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浮かれたのは束の間。農政から通知が来た。手入れしろってさ。
大家さんに相談。
「貸してる施設へ言えばいいんですか?」
「そんなこと言ったら、誰も借りてくれない。所有者がやるんだよ。草刈機で一緒にやろう」
「そんなに草、あったかなぁ」
「草はね、他の田んぼに雑草の種が飛ぶから。貸してない方、何植えた?」
「まだ考えてません」
「うーん。そろそろなんかしないと、調べに来るんだよね」
「面接されるんですか?」
「勝手に来て、勝手にチェックしていく。航空写真からもできるし、アプリでも。あそこなら車で通るだけ」
雑草を刈った。畑じゃないところで誰かが休憩したらしく、車を停めた跡とゴミがあった。
大家さんが畑横の側溝を覗く。
「ああ、ここもさらわないと」
「え?」
「泥が溜まってて、他んとこに水が流れない。ここね、道路に近いから粉塵がすごいんだよ」
側溝さらいのオプション付き。
何植えようか、さつまいも、ピーナツと考えてたら、水道代の請求が来た。確かに蛇口があった。けど、地下水のはず。
「ああ、それ、あの地域一体の田んぼや畑の持ち主が広さで割って払ってるやつ。ほら、田んぼって水要るでしょ」
オレが持ってるのは畑なのに。地下水なのに。そーゆーわけにはいかない。〜¥
畑を耕したころ、管理費の請求が来た。〜¥
「それは、ほら、側溝とか壊れたら直すから、そーゆー修繕費とかのお金だよ」
固定資産税は安いはず。坪単価なら。が、何せ3000坪。賃貸暮らしで固定資産税なんて払ってこなかったオレには新鮮。〜¥
賃貸料の収入でなんとかなる程度って。賃貸料、安すぎ。
「賃貸料って値上げできないんですか?」
「山田さん、言いにくくない? 体の不自由な方やお年寄りが使ってくださってるのに。施設側だって借りるとなると大変なんだよ。みなさんを移動させるんだから。しかも、あそこは道路がすぐの危ない場所」
つまり、値上げしてはダメってことか。
「自分の代わりに、農作物育ててくれるってだけでもありがたく思わないと」
「そうですね」
ある日、警察から連絡があった。オレは清廉潔白に生きてきた。運転免許の更新でしか警察とは関わってこなかった。
「畑泥棒が捕まりました。山田さんの畑も被害に遭ってます。署までお越しください」
T_T 仕事、今忙しいのに。
警察へ行ったら、他の国の言葉でまくしたてられた。
「あの、私、日本語と英語しか分からないんですが」
警察官に言うと、通訳が来た。
「自分の国では、柵がない畑は自由にとっていい。柵を作らない方が悪い。あれじゃ分からない」
「そうですか」
「他の畑からは盗難届が出ていますが、どうされますか」
ああ、なんてメンドクサイんだ。
「盗難届。書かなくてもいいなら、書きたくありません」
早く帰りたい。仕事。
オレが盗難届を出さないと知った野菜泥棒は、ちょっと気をよくした。
「知らなかったとはいえ、申し訳なかった。野菜を返すと言っています」
「どこの畑の野菜か分かりませんよね?」
「今日、山田さんの畑で盗んだものです。現行犯だったので。要するに、示談です。山田さんのところの畑が1番被害にあってますが。あそこ、道路に面してるので狙われやすいんですよ」
通訳がやりとりし、オレの前に野菜が積まれた。
「はあ。では、貰っていきます」
「山田さんの野菜ですから」
「ありがとうございました」
うっかり、警察官と共に野菜泥棒にまで頭を下げてしまった。
「いえ、山田さん、お礼を言ってはいけません。山田さんの野菜です」
野菜がごっそり。
職場から来たから、車ないんだけど。仕方なく、タクシー。ああ、金が。〜¥
畑を見に行った。やられたのは、施設の人達が育って収穫するのを楽しみにしていた畑。心、痛い。本当に心臓に痛みが来る。凹んだ。




