第五十一話 疑念が一つ
第五十一話 疑念が一つ
☆迷宮カトリーヌ
フロア15ミスリルマインで坑道を掘りまくっているノーム達を置いて俺はフロア12ゴーレムキャンプに向かった。
これからは素材はノームが供給してくれるだろう。
早く希少金属がでると良いのだが、その時には精製を行い鉱石の状態から錬金術を使いインゴットと呼ばれる状態にする必要がある。
「う~む、なら次は錬金術師かな?」
とは言え未だ呪術士のランクは2だ。先ずは此方を、せめて5くらいまで上げでおくほうが先決だろう。
一点突破だな。
俺はTABLETを開き次のグレムを選ぶ。
PASSをカトリーヌと繋いでいる俺は瞬間最大値こそランク制限に引っ掛かるものの、この迷宮の中でなら補充が効く魔素を利用して修練に明け暮れている事が出来る。
だからダンジョンマスターのレベルアップは生産職なら一人パワーレベリングに近い。今の内にガンガンやり込むつもりだ。
「さて、とは言え無駄なグレムを造るのもな~」
やはり土偶創造ランク2から可能になるレイブングレムと言う鴉の様な鳥だな?
素材は土で
先ずはコレが基本だからな
「では[レイブングレム]!」
ポヒュンッ!
相変わらずの音と共に少し大きめの鳥が現れる。
ただどう見ても戦闘用では無い。かなり薄く造られている様でほぼ一撃で崩壊しそうだ。
まあ、視覚共有もあるし、純粋な偵察用だな。
取り敢えず五羽ほど造ってみた。
「よし! 行け!」
一斉に飛び出して行く。
扉を開け放ってやるとセントラルターミナルを超えてフロア01にまで到達する。
隠蔽してある扉は流石に抜ける事は出来ないが機動力は中々だ。
MagicBOXの中を漁って見よう。魔石か魔核をエルフから少しだが受領していた気がする。
エレノアさんから後で拝領しようか? 何時までもエレノアさんに索敵させる訳にもいかんからな。
(さて、修練がてら幾つか造ってみるかな)
ランク2からはグッと種類が増えて来る。
メルドワームMP8
センチビートMP10
ワイルドキャットMP8
レイヴンMP12
ラットMP6
そして多少のカスタマイズが出来るのが魅力だ。
ただ、それはクレイゴーレムだからで、アイアンゴーレムやストーンゴーレムなどはその比では無い。
素材にもよるが実際に戦闘用と言えるのはやはりランク3からだろう。
目標はランク3のウォーリアーゴーレムだ。
道のりは遠いな。
さて、ではどれを造ってみるかだが
メルドワームは地中を掘り進める事が出来る珍しいタイプだ。
センチビートは長い体を利用して相手を拘束出来る。
ワイルドキャットは移動力と攻撃力が高い。
いずれもランクが上がればその分強力になり巨大化させる事が出来る。
ただ純粋な戦闘には向かない。
「となると、牽制用にワイルドキャットかな」
消費MPは8か
取り敢えず10体ほど。
MPが足りなくなったらまたカトリーヌから分けて貰えばいいしな。
適正量以上の土に手を当て
「[ワイルドキャットグレム]!」
ポヒュンッ!
すると目の前には猫──と言うよりは豹っぽいワイルドキャットグレムが現れる。
とうぜラットグレムよりは大きい。
これなら群体を構成しなくてもそれなりには使えそうだ。
でも最高位の溶岩まで持ち込んだらかなり強力そうだな。
動きはあまり早くはない。
この辺は全てのゴーレムに当てはまりそうだ。ランクが上がれば改善はするが、チート能力者相手には牽制にしかなら無いだろう。
(使い方次第だがな)
ただ動きは中々に滑らかだ。
見た目は粘土の塊だから可愛いと言う訳でも無いがちゃんと猫科っぽいしなやかさ。
それではとあと9体仕上げる。
ポヒュンッ!
