第四十二話 バルログ
……悪魔の名称はファイアーデビルになるかも
( ̄◇ ̄;)
第四十二話 バルログ
☆岩の迷宮
「gullluulu…」
バルログがゆっくりとその手を振り上げーーそのまま軽く振り下ろす。
「!!! 避けろ! 炎の鞭だ! 焼き尽くされるぞ!」
舞い上がった炎の鞭が《ビュンッ》と言う風切り音と共に地面に炎を吹き上げる。咄嗟にに躱した六人だがこの一撃だけは躱す他ない。受ければ即死となる一撃はしかも遠距離まで届き、しかも範囲攻撃でもある。個人装備で相手取るのはほぼ不可能だった。
当然、ガザムもいくら開眼したとは言え決して倒せる訳では無い。しかし、このままやられっぱなしで終わるのは許せなかった。勝てぬ迄もせめて一撃を加えたい。
この絶望的な状況の中、ガザムは必死でその隙を伺う。
「トレインだ! また引っ張るぞ!」
「まじですか! でも何処に!」
「周りを囲まれるよりはましだ! バルログに矢を射掛けろ!」
アーチャー達は残った矢をバルログの顔を目掛けて放つ。殆どダメージは無いだろうが牽制を掛けてガザムは壁に引きつけ、包囲されるのを防ごうとしていた。
どうやらバルログはヘルハウンドを支配下に置いているようで、逃がさぬように包囲させている気配だ。だから決して襲い掛かって来ない。
壁に沿って後退しながら距離を取り、時間を稼ぐ。
「俺は余程怒らせたらしいな」
ガザム達はジリジリと下がりながらその隙を伺う。
そしてヘルハウンドは何時の間にか五匹になっている。こいつらだけでも強敵なのだが、それでもガザムは諦めない。
ロイドにそっと耳打ちをし、ジェイクとアーチャーに指示を出し、勝負に打って出ようとしたその時──予想外の援軍が現れる。
突然出口のある通路から一団が現れた。
「うおおおっ! 矢を放て!」
その一団は出口の通路に陣取っていた二匹のヘルハウンドに至近距離から鉄の矢を射掛けると大斧を持った男達が斬りかかる!
「!!! 彼奴ら! 乗り込んで来たのか!」
それはキャンプに残して来た兵士達だった。何時まで経っても戻らぬガザム達の様子を探る為に乗り込んで来たのだ。ジェラルド子飼いの精鋭は伊達では無い。
そして──ガザムはニヤリと笑う。
「じゃあ、向こうにヘルハウンドは居ないんだな」
そう、ここまで無事に入り込んで来れたのだがら。
外なら、野戦ならまだ勝機はある。
突然の状況変化にバルログのヘルハウンドに対する支配に、重大な齟齬が生じる。包囲だけを命じていた所為で、後方から現れた兵士に身動きが取れなくなったのだ。
しかし、それは一瞬
バルログは命令をし直し、ヘルハウンドに掃討を命じるが、その隙をガザム達は逃さない。
「!!!!! nuuuho!!!」
突然飛び出したガザムとジェイクに炎の鞭を振るわんとするバルログだが、その後方からロイドはアイスブラストを放った!
二人の図上を掠め炎の鞭に直撃した極低温の氷弾は爆発し炎の鞭の軌道を大きく狂わせる。
魔法を悪魔族は一定の確率で無効化出来ても炎の鞭はべつだ。そして魔力の塊とは言え物理形状をもって実体化している所為で不意に軌道をずらされた炎の鞭を再度振るうまでに致命的な隙を作ってしまう。
「うおおおおおおおっ!」
命懸けで飛び込んだジェイクが大斧をバルログの足を狙い渾身の一撃を放つ!
