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転生特典なし悪役令嬢、辺境でなんとか暮らしてます 神様、便利スキルはいつ届きますか?  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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均し構造の終わり

 財務局長が去った後、執務室は静まり返っていた。

 窓から見える王都市内は昼下がりの景色を描いている。


「本当に止めるのですか?」


 カメリアが訊いた。


「ああ」


 うなづく殿下。

 セシリアが帳簿を見ながらつぶやく。


ならしを止めても、王都の穀物不足は残ります」


 大きなところは解決していないってことね。


「分かっている」


 殿下はちゃんと、理解しているようだった。


「王都は巨大すぎるから」


 このマリーデグリー王国の中心だからね。


「均しが問題だったのは、王国に全部集めるから」


 私はそう言葉に出しながら、王都を眺める。


「中央集中ですね」


 セシリアは呟いた。


「だから、分ければいい」


 私はこの場であるが、新しい制度を考えた。


「どういう感じなんだ」


 殿下が問いかけた。


「地方で備蓄するものは、地方で管理をする。王都で備蓄するものは、王都で管理をする」


 紙に分かりやすく書きながら、説明していく。


「つまり、中央一極から地方分散に」


 人口もそうなればいいけれども、そうはならない。

 国の中心に集まるのは、前世だって同じだったんだから。


「そして収穫量の比例供出も」


 セシリアが補足するように、書き込んでいった。


「固定量ではなく、収穫量に応じた比率を」


 よくあるものかもしれないけれど。


「こちらでしたら、豊作の時には多く出ますし、不作の時には少なくなります」


 簡単に言えばそうなる。


「ですが、豊作の時には今まで以上に取られるのでは?


 そこにぶちあたるよね。

 下手をすれば、争いになりかけないし。


「上限を設けます。それ以上は地方の備蓄にするんです」


 天井があるっていうこと。


余剰よじょうは王都じゃなくて、地方に残すの」


 地方の人々が使えるように。

 不作の時に、それで過ごせるように。


「地方備蓄か」


「そうすれば、凶作でも耐えられます」


 セシリアの言葉には芯があるように感じる。


「均し制度を廃止。そして新制度を作る」


 殿下はそう決定した。


「そんな簡単に」


 カメリアは不安そうな目で、殿下を見ていた。


「簡単ではない」


 目を軽く閉じて、整理させていく。


「地方領主、商会、財務局。全ての調整が必要だ」


 殿下や王宮の仕事になる。

 それは分かった。


「大仕事ね」


 私は苦笑いをする。


「だが」


 殿下は私を見てきた。


「証明はできた」


「何を?」


 一瞬分からなかった。


「均しを止めた瞬間」


 そして軽く息を吸っていた。


「君が正しかった」


「本当に」


「歴史が証明しました」


 殿下やカメリア、そしてセシリアが私を褒めた。

 何故か嬉しく思ってしまう。


「さて、メリッサ・ビュージンゲン」


 真剣な目をしながら、私を見つめていた。


「君をマドレーヌ辺境領に追放したのだが、王都に戻らないか」


 途端に執務室が静まり返った。

 その提案は、破滅が終わったように感じた。


「…………」


 でも私は考えたまま、少し時間が流れる。


「私は」


 やがて結論が出てきた。


「領主よ」


 殿下に微笑ほほえむ。


「マドレーヌ辺境領の」


 私の返答を聞いた途端、殿下は少し笑った。



「そうか、マドレーヌ辺境領か」


 思い出すように、呟く。


「あそこはもう、辺境じゃない」


 一拍置いた。


「王国の未来だ」


「ええ」


 私は頷く。


「だから私は」


 優しく微笑みながら。


「あそこに戻るの」


 窓の外。

 王都は橙色が見えてきて、夕方になろうとしていた。

 殿下は窓を見ながら口を開く。



「さて、これから制度を作り直す」


 穏やかな口調をしながら。


「地方備蓄を基本として、王都は交易で支える」


 さらに言葉を続けた。


「もう地方を吸い上げる王都にはしない」


「ええ、それがいいと思う」


 私は微笑んだまま、返事をしたのだった。


「地方が倒れたら、王都も倒れるから」

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