第四十九話 ノームさんがやって来た
第四十九話 ノームさんがやって来た
☆迷宮カトリーヌ
カトリーヌが第8工程に取り掛かっている時、俺は一人でフロア12に新設されたフリールームに篭っていた。
カトリーヌやブレア、エレノアさんに毛嫌いされたグレムを迷宮内に放ち監視網を形成するシュミレーションをする為である。
TABLETには無数の偵察用スパイダーグレムを表す輝点が移動を繰り返している。
そして作業用アントグレムが見つけた侵入者に襲い掛かる。攻撃力に見るべきところは無いが無視出来るレベルでは無い。牽制には十分だろう。因みに穴を掘ったり荷物を運んだりも出来るので結構便利だ。
すると、警報が鳴りフロア01に侵入して来る個体が見つかる。
コントロールルームに移動し、確認の為、スパイダーグレムからと迷宮監視網と両方を使って見ると
「……やっぱりコントロールルームの映像を確認する方がやりやすいか」
やはり自らのスキルを使うと意識が取られてしまうのだろう。
細かい判断が必要な局面ではスパイダーグレムに頼ら無い方が良さそうだな。
「……大コウモリか」
画像を確認すると大型のコウモリが侵入して来た様だった。
そして昆虫が少しづつ入り込んでいる。その量は時間を追うごとに徐々に増えているようだ。
(うん、大ネズミの餌になるな)
そして再び警報が鳴り、今度は大イタチが数匹群れて侵入して来る。これは大ネズミの捕食者だ。因みに食用としての人気は無いが皮が大人気で、専門の狩人もいるくらいなのだそう。
(取り敢えず放置でいいだろう)
順調──と言う事なのか?
エレノアさんが見掛けたと言うトロルとグレイウルフが来れば戦力的には悪く無いが……
トロルは獣人だし、問題が発生したならブレアの魅了で迷宮の奥に引き込むしか無いな。
フロア01では強過ぎるだろ。
フロア05でトロルかアラクネのどちらかをボスに据えたい処だ。
「…アラクネはボス駄目…だよ」
「のわあっ! カ、カトリーヌ! いきなり声を掛けるな!」
ん? 確かフロア02で作業中だったよな? つまりーー
「……ドッペルゲンガーなのか?」
コクコクとカトリーヌは頷く。
確か自らの迷宮内においてのみ使用可能なダンジョンコアメンタルの持つ固有能力の一つだったな。
見たのは初めてだ。
並列処理が出来るからおかしくは無いのだがやはり驚かされる。
「て事は何かあったな?」
「…そう…来て」
ダンジョンウォークを使いフロア02へ向かう。
イメージするだけでもオートで移動出来るのは便利だな。ヒュンと滑る様に迷宮内を疾走するとーーカトリーヌが呆然と立ち尽くしていた。
だが何かがおかしい。
「おい! カトリーヌ、どうしたん……んんっ! な、なんだそれ!」
迷宮穿孔の最先端に居るカトリーヌの周りにモフモフと蠢く毛玉がたかっている。
洞窟ウサギの子供?
いやいや、まだ繁殖は始まって無かった筈だ。
しかも数が半端無い。
数十、数百匹はいるぞ!
「……それはノームですね」
「!!! エレノアさん! ノ、ノームですか?」
確かマナの豊かな洞窟や迷宮に現れる地の精霊の眷族だったな。
「……やはり地脈や龍脈の影響ですか?」
「でしょうね。ノーム自体は珍しくは無いのですが、この数は異常ですね。それに、よく見て下さい」
よく見る?
言われてジッとノーム達を注視して見ると──カトリーヌ取り憑かれ掛かってるな。ドンドン覆われてる感じだ。カテゴリー5の魅力なんだろうか?
ただ──改めて良く見ると
「……色違い?」
エレノアさんが頷く。
「地精には場所において性質の違う雑多な精霊が現れる事があるのですが、どうやら椎葉の予想通り、このアスラガルド南端には何らかの鉱床が存在する様ですね。鉱精、金属精霊と呼ばれる亜種がかなりの数紛れ込んでいる様です」
ならばこの近くに聖銀や神鉄、もしかすると金剛なんかも有るかもしれんな!
