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ダンジョンコアメンタルは恋をしない  作者: 菜王
第一章 迷宮を作ろう!
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第三十二話 銀の蜘蛛

第三十二話 銀の蜘蛛


☆迷宮カトリーヌ


 夕刻、迷宮カトリーヌの[コントロールルーム]に警報が鳴り響く。慌てて走り込む椎葉はモニターに映る影をみて驚いた。


「……あれは…」


 そこには銀髪の美少女が映っている。しかしーー


「……怪我をしているのか?」


 その足取りはヨタヨタと危なっかしいものだった。しかしここはジュール大森林だ。いくら危険な魔物が少ないとは言え、少女が一人で歩き回れる場所では無い。


 そこにカトリーヌとブレアが洞窟ウサギのコロニーから慌てて帰って来た。

 基本的にフロア11が完成するまでは隠れながらの作業を心掛けているので、二人にも見つから無い様に指示してある。


「マスター〜、何事ですか?」

「……あれは…ニンゲン?」


「違いますね」

 遅れて入って来たエレノアはモニターを見ながらそう指摘して、ノートパソコンをtapし情報を引き出した。


「銀髪と銀の瞳、そして抜ける様な白い肌。そしてこの魔力は……恐らく高位のアラクネが人に変化したモノでしょう。しかし、怪我をしているようですね」


 エレノアが指し示したノートパソコンの画像には銀毛に覆われた巨大な蜘蛛の画像が表示されていた。


「ああっ! 変化が解けました〜!」


 するとそこには、一匹の巨大な蜘蛛が横たわっていた。椎葉は一瞬考えたが、立ち上がるとブレアを従えフロア01に向かう。


 基本的にエントランスホールは出入り自由にしてあり、既にエルフの結界も外して動物やモンスターを呼び込む態勢に移行している。

 しかし今現れているのはかなりの上位個体だ。恐らくはまだ幼いのだろうが。

 俺はセントラルターミナルを抜けフロア01に辿り着き、ジッと様子を伺う。


♢フロア01エントランスホール


 既に大蜘蛛の姿に戻り、弱っているのか動きが殆どなく、そして足も五本しか残って無い。


「……恐らく何らかの上位種と争って逃げ出したのでしょう。いかなアラクネとは言え、最初から強い訳ではありませんから」


 遅れて走って来たエレノアさんが様子を探りながらジッと外を伺う。


「……それよりも、いくら幼いアラクネとは言え、ここまでのダメージを与えられるのは並大抵の相手では無いはず。その相手が気になりますね」


 そう言ってエレノアさんはエントランスホールから外に出て、周囲をそのウッドエルフの高い感知能力で探り始めていた。


「カトリーヌ、転送陣を開いてくれ。ここにこのままにしておくと何にせよ危険だろう」

『……了解した。では魔石で座標を固定して』

 椎葉は魔石を大蜘蛛の横に置き、カトリーヌに転送陣を開かせる。


「ブレア、付いて来い。エレノアさん、暫く警戒をお願いします」

「は〜い☆」

「分かりました」


 魔法陣が開きフロア11フリールームAに転送した。


「……大蜘蛛か…」


♢フロア11 フリールームA


 動きの無い大蜘蛛を取り敢えず休ませる事にした。大蜘蛛は高い生命力が特徴で、凄まじい回復能力を誇る。椎葉はエレノアに精霊魔法の中から回復と治療を使って貰い、それまではブレアに精神魔法による魅了により落ち着かせる事にした。


「ブレア、魅了で少しの間落ち着かせてくれ」

「は〜い、この子かなり怯えてます〜」


 今の所は意識が無いが、後から混乱するかもしれ無い。暫くこの部屋で隔離する事になるだろう。

 椎葉はマジマジとその銀毛に見惚れていた。その美しい光沢はまるで蝶の羽根のようにも見える美しさだった。体長が、2mほどあるが、まだ幼い個体だと言う。


「……椎葉…眷属支配するの?」

「……いや、それは少し待とうか」


 眷属支配をすると、確かに支配は出来るがその意識レベルはかなり下がってしまい、傀儡の様になってしまう。椎葉はそれを好ま無い。


(と言うかかなりの美少女だったな)

〈ガジッ〉

「あいたあっ! こ、こら! 噛むなって言ってるだろ!」

〈ガジッガジッ〉

「いででで! わかった! わかったよ!」

「……椎葉の目付きが悪かった…」

「お前ね! 歯が食い込んでたから!」

 何気に弾丸ですら弾き返す超常の存在であるカトリーヌは、歯も丈夫な様だった。虫歯一つ無いその歯は正に凶器である。特に俺に対して。てかマジ痛い。


 そこへエレノアさんが帰って来る。特に問題は無かったようだ。エルフレンジャーであるエレノアさんの索敵能力は途轍もなく高い。漏れが有るとは考え難いので今の所は問題無いと言えるだろう。

「エレノアさん、この蜘蛛に回復と治療を施して欲しいんですが」

「回復と…治療ですか」

 エレノアさんは少し逡巡したが、そっと大蜘蛛に手を当てる。

「椎葉さん、ではこの大蜘蛛を仲間に加えるのですね?」

「……はい、出来れば眷属支配せずに自分の意思で仲間になって欲しいですけどね」

「わかりました。多分この子はレアですよ」

 そう言ってエレノアさんは水の精霊を呼び出し、回復魔法を唱えた。

「[ウォーターヒーリング]」

 しかし、ダメージが深いのかビクッと痙攣はしても意識はまだ戻ら無いようだった。

「では上掛けしておきましょう[アースウォーム]」

 大地の精霊の力をかり継続回復呪文を上掛けする。これで数時間後になある程度回復出来るだろう。さすがに失った脚を元に戻すのは時間が掛かるだろうが。

「ブレア、どうせ暫くは動け無いんだから、スリープで寝させておいてくれ」

「は〜い[スリープ]☆」

 ブレアの魅了と精神魔法を使い大蜘蛛のケアを行い、さてこれから晩御飯でも……と思っていると、ここでさらにお客様が現れた。


 再度コントロールルームに警報が鳴り響く。するとエントランスホールに黒い影が映る。

「今度は何だ?」

 ジッとモニターを見ていると、こそこそと何か犬の様な生き物が中を伺っている。そしてそれはスックと立ち上がりエントランスホールに入り込んで来た。

「……コボルトか?」

 恐らく獣人としては最弱と呼ばれるコボルトは、まともな戦闘力では人に遠く及ばない。ただ移動力は高く、森の中では侮れ無い働きを見せる事もある。力押しになり易い迷宮では普通なら圧倒的に不利だが、この迷宮カトリーヌのフロア01から05までなら違う。

 しかし、残念ながら今日はそのまま帰って行った。恐らくは斥候だと思われるので、次に期待しよう。


 コントロールルームを自動警戒に切り替えた。情報だけ俺のTABLETに飛ぶようにして今日の業務を終了する。


 大蜘蛛の様子を見に行ったら何気にブレアが撫でてやっていた。カトリーヌは周りをウロウロしている。一応心配なようだ。

 俺がフリールームAに入ると気が付いてパタパタと走って来た。

「……椎葉、お腹空いた」

「ブレアもペコペコです〜☆」

「分かった。では晩御飯にするかな」


 そして今夜は温泉カトリーヌがついにオープンする記念すべき日である。どうやってエレノアさんが入浴している時に間違えて乱入するのかを考えておかねばなるまい。ここは大人の男としてスマートに行きたいモノだな。


 

 

 


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