第十ニ話 迷宮の入り口は冒険の入り口
第十ニ話 迷宮の入り口は冒険の入り口
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俺達、[チーム迷宮カトリーヌ]は入り口となる石崖の前に立っていた。
俺の後ろに大人パンツを履いたダンジョンコアメンタルであるカトリーヌ、大人パンツを履いたサキュバスの上位種(あくまでも自己申告にて現在詳細を調査中)であるブレア、そしてお目付け役でもあるハイエルフとよく間違えられるウッドエルフのエレノアさんは現在カボチャパンツを今だに愛用しているという疑惑をもたれている訳だが、クロだと思うが残念ながら物的証拠は無い。この三人が控えている。
「……今何か余計な事を考えてませんでしたか…」
そして最近セクハラされ過ぎて勘が良くなっているようだった。
「……いえ、何も」
「……マスター最低」
「ほんと懲りないです〜」
でも真面目にやらないと今日から野宿となる。ダンジョンマスター的にそれは嫌だ。
俺はTABLETを取り出し、カトリーヌに指示を出す。
このTABLETはマジックアイテムとなっていて、カトリーヌと情報の共有が可能だ。すでにある程度は迷宮の設計も終えてある。だからそれに従い、迷宮を初めるのだ。
「カトリーヌ、先ずはエントランスだ。3Mを3B、外郭から穿孔させろ。そこへ5×5のエントランスホールを造る」
五万ポイント近い魔力保有量を誇るカトリーヌはこのレベルの間は消費量を心配する必要は無い。それはこの次のレベルからのお話だ。
「……了解した」
カトリーヌがさっと石崖に手をかざすと、侵食が始まる様に穴が拡がっていくのが分かる。まるで溶けて行くように進むのが見ていて面白い。
「……流石に桁違いですね。私もカテゴリー3までしか見た事はありませんが、数倍の作業速度です」
「へぇ〜、そうなんですね。さすがカトリーヌだな!」
エレノアさんがジッとカトリーヌの作業を見つめながら感慨深げにそう言った。そうか、大人パンツだからな。それぐらいはやるだろうな。
すると、カトリーヌは少し嬉しかったのか何となく鼓動が早まった気がした。そうか、褒めると嬉しいのか。よく覚えておこう。
ここでエレノアさんに全員にMagictorchを配布して貰い、まだ灯の無い迷宮で作業を続行する。
次に俺はブレアを呼び寄せ、ジュール大森林の索敵に向かわせる。エレノアさんが居るから護衛は十分だろうと判断した。先ずは森の中の動物や魔獣、そして獣人の分布状況を探るらせる為だ。
「いいかブレア、この迷宮にリクルート出来そうな奴を探せ! 多少弱くても構わないからな。何よりも繁殖力の強い奴がいい。それと群れを形成し易い奴等を探して来い!」
「は、はい! 頑張りま〜す!」
そう言って〈ビュン〉と飛び出していく。
サキュバスは維持コストが安いのと機動力が高いのが便利だ。案外拾い物だったのかも知れない。大人パンツは生意気だが。
「カトリーヌ、あと何分位だ?」
「……三十分…くらいだと…思う」
「うそ! 早いわ!」
呆気に取られるエレノアさんを尻目にカトリーヌは岩石をドンドン溶かしていく。この地質の有利な所は補強の必要が無いという事だ。ただ、計算上一つの階層は十メートルは無いと百階層を保てない。その場合何らかの魔法を使い補強が必要になるので、常時消費するロスが発生する。だからなるべく設計的にそれを回避したいと考えている。その一つの目安が十メートルなのだ。つまり百階層に到達する為には、千メートル必要だと言う事になる。
「エレノアさん、外にいるエルフレンジャー達はこの後どうなさるんですか?」
「さすがに目立つ事は避けたいので、あと数日、椎葉さんが五階層まで到達するまで警戒にあたり、その後転移して帰還する予定です。何か問題でも?」
「寝泊りはどうされますか?」
「それはお気になさらずに。ジュール大森林はかなり広いので、現在は散開して警戒に当たっています。いちいち戻る事は出来ませんからね」
「了解です」
「……はい?」
そうか……ならここに寝泊りするのはエレノアさんだけなのか。つまり一つ屋根の
「……マスター…」