振り切られた大斧が《ドズンッ!》とバルログの足を斬り裂くが両断する事は出来ない。
だが──変わりにウォーリアのジョブ特性であるノックバックを発動し、バルログを横倒しにする事に成功した。
そこへ稲妻のガザムが開眼したばかりの必殺技を叩き込むべく踊り掛かる。
「喰らえやああ! この化け物がぁ!」
「nhhiguo!!!」
バルログの顔面に振り下ろされたその大剣は余りの速度で視認する事すら出来ず、星屑の様な煌めきだけを残し「[流星剣]!」稲妻のガザムにして最速のその刃がバルログの魔法障壁を突破しその本体に直撃を加えた。
「UgoOoooho!!!!」
まさか魔法障壁を突破されるとは思ってもいなかったバルログは余りのダメージに反撃に移る事が出来なかった。
「いまだ! 突破するぞ!」
ガザムの号令で一斉に走り出す六人は、呆気に取られている増援の兵士にヘルハウンドを射掛けさせ、そこへさらに追撃を掛ける
「ぬおおおっ!」
ジェイクはその大斧を後ろからヘルハウンドに叩き込むと突破口を開き、そこへ続け様に鉄の矢が雨あられと降り注ぐ!
流石にヘルハウンドはバルログの様な魔法障壁を持っている訳では無いので怯んだ隙に、稲妻のガザムが猛威を振るう。
その大剣を深々とヘルハウンドに突き刺し、返しの剣でもう一匹を両断すると、そこへロイドがアイスジャベリンを放ち串刺しにする。
有り得ないほどの近接戦闘は魔法使いに取っても致命傷となるが、当然相対するモンスターに取っても恐るべきダメージを与えるのだ。
(もう二度と御免です!)
ロイドは必死で死の恐怖と戦っていた。
「やるな! ロイド!」
「ありがとうございます! こんな接近戦は魔法学校では習いませんでしたがね!」
「何事も実線だよロイド!」
「危ない! 隊長!」
その時ガザムはジェイクに突き飛ばされた。壁に叩きつけれたガザムは──ヘルハウンドが至近距離から放った爆炎に包まれるジェイクを見たが──一瞬で炎に包まれてしまう。
「ジェイク! ちくしょう! お前ら!通路に飛び込め!」
炎を放ち隙の出来たヘルハウンドにガザムは大剣を振り下ろし、その脇腹を深々と裂くと右に飛び込んで後方のヘルハウンドが放った火球を地面を転がりながら躱す!
そして「[烈空斬!」を放ちヘルハウンドを斬り裂くとバルログを振り返る──が、そこにバルログは居ない。
(何処に行った!)
振り返るとロイドが上を指差して喚いている。
「なに⁉︎ 上が──」
そこには空を舞うバルログが──居た。
「飛べるのか!」
怒りの頂点に達したのかバルログがヘルハウンドを無視して飛び込んで来たのだ。
「ちくしょう! 俺は誰でも怒らせるんだよな!」
空から舞い降りて来たバルログが《ズズズ──ンッ!》とその爆炎の体と共に周囲を焼き尽くすのを必死で躱し、ガザムは出口に疾走する。
「[アイスブラスト]!」
ロイドが牽制を放つとそこへガザムが飛び込んで行く。
「逃げるぞ!」
「は、はい!」
殿を務めるガザムとロイドはバルログの炎弾を躱しながら必死に迷宮を走り抜ける。
ロイドがマジックシールドを展開してもバルログの圧倒的は火力で一撃で破壊され、二人は転げ周りながら逃げ惑うしかない。
二人は死に物狂いでやっと最後のモンスターハウスに飛び込んだ。
「ここも全滅か!」
やはりモンスターの死骸がおびただしい数放置されている。
恐らくはバルログとヘルハウンドを呼び出す為に生贄にされたのだろうが、今のガザム達にはそれは分からない。
そこへバルログの炎の鞭が前触れ無く振り下ろされる。
矢を後方に射掛けようとしたアーチャーにヘルハウンドが飛び掛かり、助けようとした所へ振り下ろされた炎の鞭はヘルハウンドごと焼き尽くしていった。
「ちくしょう! やりたい放題やりやがって!」
しかし、今のガザムにはもはや反撃の手段は無かった。大剣スキルも無限に放てる訳では無いし、今ではもはやその間合いに踏み込む前に炎に巻かれる事になる。
ロイドとアーチャーが必死にヘルハウンドを牽制し、狭い迷宮の中を必死でバルログから逃げるのが精一杯の抵抗だった。
迷宮の出口まで逃げおおせる事が出来れば、広大なジュール大森林なら逃げる位なら出来る筈だ! そしてこの事をジェラルドに伝えなければなら無い。
右に左にバルログの猛攻を躱しながら、ガザムは最後のモンスターハウスを抜け、出口への狭い通路に飛び込んで行った。




