんですか? 俺はカトリーヌに地下の薄暗い迷宮だけじゃなく、色んなモノに見たり触れたりして貰いたいと思っていたんです。だから、本当に嬉しかった」


するとーークスッとエレノアさんは笑った。


「殆どのダンジョンマスターの方がこうやって外の世界を堪能させてから迷宮作りに取り掛かるのです。どうしても自分の半身たるダンジョンコアに、暗い迷宮だけに居て欲しくないと考えられる様で、この様な場所に行こうとされるんです。でも危険な事もありますから、敢えて余計な危険を背負わ無い様に、代替えする様なモノなのです」


そう、過去も多くのダンジョンコアメンタルとダンジョンマスターがこの世界に迷宮を作り上げている。そしてこれからは俺とカトリーヌもその戦列に加わる訳だ。


異世界における不動産物件の開発と管理か。すると、カトリーヌが裾を引っ張って来た。


「……椎葉…みて……凄い鳥の群れ…」


見れば森林の樹上を色とりどりの鳥の群れが巣穴に戻る様に群れを作ってこちらに向かっていた。ここは人の場所では無い、自然の織りなす奇跡の情景に俺とカトリーヌは圧倒されていた。


「うん、凄いな。これは元の世界でも見られ無いかだろうな」


暫し、俺とカトリーヌは魅入ってしまって、いつの間にか日は暮れ始めていた。




♢♢♢



部屋に戻ると食事の準備が出来ていた。どうやらカトリーヌも同じモノを食べられるらしい。実際は食べなくても良いが。いわゆる食べる事により精神的充足を得られるらしかった。


メニューは肉の煮込みにサラダや卵のオムレットの様なものと豆のスープにパンだった。凝った味では無いが素材が良いのか中々に美味だ。さすがエルフといったところだろうか? カトリーヌとブレアも満足した様だった。







食事を終え、三人でくつろいでいると、エレノアさんが資料を持って現れた。


エレノアさん曰く、最低でも五日以内に場所を決める必要があるらしい。緊急事態だったため、問答無用で強制転移させられ、レクチャーは全く受けられ無かったので、今日は徹夜してでも調べておかねばなら無い。


「……ダンジョン経営か……」


俺は元の世界から持ち込んだマニュアルを開き、さらにエレノアさんから渡された資料を隅々まで読み解いていった。


もう戦いは始まっているのだ。


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