第三十九話 椎葉の選択
第三十九話 椎葉の選択
☆迷宮カトリーヌ
コントロールルーム
TABLETを開き、俺はジョブとスキルの確認をしていた。
決してエレノアさんと気まずいから寝静まるのを待っている訳では無い。
理由は一つ、今日最後に現れた女勇者(未確認)だ。
規格外の存在である勇者を食い止めるのはほぼ不可能に近い。だが稀なる存在である女勇者は何故かこのジュール大森林に何らかの使命を帯びてやって来たようである。それもお忍びでだ。つまり国外からの干渉である可能性が高い。
そしてポイントは一つ、カトリーヌが言っていたレベルの問題だ。付け入る隙は其処にしか無いだろう。その為には今の様にカトリーヌに迷宮を拡張させるだけでは不完全だろう。
そこで俺はあるシステムを利用する事に決めた。
それはダンジョンマスターに与えられた権限の一つである、[ジョブ]とそれにまつわる[スキル]だ。
∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥
ダンジョンマスター
Level01
椎葉 真 21才 ♂
LIFE
♡♡♡♡♡♡♡♡
HP056/056
SP254/254
MP00050/52680
・ジョブ
・──
・スキル
・──
*コロナ社土地建物管理開発部員
*ハイエルフの加護
∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥
現在はハイエルフの加護が有るので、俺は対物理、対魔法、対属性、対精神のそれぞれに補正を得ているらしい。
流石に勇者や魔王に対抗できる程では無いらしいが、その辺の冒険者なら問題無いのだが、既にその一つに遭遇しているのだからままならない。
今の迷宮カトリーヌには決戦戦力が足りなさ過ぎる。これは迷宮を拡張する前に破綻する可能性がある今の現状では放置出来ない問題だ。
必ず迷宮として認識される事になるのだが、その準備が整うまでをどう凌ぐかが課題となる。
そこで俺は、何とかこの迷宮カトリーヌでダンジョンコアと無関係で暴れ回る存在を創り出そうと思案していた。
つまり、ただの洞窟に巣くった魔人を打倒させ、その隙に迷宮の拡張を行おうと言う寸法だ。これでさらに少し時間が稼げるだろう。
当然これは最後の手段ではあるが、召喚したダンジョンモンスターに任せる事は出来ない。何故ならこの作戦の肝はダンジョン外への攻勢が必要になるからだ。だから、コレは俺がやるしか無い。ブレアやエレノアさんに任せる訳にはいかない危険な任務になる事は間違い無いからだ。
「さて、ならどれを伸ばしてみるかだが」
候補はこの辺りだろう。
・錬金術士
ホムンクルスを創り出せる。
希少金属を錬成したり精製出来る。
爆薬、強酸、毒薬などを合成できる。
・呪術士
物質や武具、道具に魔力を込められる。
ゴーレムを創造出来る。
・召喚士
マーキングしたモンスターを召喚出来る。
魔石があればそこからも魔力の身体を与えて召喚も可能
・死霊術士
触媒を元にアンデットを召喚できる。
・魔獣操士
テイミングした魔獣を口寄せ出来る。
・学術士
・秘薬術士
最初の五つは生産能力に近いスキルを皆持っている。それに召喚に近いスキルも皆持つハイブリッドジョブと言えるだろう。そして戦闘以外でもレベルアップが可能な数少ないジョブなのだ。
残りの二つは補助として有効そうだ。
「エレノアさんはダンジョン内での勧誘要員になって貰おう」
手駒が足り無い所を冒険者からリクルートしたい所だ。俺は怪しいから美人のエレノアさんだな。設定的にエレノアさんも捕まって期間限定で協力者になってる事にしよう。
あと可哀想だけど奴隷契約か従魔契約も結んでしまえば完璧だろう。
「ただ、これで女勇者と激突出来るかどうかと言えば──」
「まず無理でしょうね」
「!!! え、エレノアさん!」
まずい! 寝首をかきに来たのか!
「ダンジョンマスターが全面に出るなど、絶対に避けるべきですよ」
おお? 少しは機嫌が直ってるのかな?
「ええ、でもダンジョンモンスターで勝負を賭ける前に乗り込まれそうですからね。あくまでも最終手段です(限りなくそうなりそうな気がするが)」
エレノアさんは呆れたように溜息を吐く
「この状態からでも椎葉は本気で大魔宮を創るつもりなんですね」
「当然です。まだ事態はどう転ぶが分から無い。今は俺達に不利な展開ですが、この後はどうなるか分かりませんからね」
「では、少し教えておいた方が良いでしょう。この国と周辺国の状態、今迄の関係性もね」
「ええ! それは助かりますね! ここから先は一手足りとも差し違える事は出来ませんから」
「あ、あと……すいません…私、貴方の世界の事を全然知らなくて。ワザワザ私達のためにこの温泉を用意してくれていたんですね。それに、昔は大衆浴場で男女が混浴で、年老いたパートナーの身体を洗って上げたり、コミュニケイションをとるために利用していたなんて知らなくて。その準備して下さってたなんて気が付かったんです」
ナイス! カトリーヌ良くやった。それは昔と言っても四百年前のしかも江戸の事だ。長命なエルフを勘違いさせたんだな。こんど褒めてやらねば。
「いえ、エレノアさん、苦楽を共にする家族なんですから当然ですよ♡」
「ええ、それにモニタリングがコロナ社からの指令だなんて知りませんでしたから、無礼な事をしてしまいました」
いえいえ! エレノアさんからの責めなら何時でもオッケーっす!
「言え、僕も言葉足らずでしたから」
「ええ、すいませんでした。でも、あの…」
「はい?」
「画像は消しておいて下さいね。確か保存の義務があるのはコントロールルームとマナリアクター、それとダンジョン内だけなんですよね? 確かこのボタンがデリートだとカトリーヌから聞きましたが」
「!!! は、はい…そうです」
しまった。
カトリーヌめ、俺に直接言ってもダンジョンマスター権限で抵抗出来ないからエレノアさんを利用したな。
こうして、俺の秘密の映像コレクションは第一巻で完結となってしまった。
いや、もっと大切な物を得たと──言う事にしておこう。
その夜、俺とエレノアさんは深夜まで情報を交換し戦略を練り直した。
そして、俺は明日初めての、ファーストジョブを取得する事になる。




