椿
黒の心で手折った花弁。
紅の水面へ、落ちて、堕ちてゆく。
瞳に映ったあの日から、大切に育んできた私だけの椿。
闇の籠に閉じ込めて、与えた唯一の光。
渇いた身体を潤し、冷えた心を温める。
貴方が求めるものは、私が全て与えてあげる。
だって、私だけの美しい椿。
彩られた時の中、現れた。あの花は何?
私の知らない貴方の過去に。
白に混じった黒と、紅。
透明な雫を流した貴方は、誰のもの?
ねぇ、私だけの憎らしい椿。
灰の心で絶望の闇を知った花弁。
真の闇へ、落ちて、堕ちてゆく。
私を裏切ったあの日から、色を変えた私だけの椿。
闇の籠は深くなり、唯一の光はもう届かない。
渇ききった身体と冷えた心を抱えたまま。
貴方が求めるものは、私が全て奪ってあげる。
だって、私だけの…。
色を失った時の中、思い知った。私の孤独。
如何しても、貴方は手に入らない。
深く、深く、染まりきった黒と、銀。
色を失くした花弁は、私の為に咲くことはなく。
さようなら、私だけの愛しい椿。
黒の心で手折った花弁。
紅の水面へ、落ちて、堕ちてゆく。
黒の心は後悔の雫と共に、紅の水面に混ざり合った。