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短編:詩&エッセイ

「君が好きだった」とは言えない。

作者: 尖角

君のことが好きだった。


ずっと、ずっと好きだった。


初めて君を学校で見かけたとき、


「天使?!」


……そう思ってしまうほど、君に見惚れた。


恋するのにかかる時間なんて、


ほんの1秒も必要なかった。


一目惚れ。 僕がした、最初で最後の経験。


君のことが、ずっと好きだった。


気付いたら、君を目で追う生活。


瞼の裏には君が焼き付き、


瞳の奥は常にハートでいっぱい。


とにかく、とにかく、君のことでいっぱいだった。


でも、卒業式の日。


僕には告白するチャンスがなくって、


いやっ、告白する勇気がなくって、


君を「じゃあね」って見送った。


あの時言えていれば。 何度、そう思ったことか。


枕を涙で濡らし、 君の夢を何度も何度も見た。


この気持ちを過去のモノにすることなんてできない。


現在進行形。 これが僕の愛の形。



何年後かに、クラスの同窓会に誘われた。


きっと、君も来るものだろうと思って、僕も行った。


でも、そこに君の姿はなく、噂というのかを聞いただけ。


「あの子、男に捨てられたらしいよ」


「そのショックから立ち直れなくって、今日来てないんだって」



「でも、あの子 高校のとき、君が好きだったんだよ」


「だからさ、連絡とってあげなよ」「きっと、喜ぶから!」



知らなかった。


君が僕のことを好きだっただなんて。


卒業式の日、「じゃあね」じゃなく、


「好きだよ」「またね」って言えてたら、


君が振られることなんてなかったのかな?


だって、僕が君を振るなんて、絶対にありえないから。


でもね。 「いまさら」なんだよ。


傷ついた君に「好きだった」なんて言えない。


ましてや、「今も」だなんてこと、言えるわけがない。


余計、君が傷つくかもしれない。


君が僕のことを今でも好きとは限らない。


君が振られた男とのショックで立ち直れないというのなら、


君が忘れられないのは、僕ではなくその男。


だから、僕に告白するチャンスなんて、今回もない。



でも、後悔はもうしたくない。



そう思って開く、君への片道切符。


「今度、いつ空いてますか?」


この言葉で君の心が開くかはわからない。


僕の気持ちが伝わるかはわからない。


でも、君がどの相手を思っていようが、


君には笑顔でいて欲しい。




僕はそれだけで十分だから。




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