「……カトリーヌ、みなまで言うな」
まずいまずい、カトリーヌには筒抜なのか? ダンジョンコアメンタルとダンジョンマスターとの繋がりはそこまででは無いと聞いていたのだがかなり鋭い。単にカトリーヌの勘が鋭いのかも知れないが。
そして三十分後、エントランスホールまでが完成した。
少し休憩させ、次の穿孔の準備をさせる。カトリーヌが疲れる事は殆ど無いようだが、俺の心が病みそうなので休憩はこまめに取らせたい所だ。そうだ、ティータイムの準備をしてみよう。後で発注出来るか調べてみねば。
「カトリーヌ、ではこの中央から真っ直ぐ百メートル進むぞ。そこからセントラルターミナルを十一階層分造り、そこへ今日はダンジョンコアを設置するぞ」
「……分かった」
カトリーヌが穿孔する間に荷物を運び込む。MagicBOXはMagicGLOVLEを装備すると魔力補助により片手で持てる程に軽減出来る優れものだ。今回は2セット持ち込んである。後は運び込んだ後どうやって間違えてエレノアさんの私物の入ったMagicBOXを開けるかだな。
「……椎葉さん…いえ…いいです」
更に勘が鋭くなってる。侮れじハイエルフーーいやウッドエルフだったな。これは最新の注意を払いブレアにやらす他あるまい。
♢
全部で十四個のMagicBOXを運び込み、俺はMagicBOX1とMagicBOX2の確認に入る。この位置からは地脈と龍脈の重合点には届かないので仮の定着と言う事になる。
俺が横目でチラチラと見ているとエレノアさんは自分の私物の入ったMagicBOX14をエントランスホールの隅っこに持って行ってしまった。残念、読まれていたか。
一時間ほど備品の起動テストを繰り返していると『……完了した…後は微調整』とカトリーヌから送られてきた。テレパシーって奴なのか?
「ダンジョンの中はカトリーヌの領域です。意思の疎通が出来なければ管理が大変になりますからね。特にマスターとは映像の共有も可能なはずです」
どうやらエレノアさんにも送られていた様だ。カトリーヌ、変な映像は送るんじゃ無いぞ。……いやモノにもよるな。要研究だ。
「では今から行く。まってろよ」
『……了解…』
少しテンションが低い気がする。一人で作業するのはやはりつまら無いのか? この辺も要研究だな。
「……セントラルターミナルを造るんですね?」
「……ええ、コレを基準にして五階層分まで先ずは完成させます。それからですね」
「では迷宮を開くのは予定通りに?」
「はい、今日から一週間後ですね」
「ではその様に報告させて貰いますね」
「はい、よろしくお願いします」
『……まだ…』
「はいはい! すぐ行くよ!」
『……はいは一回…』
「!!! ……はい…」
♢
「ふむ、少し待てよ」
俺はTABLETを取り出し、龍脈と地脈の位置を確認する。位置情報はカトリーヌと共有しているのであくまでも最終確認としてだ。俺は慎重に探って行く。ここでの失敗は致命傷になりかねない。
「…………よし……いける…この真下だな。千から千百メートル真下に地脈と龍脈の重合点が有る。ではカトリーヌ、先ずはは十一階層分、百十メートル今度は沈穿させろ。戻りは転移魔方陣で行うからな」
コクリと頷くと、今度は地面に手を翳す。するとーーウネウネと地面が揺らめき始めた。カトリーヌ本体は少し浮いている様にも見えるが、その辺は謎だ。今度聞いてみようかな。セントラルターミナルは円形に形成されていくのだが、後から軽石というかハニカム構造体を嵌め込む事になるのだがそれは最後に行う事になる。
さすがに今度は時間がかかりそうだ。
「……二時間…くらい?」
その後ダンジョンコアの設置する部屋を隣接する場所に造り、それで今日は終了だ。
「よし、ではカトリーヌ、最後の一踏ん張りだ! 頑張ろうぜ」
「……んっ…分かった…」
「エレノアさん、これが今日の最後の工程です。よろしいですか?」
「……はい、取り敢えず順調なんですね? 入り口はどうしますか?」
「カトリーヌにゲートを設置させ、隠蔽して終了ですね。しばらくは閉じたままですからね」
エレノアさんは少し安心した様だ。ふふふ、まだ俺のトラップには気が付いていない様だな




