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ダンジョンコアメンタルは恋をしない  作者: 菜王
第一章 迷宮を作ろう!
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第二十九話 ライフスペース

第二十九話 ライフスペース


☆迷宮カトリーヌ


 今日の第四工程までを終え、迷宮の総延長は2230mとなっていた。ただしただの洞穴が広がっているだけではあるが。その内の約1/3が解放されており、残りは隠蔽されている。

 結局大ネズミのコロニーが三つと洞窟ウサギのコロニーが一つ追加されていた。何気にブレアが入り浸っている。やれやれだが、ただ洞窟ウサギは大ウサギと違い、少しレアな種類らしい。そして約束通りブレアはエサになる植物を森の中に探しに行った。


 そして今日の仕上げだ。

 遂にライフスペースを作る事になる。これでやっと本格的に迷宮運営が始まる訳だ。

 俺とカトリーヌ、エレノアさんはフロア11にセントラルターミナルを使い降り立つと、最後の打ち合わせに入る。ここはいわゆる前線基地になるので手は抜けない。


「カトリーヌ、ではここにライフスペースを設営するぞ」

「……これでお風呂に入れる?」

「当然だ(混浴なのは秘密だ)!」

「……また雑魚寝なんですよね?」

「…………」

「……エレノアは嫌なの?」

「そ、そんな事は無いわよ!」

「まあ、その辺はおいおい考えていきましょう」


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


■迷宮のあり方 その2


 迷宮に於ける前線基地であるライフスペースは、殆どの場合BOSS部屋の次のフロアに設置される事が多い。この場合は椎葉がフロア10にBOSS部屋を設置するのと、フロア11から特別な作業を始める為にこの場所に設営する事になった。

 主に八つの施設から成るこのライフスペースは生活するだけでは無く、生き残る為の最後の砦の意味もあるのだ。


■マナリアクタールーム


 ダンジョンコアを設置して置く迷宮の心臓部。

 ここから結界を形成し、その内部が支配領域となる。そして膨大なマナを蓄える場所でもある。

 内部場所に強力な魔法障壁を施してあり、マナの暴走を封印する事が出来る。


■コントロールルーム


 迷宮内部に浸入して来た敵に対応する為の部屋。幾つかのモニターと投影式のスクリーンからなる。


■トラベルゲート


 転移魔法陣を埋め込んだ部屋。物資の受け取りを行える。


■ダイニング&キッチン


 居間と食堂が兼用になっている。奥には食材庫が併設されている。因みに今はMREで凌いでいるので紅茶を淹れる位しかキッチンは使われていない。浄水器はここに据えられている。


■ベッドルーム


 今のところ一部屋で雑魚寝スタイル。エレノアさんは当然嫌がっているが椎葉はなんやかやと誤魔化している。

 巨大なベッドは特注になっている。ちなみにウッドエルフがお目付役についているのは椎葉だけであり、雑魚寝が問題化しているのも椎葉のいる迷宮カトリーヌだけだったりするので、本部もおざなりになっている。


■バスルーム&クリームルーム


 椎葉がこだわっているのが温泉セットだ。循環温水システムを取り付けて使用するので掛け流しになっている。まとめて入れる巨大なものであり、異世界では珍しいのだが、エレノアさんがコッソリ嵌っているのを椎葉は色んな意味で確認している。

 それとクリーンルームには浄化装置を備え付け、トイレや生ゴミの処理も行っている。




■プリズンルーム


 捕虜を捉えておく牢獄。因みにここで仲間への懐柔を行ったりするので案外重要な施設。今の所は5部屋だけとなっている。


■フリールーム


 いわゆる倉庫である。今の所は三つ準備している。最も拡張されて行く事になる。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎



♢フロア11 ライフスペース


 予定している全てのライフスペースを設営するのに二時間ほどかかった。そして明日からはフロア02とフロア11に於ける採掘の準備に取り掛かる事になる。

 そしてトラベルゲートを開設すればダンジョンマスターとしての仕事も第一段階終了となる。同期の問題があるので調整は明日以降になるだろう。

 俺はダイニング&キッチンに戻った。いわゆる生活の中心となる部屋だ。MagicBOXから家具を取り出しソファーとテーブルを置くとグッと生活感が出で来る。

 今は四人だけだが、これからはどんどん眷属も増えて行くし、第二段階を迎えると人員も増える事になる。様々な要素を纏め上げるのがダンジョンマスターの手腕になるのだが、ここに来て不協和音が流れ始めている。

 

「……椎葉…」

「……どうした? カトリーヌ」

「……私の大人パンツが減ってるの」

「……ほほう、それは大変だな」

「……椎葉…私に何か言う事があるんじゃ無い?」

「……きっと大人の事情があるんじゃないか?」

「…………」

「…………」


 仕方ない、大人パンツの追加発注が決まった。何せこの迷宮には大人の階段を上った人が三人もいるのだから

 俺はTABLETを開きそっと大人パンツを検索した。



♢フロア01 エントランスホール


 エレノアが大ネズミと洞窟ウサギのコロニーの様子を見ている。まだ繁殖こそ始まっていないが、かなりの数がウロチョロとしはじめていた。


「やっぱりブレアは桁違いのサキュバスなのね」


 そう言って洞窟ウサギのコロニーを見て回っているエレノアが、その内の一匹をジッと見つめている。


「……このウサギ、どっかで見た事があるんだけど? 何の本だったかしら?」


 ブレアがコロニーに持ち込んだ洞窟ウサギは八匹だったのだが、内の一匹に変わった洞窟ウサギが紛れ混んでいた。しかしこの時点でそれに気が付いた者はこの迷宮カトリーヌには居なかった。その価値に気がつくのはまた暫く後の事になる。エレノアもどこか記憶の端に引っ掛ってはいるが特定は出来なかった。


 そしてエントランスホールに動く者の影が現れる。その体躯は3m近い。その気配を察知し、エレノアがダンジョンウォークを使い様子を探るべく接近した。


「……あれは…トロール(森の巨人)だわ」


 その巨体を揺すりながらノシノシと歩いて来たトロールは、ジッとエントランスホールを覗き込んでいる。


(入り込むつもりなのかしら?)


 敵意は感じられ無いがトロールは侮れる相手ではない。獣人や亜人と言われる種族の中では比較的穏やかな性格をしており、そしてあまり群れを作らず、家族単位で生活をする珍しい生態を持っていると言われている。

 しかし、ひとしきり中を見ていたが、諦めたのかまた森の中にノシノシと歩いて行った。


「お気に召さなかったようね」


 そっと見送るエレノアだったが、その気配を遠くから伺っている者が居た。その気配はジッとこの洞穴のような粗末な迷宮を探る様に、森の中の闇に紛れている。


 このジュール大森林には多くの思惑が紛れ込み、自らの出番を虎視眈々と狙っているのだが、その多くは未だ森の闇の中でジッとその時を待っていた。そして、迷宮魔境混在型であるカテゴリー5のダンジョンコア、カトリーヌもその一因子なのは間違いない。


 椎葉とカトリーヌの奮闘はまだ始まったばかりだ。



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