王宮備蓄の理由
「余剰はどこに行くの?」
私は殿下に問いかけた。
「王都の備蓄になる」
その言葉に、頷く私。
「ええ。そして最後は王宮へ」
軽くため息を吐く。
「昔は余剰だった」
私は穀物袋を見ながら呟いた。
「均しは余りを王都へ集める制度だった」
言葉を続けていく。
「地方の余剰を吸い上げて、王都に安全な備蓄を作る」
穀物袋を軽く叩いた。
「でも今は違う」
「余剰がない、と」
カメリアの言葉に私は頷いた。
「だから王都の穀物を吸っている」
セシリアが帳簿をもう一度見ていた。
何回も間違っていないか、見直して。
「おかしいです」
その上で、彼女は大きな疑問を投げかけた。
「何だ」
「王都備蓄の増加ですが、命令が半年で急増しています」
「半年……」
「はい、半年前までは月に三百袋ほどでした。ですが今は二千袋以上です」
かなり増えている。
七倍近くに。
「王都倉庫から移された量と一致します」
それと同時に、私達は同じタイミングで気がついた。
さらに殿下がゆっくりと言った。
「財務局が動いた時期だ」
さらに殿下は続ける。
「王都の穀物価格が上がり始めた時期でもある」
低く言った。
「財務局は危機を察知したのだろう」
「ただ、私が均しを止めたのは、もっと最近だけれど」
秋の初めくらいだったっけ。
再びセシリアが帳簿を見直す。
「つまり」
殿下の声が低くなる。
「問題は、それより前から始まっている」
そして殿下は兵士の方を見た。
「誰が命令した」
「財務局長です」
殿下の問いかけに対して、兵士は声の震えもなく答えた。
「やはり」
「王都防衛備蓄か」
「飢饉対策でしょう」
殿下やセシリアがそれぞれ予測していく。
「違う」
それに対して、私は否定した。
きょとんとしながら、疑問に思っている様子。
「王都を守ろうとした。だから地方の制度をそのまま動かした」
「命令は”王都防衛備蓄強化”でした」
兵士が補足した。
「半年ほど前から、搬入量が急に増えました」
「つまり」
殿下は私の目を見る。
「制度が暴走した」
「王都を守るためだったのね。余剰が来なくなったから、直接集めたと」
私はため息をつきながら、苦笑いをする。
「均しは止めるべき制度だった」
マドレーヌ辺境領において行ったことを思い出す。
「でも、こうなるとは思っていなかった」
殿下は穀物袋の山を見上げた。
「王都を守るため、か」
そして表情が変わる。
「だが、王都の民を飢えさせては意味が無い」
殿下は兵士に命じた。
「財務局を呼べ!」
「は!」
「王宮備蓄を止める!」
殿下の命令は、迅速だった。




