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ダンジョンコアメンタルは恋をしない  作者: 菜王
第一章 迷宮を作ろう!
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第三十話 咆哮

第三十話 咆哮


☆岩の迷宮


 迷宮にモンスターの咆哮が響き渡る! 前後を挟まれた事を悟ったガザムは危険な判断を迫られていた。

 何時の間にか背後に回り込まれている上にその迫り来る気配は凄まじい数だ。このまま包囲されれば一人残らず殺されるのは間違いない。ならばここは一縷の望みを託して二つある通路のどちらかを突破するしかない。

(どうする! どっちにする!)

 そしてガザムは決断した。

「ついてこい! こっちだ!」

 手練れの剣士であるガザムは察知そた気配からーーなんとさらに奥に進んだ! それはギリギリの判断だった。決してそれで助かる訳では無いが、凄まじい数の殺気がする出口への通路はとても突破出来る見込みがない。ならばとガザムは気配の少ないと感じる前に進んだのだ。

 驚いた部下たちだったが走り出したガザムに慌てて付いて行く。半信半疑だが散り散りになるよりはマシなのだから。

 ジェイクは両手斧を構え必死で先頭に立とうとしていた。それがウォーリアの役目だと言わんばかりに!

「隊長! 本当に奥に進むんですか!」

 走りながら一瞬考えたガザムだが答えは明確だ。

「取り敢えず一瞬でも長く生き延びる方を選んだ! 後はこれから考える!」

 しかし助かる方法は未だ見つかる気配は無かった。

「仕方ねえ、最後までお付き合いしますよ!」

 その時狭い通路からゴブリン達が飛び出して来る。

「ロイド! ぶちかませ!」

 既に構えていたソーサラーはその魔力を炎に変えて解き放った。

「[ファイアーボール]!」

 燃え盛る火球が飛び出して来たゴブリン達を炎に包む! あっと言う間に燃え尽き死に至るその奥から、さらに迫る群れにガザムとジェイクが踊りかかっていった。

 両手剣で戦う手練れのフェンサーであるガザムはまるで木枝でも払うかの様にゴブリンを両断していく。《ブンッ》と振るわれたバスターソードをゴブリン達は止める事は出来ない。そしてウォーリアであるジェイクのバトルアックスの一撃はジョブ特性でもあるノックバックとハードヒットを連発し狭い通路を肉塊で埋め尽くして行った。

 ここでガザムの判断が功を奏する事になる。その攻撃力を前に集中する事により、狭い通路に飛び込む時間を稼げたせいで少なくとも全周包囲を受ける事は避ける事が出来たのだ。

 そしてガザムとジェイクの圧倒的な攻撃力により、少なくとも目の前に現れたゴブリンを瞬殺する事が出来る所為で、後方を牽制しながらの遊撃が可能になっていた。

 さらに眷属支配では細かな指示は出来ず、狭い迷宮の中では詰まってしまいその数を有効に使う事は出来ない。そして罠に嵌めた筈の三人は逆に迷宮の最奥で逃げ場を失くしていた。あまりに多過ぎるモンスター達を引き連れていた所為で自分達も身動きが取れなくなっていたのだ。


「あいつらは頭がおかしいのか!」

 まさか奥にさらに飛び込んで来るとは思ってもいなかった三人は、次々に倒されていくモンスターの影で逆に追い込まれていた。

 逃げる所を追い詰めるつもりでいた所為でモンスターの多くを後方に回り込ませ、逃さない様に布陣していたのだが実際は逆に動かれ、戦力の半分以上が役に立たない今の状態では自分達が打ち倒されかねない。

 そして謀略が主な任務である三人は、直接的な攻撃力では到底稲妻のガザムと張り合える訳はないのだ。

 徐々に戦力を削り取られながら三人は迷宮の奥に後退を余儀なくされていた。


♢♢♢


「矢を放て!」

 ガザムが空を飛ぶハーピィに矢を射かけさせる。狭い迷宮とは言え所々に広い空間を持つ岩の迷宮では細い通路を出た時が危険なのだ。

「隊長、どうやらこいつらは眷属支配か何かで操られてるようですな」

「ああ、連携も悪いし、反応も鈍い」

 そして一番の救いは飛び道具を持った敵が未だ居ない事だ。目の前の敵を凌げば良いのならガザムとジェイクを倒せる奴など少なくともこの大部屋の中には居なかった。飛び掛かって来たハーピィを瞬殺しジルはさらに後方の通路に矢を射かける。