ポヒュンッ!
以下略
やはりランク1のグレムよりも神経を使う。その辺が召喚や従魔なんかとの差なんだろうな。慣れれば解決するだろうが。
一番の問題は特殊能力を持た無いと言う事だろう。
その辺は魔石や魔核に上書きする方法が有るらしい。
さすが呪術士だと言いたいがその辺は少し検討の余地が有りそうだな。
10匹のワイルドキャットグレムを目の前に思案していると警報が鳴った。
TABLETを確認すると
「……キツネ? 一匹か」
テトテトとエントランスフロアから奥を伺っている。
「あれは希少種かも知れませんね」
「希少種……キツネのですか?」
降りてきたエレノアさん曰く
「はい、よく見て下さい」
画像を確認すると──
「……尻尾が二つ有りますね」
「そうです。元々魔力を操る種類もいるのですが、尻尾が増える毎に強力になっていきます。テイムするかカトリーヌのダンジョンマスターの眷族支配で囲い込むか出来ます」
希少種なら戦力になるか
「暫し放置して、定着する気が有るのなら先ずブレアを向かわせて見ましょう。どうせフロア05までは出入り自由の解放フロアなんですから」
眷族支配も完璧では無い。
どうしても元より反応が遅れる傾向があるからな。
「分かりました。此方も放置ですね」
「はい、基本来る者は拒まず。去る者は条件次第です」
「あと、グレイウルフの集団が何度か接近していますが、どうやらかなり大きな群れの様です。強力なリーダーがいるのですが、流石に全てを受け入れるのは難しいかも知れませんね」
時折発生する希少種や上位種が想定外の大きな群れを形成する事がある。
エレノアさん曰くこの群れもその可能性が極めて高いと言う。
「グレイウルフは群れで子育てをしますから、安全で快適な巣穴を提供すれば自然定着するかも知れません」
条件的にはコボルトと同じか。
それなら悪く無いな。
「ただ、グレイウルフの巣に乗り込む物好きは少ないですから、フロア01に居座られるのはまずいでしょうね」
ふむ、それは困るな。
やはり近くに巣穴を作らせるのが賢明か。
定着する気が有ればだが。
「もしも現れたらコボルトと同じく巣穴は別で提供しましょう。機動力と攻撃力のバランスはやはり捨て難いですからね」
そして意外と希少種や上位種を産み出し易いのも魅力的だ。
ダイヤウルフやシルバーウルフなどもこの魔素の濃さなら十分に産み出せるだろう。
そしてコボルトも同じだ。
戦闘能力ではゴブリンやオークに劣る最低辺の獣人では在るが、その分上位種を産み出す可能性が高い。ゴブリンリーダーやゴブリンスカウト位のスキル持ち位ならかなり期待出来るだろう。
グレイウルフとコボルトは森の中にある迷宮で自然定着させるのに最適なモンスターなのは間違い無い。
「それと──一人で彷徨っている少女が大分接近しています。恐らく一両日中にはこの迷宮付近に到達する可能性が出て来ました」
「!!! それは本当ですか?」
どういう事だ?
単に迷っているだけでは無いのか?
そもそも森の中からもアスラガルドの山々はかなりの場所で視認出来る。周辺の村民ならその意味が分かる筈だ。
……何故危険を冒してまで奥地に進む?
間も無くフロア02が取り敢えず完成する。
コロニーも徐々にその効果を発揮するだろうし、大ネズミと大イタチ、大コウモリ、それと昆虫などの小動物もその数を僅かづつではあるが増している。
そしてモンスターの定着も明日のゴブリンを皮切りに順次進んで行くだろう。
(何故少女が大森林を一人で彷徨い襲われ無い?)
数百匹のグレムの群れの中で、俺は少しばかりの疑問が心の中で大きくなって行くのを感じていた。
(……森の少女か)




