王都圏外縁関所
田園地帯を縫うように造られた街道を馬車は進んでいって、昼過ぎくらいに次の関所へ。
王都圏外縁関所では、馬車や荷車、牛車などが並んで、穀物輸送隊が列をなしていた。
「大きいですね」
関所の側に馬車を停めて、降りたカメリアがそう感想を口にしていた。
「王都へ入る物流の集約点ですから」
セシリアはカメリアにそう説明する。
「つまり……」
「ここを通らないと王都には入れません」
そっか。
ここに着く直前で、道が合流していた。
別の場所からもやってくる訳ね。
「だからここを調べる」
殿下の言葉で、私達は関所の中へと歩いていく。
列をなしていた商人や御者が、何事かと私達を見ていた。
「王太子ライオネルだ」
「で、殿下!?」
最初は警戒していたものの、側に停めていた馬車の紋章から、焦っていた。
やがて関所の中から兵士が出てきて、整列していった。
「どうしてここに、王太子殿下が!?」
関所の長も一緒に出てきて、驚いていた。
そして畏まった様子になっている。
「穀物輸送の記録を見せろ」
殿下は第一関所の時と同じように、関所の長へ命じていた。
「すぐに用意します!」
彼は兵士に指示を出して、持ってこさせた。
周囲にいた商人達はざわついた。
「王家の調査らしいぞ」
「何かあったのか?」
それぞれひそひそと話す声が聞こえてくる。
辺りには緊張感が漂ってきていた。
「拝見します」
ページをめくって、内容を確認していく。
「どうですか?」
「…………」
セシリアは見続けているからか、無言のまま。
少しだけ沈黙が流れていく。
「減っているのか?」
「いえ」
殿下が問いかけると、セシリアはそう否定の返事をした。
「ここも?」
「数字は一致しています」
色々な人の話からここが怪しいって思っていたのに。
空振りなのね。
「第一関所と同じか」
沈黙が再び流れる。
でもセシリアの手が止まった。
「……妙ですね」
そしてそう呟いた。
「何だ」
「穀物の通過量が」
殿下が問いかけると、セシリアは少しの間を出しながら話し続けていく。
「ここ半年で増えています」
「増えてる?」
減っていると思っていたのに、増えているって。
どういうことなの?
「でも王都では不足しています」
両手を合わせながら、カメリアはきょとんとしていた。
「つまり」
間が出来た。
「ここを通る穀物は減っていない」
「むしろ増えています」
沈黙が流れていった。
「どういうこと?」
逆な事が起きている。
信じられなかった。
「倉庫を見せろ」
殿下は関所の長に指示を。
「はい!」
従って、関所に併設されている倉庫へ。
中には大量の袋が置いてあった。
「すごい量ですね」
「ここで、一時保管されています」
カメリアが目を丸くしていた。
それを関所の長は説明していく。
「あれ?」
私は中にある袋を見ていくと、とあるものに気がついた。
「袋の印が違う」
「本当ですね」
穀物の袋には、農村印、商人印、王都印、それぞれ混ざっていた。
統一されていない。
どうしてなのかしら。
「積み替えをしているのか」
「はい、輸送効率のために」
関所の長がこれを補足した。
「…………」
セシリアは何か考えている様子。
「これです」
少しして、何か判明したようだった。
「えっ?」
全員が目を丸くして、セシリアを見る。
「袋が入れ替わる。つまり、穀物量は合う」
判明した内容を私達に話していく。
「ですが、行き先を変えることが出来ます」
行き先が変わったら、王都に入る量が減ることになる。
「横流し?」
そう思ってしまう。
「しかし、帳簿は合う」
「だから発覚しない」
セシリアはそう考えた。
関所を通過した後に変えるのだから、帳簿は合う。
その後に別の行き先にしたって分からない。
「でもそれなら」
少し息を吐く。
「王都に入る量は変わらないですよね」
カメリアがそんな疑問を提示する。
ここで違ったとしても、王都前関所で変わらなかったら、途中で減っていないはず。
「そうだ。ここではない」
殿下が肯定する。
「ここは、ただの通過点だ」
そして関所にある地図を見ていった。
指を王都の直前にある関所へ。
「最後だ。王都前関所」
とん、と指した。
「王都の入口ですね」
ここを通過すれば、最後は王都市内。
「そこで消えているの?」
「……あるいは」
殿下は軽く息を吸った。
「王都の中だ」
言葉を続けていく。
「穀物は消えていない」
一拍。
「王都が、食っている」
*
関所の屋根。
そこに誰も見られることのない人物が座っていた。
「近づいたわね」
マドレーヌはパンをかじりながら微笑んでいる。
「音の鳴る場所」
王都を見ていた。
「そこよ」