 しかし、その迷宮の闇を唸り声を上げながら疾走する影があった。

「ガウウウツ!」

「!!! グレイウルフだぁ!」

 スカウトが声を上げるが、その襲いかかる速さにおいつかない。あっと言う間に食らい付かれ押し倒された。その攻撃力と危険度はゴブリンなどよりも遥かに高い。皮肉にも大量にゴブリン達を倒した所為で後方にいたグレイウルフに取り付かれる事になったのだ。

 押し倒されたスカウトは必死でショートソードを振るうが喉元を食い破られ絶命した。

「ダイスッ! 隊長! ダイスが殺られました!」

 後方で殿を務めていたウォーリアが叫ぶ。

「続けて来るぞ!」

 ジムが鉄の矢を連射して二匹を即死させる。ハイレベルなアーチャーは接近しても弓を射つづける! さらに飛び掛かって来た三匹にも連射するがーー一匹がかい潜りその牙を剥いた。

「どけぇ!」

 そこへジェイクがバトルアックスを振り切り真っ二つに両断し、ダイスと呼ばれるスカウトに食らいつくグレイウルフを横薙ぎにして吹き飛ばす。ウォーリアのハードヒットをまともにくらい10m近く転がり続け壁にあたると、そこに醜い豚の様な顔をした奴等が現れた。

「ブフォオオ!」

 現れたのはオークの群れだった。ゴブリンと違い人に近い体躯を持ち、分厚い皮膚を持つ遥かに手強い強敵であるオークは、何よりその武装が厄介なのだ。

「……ちっ! 面倒な奴がきやがった!」

 そう言ってガザムが人にはあり得ない速度でオークの群れに襲いかかり、その両手持ちの大剣バスターソードを一気に叩き込む! 突然遠間から飛び掛かって来たガザムに先頭のオークは剣を合わせる事すら出来ず斬り裂かれた。

 そしてそのまま右に体を躱し二匹目を横薙ぎにすると、そのまま痙攣するオークを三匹目に蹴り飛ばし、一瞬怯んだ所に鋭い突きがその喉元を貫く。

(あれが稲妻のガザムか)

 あまりの早業に思わず息を飲むロイドは、それでもその後方からやって来たオークの群れを捉えるとーー「下がって下さい!」ーーそこへ範囲攻撃呪文を放った。

「[ファイアーストーム]!」

 炎の嵐が十匹近いオークを火達磨にする。

「「「ブフォ⁉︎ オオオッ!」」」

 炎に焼かれ転げ回るオーク達の悲鳴を掻き消すように、通路の奥からさらに新手か現れる。その巨躯を揺らしながら〈ズズンッ!〉地響きと共に乗り込んで来たのは

「……トロールか!」

「「「!!!!!」」」

 森の巨人と呼ばれる大型の獣人が巨大な石の棍棒を振り回しながら雪崩れ込んで来る。二匹はその棍棒を振るいガザム達に襲いかかっていった。

 ジルは鉄の矢を続けざまに三連射し牽制攻撃を仕掛けるがトロルは怯まない。

「眷族支配か⁉︎」

 急所を撃ち抜かれて悶え苦しみながらもその巨大な石の棍棒を振り回す! さすがのガザムも一撃でも喰らえばお終いだ。

 両脇から挟み込むようにジェイクとカバーしあいながらガザムはバスターソードを叩き込む! 手や足の防御の弱い場所を狙い動きを止めながら、ガザムは繰り出される棍棒の一撃を躱し「ぬんっ!」とその棍棒を持つ手首を斬り飛ばした。

「ゥガアアアアアッ!」

 悶え苦しむトロルの首をジェイクがバトルアックスで斬り飛ばす。すると仲間を殺された事に怒り狂う残ったトロルにロイドの雷撃が炸裂した。

「[サンダーボルト]!」

 直撃したトロルが呻き声を上げ動きが止まると、そこへ鉄の矢をジルが叩き込む。

 目を射抜かれたトロルは最後の一撃を必死に繰り出した。振り下ろされた石の棍棒は《ズズンッ!》と咄嗟に躱したジェイクの足元の床を叩き潰すが、それが最後の抵抗になる。フラフラとバランスを崩し膝をつくトロルに、ガザムはバスターソードの切っ先を深く抉り込んでいく。

「ググッ!グガアアッ!」

 断末魔の呻き声上げ倒れていくトロルだが、ガザム達の死闘はまだ始まったばかりであり、運命の天秤はいまだ大きく揺れ動いている。そしてさらなる生贄を求めるかのように、迷宮の闇は妖しく鳴動しモンスター達の咆哮を響かせていた。


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