本国へ
翌朝、屋敷の前には二台の馬車が停まっていた。
両方とも本国へ向けて、準備が整っている。
「本国へ行くのは、久しぶりですわね」
二度と戻れないものだと思っていた。
それが、こんな事で一旦戻れるなんて。
「王都へは行かないんですよね?」
カメリアがそう言っていたけれど、王都へは行けないみたいね。
調査をする訳だから、仕方ないかもしれないけれど。
なりゆきで行ける可能性はあるかもしれない。
「まず関所だ」
殿下がそう宣言する。
ちなみに殿下もカメリアも、昨夜は屋敷の客間で休んでいる。
「三つのうち、一番遠い第一関所から確認するのですね」
「順番に潰していく」
殿下がそう目標を示していた。
「消えるなら、どこかで消えている」
それぞれ馬車に乗り込んで、本国へと出発した。
殿下とカメリアは王家の馬車に。
私達は屋敷の馬車で、マドレーヌ辺境領を出ていく。
農村を通り抜けて、レグニン王国との国境へ。
私は御者経由で、殿下に作ってもらった書類を渡して通っていく。
これが無いと、マドレーヌ辺境領を出られないから。
簡単に中を見ただけで、検問は通過した。
まだ午前中であるけれど、一度マリーデグリー王国を出た。
「メリッサ様は本国へ行けますけれど、どう思っているのでしょうか?」
馬車に乗っている途中、セシリアが問いかけてきた。
「そうね。また戻ることになるけれど、里帰りしたみたいね」
微笑みながら返事をする。
「変わった感じですね」
馬車はレグニン王国の穀倉地帯を通り過ぎていく。
ほとんど何も無いけれども、ここは他国。
雰囲気が何となく違っている。
「またマリーデグリー王国ですね」
夕方近くになったタイミング、馬車はマリーデグリー王国にまた入国した。
書類を渡して、簡単に見られた後に馬車は本国へ。
夕方になってとある農村を見てみるけれど、収穫後の畑が目に入っていく。
今日の農作業が終わって、穏やかな感じがしている。
「ここで今日は休みにするのね」
農村にある、とある宿屋。
夜になったから、そこに私達は泊まることにした。
「平和ですね」
宿屋の食堂へ行って、夕食を。
スープを飲みながら、夕方の農村を思い出すカメリア。
「ええ」
窓から見えていた景色からは、均しで大変になっているようには見えない。
毎日が普通に動いているような。
「だからおかしいのです」
セシリアはパンを一口食べて少しの間目を閉じた後、口を開いた。
「穀物が消えているなら、農村が崩れます」
「でもその様子はない」
殿下が呟いた。
農村は崩れていない。
このテーブルの周りだけが、沈黙に包まれる。
他はわいわいと騒いでいるけれど。
「つまり、穀物は存在している」
そういうことなのね。
「でも王都には無い」
カメリアは人差し指を顎に当てた。
「だから調べるんです」
そしてセシリアは息を軽く吐いた。
宿屋の食堂では、奇妙な会食となっていた。
王太子にヒロイン、そして悪役令嬢とメイド。
ゲームのスチルだって、こんなのは無かったよね。
だからこそ、ゲームのその先。
明日、最初の謎を探るために私達は話し合っていた。




