表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生特典なし悪役令嬢、辺境でなんとか暮らしてます 神様、便利スキルはいつ届きますか?  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/24

初日、紅茶はありますか?

 初日。

 ここに来てから、まだ夜にもなっていない。

 けれど、まずは書斎に。

 書類の束が机に置いてあった。


「こちらが、屋敷と領地運営に関わる記録です」


(思ったより、紙が多くない!?)


 税や在庫の帳簿。人の出入り。港町とのやりとり。

 ぱっと見ただけでも、情報はバラバラで整理されていない。

 何年も同じ筆跡が続いていたり、白紙で放置されているのもある。

 書類を見ていたら、文化祭の直前三日前を思い出しそうになった。

 あの大変な状況を。


(これ……今まで、誰がどうやって回してたの?)


 答えは簡単だった。


 ”なんとなく”

 ”慣例で”

 ”誰かがその場で何とかして”


 つまりーー


(ちゃんと見てない土地、だったんだ)


 書類をそっと机に戻す。

 ここは王都じゃない。

 誰も私を悪役とも、噂の中心とも呼ばない。


(ここならーーちゃんとやったら、ちゃんと意味があるかもしれない)


 完璧じゃなくていい。

 一度に全部は無理。

 でも、”今日を少しマシにする”くらいなら、きっとできる。

 私は小さく息を吸い、笑った。


「失礼します」


 少しして、この書斎に一人の女性がやってきた。

 メイド服姿の綺麗な女性。

 銀色の髪が似合っている。


「あなたは?」


「わたし、メリッサ様のお手伝いをいたします、侍女のセシリア・メリリャと申します。本日よりよろしくお願いします」


 このタイミングにおいてセシリアは、丁寧な感じで挨拶をしていた。

 初体面だったのもあるからね。


「よろしくお願いするわ。メリッサ・ビュージンゲンよ」


 この屋敷にいるのって、ミカエラだけじゃないんだ。

 それだけでも、ちょっと良いかも。

 多少なりとも話が通じやすそうだから。

 安心出来るのかな。


「ねえ、セシリアはこのマドレーヌ辺境領をどう思っているのかしら?」


 私は彼女に訊いてみることにした。

 彼女ならずっとこの飛び地で生活していたでしょうから、分かるはず。


「変な事をしなければ最悪飢えはしませんが、領地を運営するのであれば地獄です」


「地獄って……どれだけ大変なの?」


 明らかにブラック企業じゃん。

 情報だけれども、セシリアの言葉だけでそこに入社した感じがする。


「税の流れは細く、港の利益は不安定。人手は常に不足。書類は追いつかず、天候に一度負ければ数ヶ月が崩れます」


 そこまではっきり言われるなんて。


「安心なさってください。地獄ですが、慣れます」


 セシリアはそう言うと、にっこりと笑っていた。

 まるで慣れた諦観を含んだ笑顔だった。

 前言撤回、安心できそうにない。


「頑張るわ」


 そうじゃないと私が死ぬ。

 色々な意味で。


「こちらこそ、期待はしておりませんが、どうなるのか見てみたいです」


 期待していないんだ。

 そっちの方がプレッシャーにならないかもしれないけれど。


「セシリア、紅茶はある?」


「ございます。ただし贅沢品です。精神安定用途でない限り、節約を推奨します」


「……精神安定用途って言っていい?」


「はい。認めます」


 ということで、セシリアに紅茶を持ってきてもらう。

 うん、気分をリフレッシュしないと。


「……よし。現実的に、できるところからやりましょうか」


 屋敷の外では風が吹き、丘の草が揺れていた。

 新しい生活は、静かに、現実的に始まっていた。

 たぶん大変。でもーー悪くない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