第十八話 侵入者
ダンジョンマスターの必死の奮闘が始まります!
(=゜ω゜)ノ
第十八話 浸入者
☆迷宮カトリーヌ入口付近
夕刻、三人の探索者は迷宮カトリーヌまであと一キロほどの場所まで辿りつく。三人はこのジュール大森林の浅い領域はかなり探索していたが、この辺りまで来たのは始めてだった。
「そろそろ山の麓ね」
タニアは地図を見ながら太陽の位置を確認していた。すでに日は沈みかけている。まともな冒険者なら森のど真ん中で夜を過ごす様な真似はしない。例えどんなに馴れた森であってもだ。それほど夜の森は危険な場所だと言える。
「少し道に迷ったからね、仕方ないけど、とうする? 今日はもう戻れないよね?」
狩人であるミアはなるべく時間を潰されたく無いと思いつつも、やはり夜の森を突破するのは危険だと判断していた。
「取り敢えず山の麓まで出ませんか?
ロビンも少し行った所に夜営出来そうな場所を見つけています」
獣使いであるスピカに周囲を警戒していたフクロウが森の切れ間に開けた場所を見つけ事を伝えに帰っていた。山の麓なら、しかも岩場を背に出来るなら危険度はかなり下がる。
「……ならいきましょう。ロビンやシルバーウルフが居ればなんとかなるでしょうからね」
そう言って三人はさらに山の麓に進んで行った。
そしてそれは迷宮カトリーヌに三人の探索者が遭遇する事を意味している。
さらにその情報が伝わる事になる。本来ならこの時点で迷宮が見つかってしまえば一気に冒険者が乗り込んで来る可能性があった。しかし、運命の流れがここから複雑に絡み合って行く事になる。
三十分後、三人は遂に迷宮カトリーヌ入口に辿りく。そこは森の切れ間、幾ばくかの開けた場所、少し周囲より小高い石崖だった。
「なによ、こんなトコに……これは洞窟なの? 迷宮には見えないけど?」
「……スピカ、ここって今まで探索に来た事あったかな?」
「……ありません。ミア、狩りの途中で立ち寄った事はありませんか?」
ミアは首を振った。ここは開拓村から50キロほどの距離だ。日帰りは流石に冒険者とは言え難しい位置にあり、おいそれと立ち入る場所では無い。
「もしかして、新しい迷宮?」
「……この時期にかい?」
「これが星読みの言う異変なのでしょうか?」
三人は迷宮(見た目は洞窟)の前に立ちその様子を伺っていた。しかしいつまでもそうしてはいられない。
迷宮からは不思議な事にモンスターが溢れでる事は稀だと言われており、特に出来たての迷宮の時は顕著だと言われている。
しかし余りにも放置されていたり、自然の洞窟なら話は違う。放置されて大きく育った迷宮からは稀ではあるがモンスターが溢れでる事があるし、自然の洞窟なら自然にモンスターが定着するからだ。
問題はここがその何れかなのかーーと言う事になる。それはつまり……
「……調べてみるしか無いか…」
とこうなるのだ。そして騎士団からも探索の命令を受けているのに、そのまま放置してはどんなお咎めを受けるか分からない。気の進まない三人はそれでも諦めて探索をする事にした。
「……気が進まないね〜」
「……なんだかこじんまりとしてますね」
「……さあ、行くよ! もしも巨大迷宮を見つけたなら直ぐに騎士団に知らせなきゃ。それと冒険者ギルドにもね」
三人は迷宮の中に入って行ったが、その足取りは限りなく重い。
♢迷宮カトリーヌエントランス
〈ボッ〉タニアは松明に火を付け周囲を伺うと、思いの他広い空間が広がっていた。罠を探すが、少なくともこの空間には何も仕掛けられた雰囲気は無い。
「……罠は無いみたいだね」
タニヤの盗賊LV12は独り立ちギリギリだが、それでもジョブアビリティによる補正で信頼度はある。三人は警戒しながら内部の探索を始めた。
「……何かいるよ」
ミアの狩人LV08でも捉えられる何かが闇の中に潜んでいた。しかしそれは
「そこだ!」
ミアは矢を放った! その鉄の矢は〈ヒュンッ〉と大気を切り裂き鈍い音が響く。
「晩飯だな!」
そこには大ネズミが鉄の矢に射抜かれ〈ビクッビクッ〉と痙攣していた。すると数匹の大ネズミが慌てて迷宮の外に飛び出していった。
「先客が居たみたいだな」
「……スピカ、何か気配はあるかい」
スピカは首を横に振る。シルバーウルフは危険な生き物には敏感なのだ。獣使いはそのジョブアビリティにより支配下においたモンスターと意思の疎通をある程度はかれる。
「……この洞窟には危険な生き物はいない様ですね。ロビンを放って見ましょう」
フクロウであるロビンは獣使いにとっては必須の従魔だ。森の中を自在に飛び回り、ナイトビジョンで洞窟の中すら索敵が出来る。攻撃力は殆ど無いが、複数の従魔を従えるのが一般的な獣使いが二匹目や三匹目に必ずと言って良いほど選ぶのだ。そして細い通路を見つけた。
「……奥に通路がありますね」
「これを見て」
ミアが指を指す場所には煮炊きをした後がある。そして周囲をよく観察すると、鳥の骨や食べ物の残飯、そして……
「……カボチャパンツ?」
使い古された女物の下着や服が捨てられていた。それはある事を意味していた。
「そんなに古くないね?」
「そうだな、誰か住んでいたのか?」
「この場所は二つの街のほぼ中間くらいの位置にありますからね、もしかすると開拓村の事を知ら無い新しくやって来た冒険者が山小屋代わりに使っていたのかもしれませんね」
三人はこの時点で迷宮では無いと判断していた。自然発生的にこの世界では突然迷宮が現れる事は良くあるが、それもダンジョンコアと呼ばれる物を破壊すれば成長は止まり、いずれはモンスターも枯渇していくのが一般的な迷宮に対する認識だ。それでもある程度の広さになってから見つかる物だし、そんな場所に人が住むなどあり得無い事だった。
「洞窟なのかな?」
「そうね、一応奥を探ってみましょう」
そう言って三人は唯一ある奥への通路に向かっていった。
「でも洞窟にしてもこじんまりとしていますね」
「う〜ん、まあ洞穴ってとこかしらね?」
「兎に角ショボい洞窟で助かったよ。この中からは大きな生き物の気配は感じられないからね。さ、とっとと調べちゃおうぜ」
そう言って通路の奥へと向かって行った。
♢
その時、カトリーヌは[セントラルターミナル]の最深部にある[リアクタールーム]で監視していた。そこは魔力封鎖を行う結界が施されており、ダンジョンコアの暴走をも完全閉鎖する事が可能な完璧な魔法陣が壁全体に施されている。その奥でカトリーヌは息を潜めていた。
「……大きなお世話…素人どもめ…」
カトリーヌはそう小さく呟いた。この中にいる限りけして見つかる事は無いが、椎葉に言われジッと監視を続けている。
「……椎葉…大丈夫…かな? …少し心配…」
椎葉の指示のもと、作りかけの迷宮に偽装を施し、幾つかの通路を閉鎖してさらに入口を自然の門に改装しカトリーヌは自らの役目を終え皆の帰りを待っていた。
「……椎葉はおっちょこちょい…心配…だ」
そう言ってカトリーヌはフウッと溜息を吐き、また[リアクタールーム]の結界の中わからフロア01に浸入した三人の監視を続けた。




