第四十七話 姉妹イズム
第四十七話 姉妹イズム
☆迷宮カトリーヌ
オヤツのフルーツバーに飽きて来たと言いつつも、皆が一同に介して齧るのが日課になりつつある。
空気を読んでエレノアさんもブレアも帰ってくる癖が付いている様だ。
因みに場所はカトリーヌの元に集合する事になっている。
ダンジョンウオークを使えば簡単に辿り着く事が出来るので、何気に便利だ。
皆にフルーツバーを手渡し齧り始めるとエレノアさんが懐から何やら取り出して来る。
それはキノコの様な物の萎れたヤツと変な根っこだった。
「……エレノアさん、コレは?」
エレノアさんはニコリと笑うと
「これはナイトシェードとマンドレイクです」
ナイトシェードとマンドレイク……確か貴重は薬草の一種だったかな?
「どこで見つけたんですか?」
「はい、この迷宮から十キロほど離れた場所でした。そこはかなりのマナスポットでしたので群生していた様です」
つまりコレを
「この迷宮に植えてみようと?」
「定着するかどうかは分かりませんが、この二つは冒険者にとっで魅力的なはずですからね」
「……カトリーヌ、どう思う?」
カトリーヌはジッと二つの薬草を見ている。魔眼持ちでは無い筈だが、マナの流れが見えるのかな?
「…ここはかなりレベルの高いパワースポットだから当然良いマナに満たされている。定着する…筈…」
「なんだか身体に良さ気ですね〜☆」
正直俺には分からんが
やるだけやって見るか?
「エレノアさん、では昼から採集に向かいますか」
「いえ、ここは私に任せて下さい。これはレンジャーのスキルにある薬草学でもありますからね」
そう、レンジャーには補助スキルとして薬草と動物に関する物が幾つかある筈だ。
何よりコストが掛から無いのがいいよな。
「ではフロア02に薬草コロニーを設営しましょう。大ネズミに食べられたら勿体ないですからね」
「…分かった。では二箇所に封鎖区画を作る…のでいい?」
「うん、取り敢えずそれで行こう。環境に関してはエレノアさん、カトリーヌと打ち合わせして下さいね」
二人はコクリと頷くと何やら話し込み始める。
すると、ブレアがコソコソと外に向かう。
んんっ? たがーー
「ブレア、お前フルーツバー食わなかったのか?」
「い、いえっ! あ、後で食べようかと〜、で、では行って来ます〜☆」
そい行ってビュンと飛び出して行く。
(……怪し過ぎるな…)
まあ、取り敢えずスルーしておこうか。
それにまだやる事はある。
俺はカトリーヌとエレノアさんを連れてアラクネの元に向かう。そろそろ回復してると思うんだよね。
「…朝みたらまだ寝てた…」
「そろそろ動き出してもおかしく無いですからね」
どうやらカトリーヌの妹分になりそうな気配だな。
エレノアさんの二つの回復魔法が有るから完治は出来るだろうが。その辺はまだ未知数かな。
♢フリールームA
こっそりと覗いてみると
大分回復しているのか、しきりと周囲を伺っている様だった。
何やらガサゴソと様子を伺っている。
昨日の様にグッタリしている訳でも無いので順調なんだろうか?
因みな俺はどうやら嫌われているみたいなのでこっそりスパイダーグレムを天井に放ち観察している。やはりまだ失った脚は再生してはいないようだ。
カトリーヌとエレノアさんざそっと部屋の中に入ると、ビクッとして隅に逃げ込む。そして恐る恐ると二人を伺っている様だった。
(う〜ん、まだ懐かないのか?)
少し心配になったが、どうやら逃げ出すほどでは無い様だ。昨日も遅くまで撫でていたからな。敵では無いと理解はしている筈だ。
ただ、余りにも幼な過ぎるんだろう。
「…大丈夫…落ち着きなさい」
むむ、カトリーヌがお姉さんモードだ。
たが近寄っても逃げ無い。
そこへエレノアさんが治療魔法を掛けて行く。幾分楽になるのかアラクネはジッと魔法を掛けられている。
撫でてやると気持ち良いのかグルルッと鳴く。
やべぇ! 俺も触りてぇ!
だがまだ早い。
ここはジッと我慢だ。
いずれキチンと回復してからならそんなに俺を恐がら無いだろう。
あの毛並み
是非撫でてみたい。
しかも人間に変幻していたからな。間違い無く上位種だからその辺も期待出来る筈だ。
気になるのはアラクネをあそこ迄叩きのめした奴がこの森の中にまだいる事だがな、その辺はまだ手掛かりは無い。アラクネの回復待ちになるだろう。
カトリーヌが撫でてやると落ち着いたのかチョンとカトリーヌを脚で突く。
うん、良い傾向だね。
そしてサワサワと脚でカトリーヌを確かめている。元々高い知性を持っているアラクネとはキチンとコミニュケーションが取れる筈だからな。
そして、休憩を終えフロア02に戻ろうとするカトリーヌの服を脚で挟んだ。
(あれ、興味深々なんだな)
「…だめ、お姉ちゃんはお仕事なの、また後で来る…からね」
そう言って注意すると、オズオズと下がって行く。
やるなカトリーヌ!
それにはエレノアさんもすこし驚いている様だ。
テイミングしている訳でも眷属支配している訳でもないのだからな。
いや、それがダンジョンコアメンタルなのか?
たが何れにせよ、アラクネの容体は峠を越えた様で取り敢えず一安心だろう。
多分現時点でも俺より強力なモンスターの筈だからな。
「…大人しくしていなければだめ…だよ?」
そう言ってカトリーヌはフロア02に戻って行く。
それを見送る様にエレノアさんも部屋を後にした。そうか、もうあのアラクネは仲間なんだな。何気に女ばかりな気がするが。
俺はスパイダーグレムを戻し部屋から出て来たカトリーヌの頭を撫でてやる。
「カトリーヌ、やるな!」
「…当然…お姉さんだから」
そう言ってカトリーヌはフンッと胸を張る。細やかたがそれがカトリーヌの矜持なのだろう。そして颯爽とライフスペースを後にして行く。
「カトリーヌは余程家族にこだわりがある様ですね」
そう言うエレノアさんは何処が嬉しげで、少し心配そうな顔をする。
そう、ここに冒険者や軍隊が押し寄せて来れば、そう簡単にはいかなくなるだろう。それは当然の事だ。カトリーヌもそれは理解している。
だからこそなお、家族に拘るのかもしれ無いのだが。
「五百年……それはカトリーヌに取っても長かったのかも知れませんね」
そう、五百年の地下でと孤独が何らかの影響を与えている可能性は高い。
エレノアさんはジッとカトリーヌの後ろ姿を見つめている。
(こうして見ると本当にただの美少女なんだけどな)
そしてエレノアさんもまたカトリーヌに対してダンジョンコアメンタルとしてだけでは無い感情を持ち始めていた。
その背中に多くの物を背負い込んでいる様に思えるカトリーヌは、まるで自らの生きる意味を求めている様にも思える。
そしてその頃
もう一人の家族もまた余計なモノを背負い込もうとして森の中を急いでいた。
いや、余計なモノは言い過ぎだが。
ただ、それに皆が気が付くのにはもう少し時を擁する事になる。




