第十三話 ダンジョンコア定着
第十三話 ダンジョンコア定着
☆
「……ん…終わった…」
「了解した。ではその直下にダンジョンコアを置く[マナリアクター]ルームを設置する。直ぐに掛かりたいが、大丈夫か?」
「……問題無い…カテゴリー5は伊達じゃ無い…それに…カトリーヌはもう…大人…だから」
「……ではよしなに」
えらく大人にこだわるな。
しかし時間はすぎさりもう夕方になりつつある。ダンジョンコアの定着までは一気に行わなければなら無いからな。
気の抜け無い作業が続く(カトリーヌがやってるだけだが)。
♢
それから一時間後、カトリーヌが[マナリアクター]ルームを開設する事が出来た。たとえ仮設とはいえ構造的に特殊な為さすがのカトリーヌも苦戦した様だ。なにせ俺がダンジョンマスターになるまでカトリーヌはダンジョン作成を行った事は無い。ダンジョンコアとダンジョンコアメンタルはあくまでもその力を保持するだけで、ダンジョンマスターが介在しない限りたとえカトリーヌといえども何一つ創り出す事は無い。実に不可思議な共生関係と言えるだろう。よってカトリーヌにとっても初めての体験の連続なのだ。慣れてい無いのは当然と言えるだろう。
俺はTABLETを開き完成した[マナリアクター]ルームを確認する。
「…………よし、魔力封印も伝搬路も正常だ」
これでこのダンジョン内部はカトリーヌの体内と同義になった。閉じた魔法空間が初めて出来上がった訳だ。そしてここに[ダンジョンコア]を設置して接続すれば取り敢えず完成となる。
「カトリーヌ、休憩してろ! エレノアさん、MagicBOXの運搬を手伝って下さい!」
「……ん…」
「分かりました。MagicBOX1と2ですね?」
「はい。そのままコントロールルームを仮設します」
あとは素人でも出来るのだ。まあ、ダンジョンマスターでなければ触れる事すらかなわない[ダンジョンコア]を運び込むだけだ。すでに床には魔方陣は描き込まれているし、[ダンジョンコア]も台座に接続してある。
あと少しだ。
♢
「この辺かな?」「少し右ですね」「……奥過ぎ…」「そうかな? この辺?」「少し行き過ぎましたね」「……奥過ぎ…」「では少し寄せます」「……良いです!」「……奥過ぎ…」「……本当か? カトリーヌ?」
あーだこーだと十分ほどかけて設置を完了した。実際は物理的に接続してある訳ではないので効果範囲にさえ入っていれば十分なのだが、まあ性格というやつだろう。
そしてその脇に電子機器とモニター、サーバーとブックノートを置き起動すれば定着完了だ。実際には定着はしているのだが、その力をコントロール下に置いた訳だ。電子機器はすでにダンジョンコアと同期済みなので起動すれば独自にマナを吸収して電源とする仕組みだ。
「……ポチっとな!〈キンッ!〉おっと! 起動出来たか?」
モニターが[WELCOME MODE]に切り替わる、
「……起動確認…定着完了です!」
エレノアさんも注意深く確認している。稀にだが土地とダンジョンコアが不具合を起こし起動に失敗する事もある。なんでも完全という事は無いのだ。
「……確認…取れました! 起動完了です。椎葉、初めてとは思えない手際でした。お疲れ様です。これで迷宮育成に入れますね!」
俺はホッと肩を撫で下ろした。カトリーヌは何食わぬ顔で休憩している。てかダンジョンコアとはお前の事だからな? 分かってる?
意外なほどカトリーヌは自らのダンジョンコアに興味を示さない。自分の人生なんだがな。まあ、理論上無限に近い長寿を誇るダンジョンコアとダンジョンコアメンタルは謎が多い。気にしたら負けだな。
「……んっ…」
それしか反応は無かった。
少し残念だ。
ただ繋がったPASSからは少し緊張が伝わって来る。カテゴリー5に少しでも感情の起伏があるのは素晴らしい事だ。マニュアルによればダンジョンマスターが最も気を使わなければいけ無い事は関係性らしい。ダンジョンコアメンタルとダンジョンマスターは一心同体なのだから。
因みにダンジョン育成ではこの日をゼロデイ、始まりの日にするのだと言う。
結婚記念日みたいなもんかな? と思ったら〈ドンッ〉と強い拍動が伝わってきたが振り返るとカトリーヌは微動だにしていない。少し耳が赤くなっていたかもしれないが。
てか心臓あったんだな。血も赤かったし。人の数千倍と呼ばれる寿命があるとそうなるのだろうか? 興味は尽きない。
「……椎葉…お腹空いた…かも」
「…………」
食事を摂らない筈のカトリーヌが不可思議な事を言う。
「……因みにエレノアさんて独身なんですか?」
「!!! な、なんでそれを! いえ!し、椎葉さんには関係ないでしょ! へ、変な事聞かないで下さい!」
独身なのか……てかセクハラし過ぎて対応が過敏になっているな。ハイエルフの女王様には是非エレノアさんを恒久的に窓口にしてもらうように頼んでおこう。
因みにライフスペースは時間の関係で明日以降になる。みんなで川の字に並び雑魚寝となる。当然お風呂やトイレはまだ設置されてい無いがエレノアさんには秘密だ。
「よし、カトリーヌ、転移魔方陣を設置してくれ。エントランスホールに戻ろう。入り口を隠蔽したら食事だ」
「……わかった…」
そう、今日はゼロデイだカトリーヌ
ここから全てが初まる日だ。
俺は少し身が引き締まる思いだがカトリーヌは全く動じていない。
大物だな。