「で、こいつら何しに来たんですかね? 挨拶?」
「おそらくこの迷宮に住まわせて欲しいのでしょう。ノームは洞窟を拡張していくのが本能の様な物ですからね。でも?」
そう言ってエレノアさんはノームに近寄っていくと、ウチの一匹がテトテトと歩み寄る。
エレノアさんはウッドエルフなので精霊とある程度は意思の疎通が図れるのだがどうやら何か理由が有りそうだ。
暫くエレノアさんとノームは見つめ合っていたのだが、ヒョイッと肩に飛び乗った。
「どうやらこのノーム達の大部分は水晶の迷宮と沼の迷宮から逃げ出して来た様です」
「逃げ出して来た?」
「ええ、嫌な瘴気が発生したので逃げ出して来たのだとか。そこでこの迷宮カトリーヌを見つけた様ですね。彼等曰く、ここは大変澄んだマナが溢れており、住み易いので、迷宮拡張を手伝う代わりに此処に定住したいそうです」
ふむ、流石にノームは戦闘には使えんだろうが、此処に住み着けばマナも自然吸収出来そうだな。しかも迷宮拡張の手がタダで増えるのは魅力的だ。
「カトリーヌ、ダンジョンマスター権限で眷族支配は可能か?」
「…出来る…けど、精霊なら直接契約したら裏切る事は無い…精霊契約の方がオススメ」
さて、では誰が契約するかだが
「ダンジョンマスターである椎葉さんが契約されては? 呪術士の土偶創造と抜群の相性を発揮する筈ですよ。私は既に契約を結んでいますから重複してしまいます」
俺かそれも悪く無いな
よし、カトリーヌとは別に鉱床採掘に挑んで見ようか!
「分かりました! でもどうやれば良いんですかね?」
「簡単ですよ、その意思を伝え、お互い合意すればそれで契約成立です。意識し易い様に適当な術具を媒介させるのが初心者の椎葉には簡単でしょうね。しばしお待ち下さいね」
そう言ってエレノアさんはライフスペースに持ち込んであるMagicBOXに戻ると、腕輪を一つ持って来てくれた。
そしてそれをノームに見せている。
「これを媒介にしましょう。これを常に持つ事により、多少の加護を得る事も出来る様になりますから、椎葉の助けになる筈です」
俺はエレノアさんから腕輪を受け取り、ノームの前でそれを指し示す。
「よし、俺がこの迷宮のダンジョンマスターである椎葉だ。俺の命令に従ってくれるならこの迷宮に住む事を許可しよう。俺はな、此処を大魔宮にするつもりなんだ。だが今はまだ手が足り無い。協力してくれるか?」
そう言って腕輪を差し出すと、ノーム達は寄り集まって何やら相談している。
エレノアさんは少し分かる様だが俺とカトリーヌにはサッパリだ。
だが、暫くして話がまとまったのか一匹が(何だかリーダーっぽい)テトテトと前に出て来た。
そして腕輪をよこせと手招きする。
(何だ? 何かあるのか?)
渡してやると群れの中に担いで行って何やら騒いでいる。
うん、全然理解出来ない。
〈パシュンッ〉
「うわぁっ! びっくりしたっ!」
突然閃光が起こり──腕輪の形が変わっている。
そして、一匹が腕輪を俺に手渡して来た。
何だ?
何かしたのか?
ジッと腕輪を見つめていたエレノアさんがそれを手に取る様に促す。
「……椎葉、それは精霊契約の証です。ですが、何か加護を付与されているみたいですね。よほど気に入られたみたい。契約はしても簡単に力を与えてはくれないものなんですけど?」
腕輪を見ると確かに何かを感じる。
地の精霊の加護か
迷宮に籠るダンジョンマスターには相応しいんじゃ無いかね?
「有難く頂く! これからよろしく頼む!」
そう言って手を差し出すとノームもコツンと手を合わせて来た。
うん、毛玉だけど結構可愛いんじゃないか?
『『『yoOlmsiilkunaAaa!!!』』』
そう言ってノームが俺に飛び乗って来た!
「うおおおおっ! な、なんだ! うわっ! こいつら結構重いし! や、やめろおおおっ!」
唖然とするエレノアさんが一言呟く。
「……嘘でしょ…」
本来
エルフですら長い年月を経て精霊との信頼関係を結び、その果てにやっと加護を得るものらしい。
初対面で、しかも大群に抱き着かれたのを見たのは初めてだそうだ。
エレノアさん自体も複数の精霊契約を結ぶハイレベルなウッドエルフらしいがそれを遥かに凌ぐ数が俺に加護を与えているとか。
「……なんだか悔しいです」
エレノアさん
拗ねないで下さい。
ただ視線が意外と本気だった。
因みに腕輪は鑑定して貰うと、[ノームの腕輪]になっていた。俺も地の精霊を使役出来る様になったらしい。
そして土偶創造と大変相性が良さそうだ。
そしてフロア12 ゴーレムキャンプに籠る日が始まると共に、ノームと採掘に取り組む事になる。
あれ?
俺は精霊術士(地の精霊限定だが)になったのか?
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ダンジョンマスター
Level01
椎葉 真 21才 ♂
LIFE
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HP056/056
SP254/254
MP00100/52680
・ジョブ
・呪術士LV01
・精霊術士LV01➕
・スキル
・土偶創造ランク2
・付与魔法ランク1
・魔力封入ランク1
・地精霊魔法ランク1➕
・アイテム
・ノームの腕輪➕
*コロナ社土地建物管理開発部員
*ハイエルフの加護
*ノームの加護➕
*ゴーレムマッドサイエンティスト
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