殿下の視察12
窓を見てみるけれども、マドレーヌはもういなかった。
「王都が騒がしい?」
私はマドレーヌが言っていたことを繰り返していた。
「何か言ったか?」
殿下が聞き返した。
「いえ……」
流石に女神のことは言えないよね。
殿下は再び地図を見ていった。
「王都へ入る穀物は、三つの関所を通る」
指で地方から王都へ向かって順番に指していた。
・第一関所(地方境界)
・王都圏外縁関所
・王都前関所
「ここを通過しなければ王都へ入れない」
それをすり抜けて通り抜けるのは、不可能って訳ね。
「つまり、このどこかで減っている可能性があります」
減っているなら、そのどれかで記録に残っているって訳ね。
「三つとも調べるのですか?」
カメリアが訊いている。
「当然だ」
腕を組みながら、目を閉じて返事をしていた。
「ただ、一つ問題があります」
セシリアが帳簿を閉じて、疑問を投げかけた。
「何だ?」
「関所記録は地方保管です」
ここには無いってことか。
当然と言えばそうだけれども。
「つまり?」
「各関所の許可が必要になります」
それぞれに訊かないといけないって事か。
面倒くさいけれども、やらないといけないよね。
「……隠す時間を与えるな」
殿下は軽く息を吸って、低く呟いた。
私達の目的を知ったら、隠蔽されるってことね。
「明日出る」
そう宣言する殿下。
「もう!?」
私はそう素っ頓狂な声を出してしまった。
「ああ」
久しぶりにこのマドレーヌ辺境領を出るのね。
ちょっとだけ楽しみだけれども、調べないといけないのね。
「もし本当に穀物が消えているのなら」
カメリアが窓の外を見て、考えを述べていく。
「何だ?」
「王都はもう気づいているかもしれません」
彼女の発言に、彼女の目を見ている殿下。
「え?」
「備蓄が減っているんですよね」
私の呆けた声に対して、はっきりとした声を出すカメリア。
「はい」
セシリアが軽く頷く。
「なら……」
カメリアは少し迷いながら言っていた。
「もう誰かが動いている可能性があります。王都側で」
書斎が静かになっていた。
「だからこそ急ぐ」
殿下がゆっくりと立ち上がった。
「穀物が消える場所を見つける。王都へ入る前にな」
そして殿下も窓を眺めていた。
「分かりましたわ」
私は頷いて、受け入れる。
「輸送路を見ましょう。どこで流れが止まっているのか」
という事で、しばらくぶりに本国へ行くことになったのだった。
夕方。
外でマドレーヌがパンを食べていた。
「やっと動くのね」
食べたまま笑っていた。
「人間の流れって面白いわ」
少しだけ間が流れる。
食べる音だけが聞こえる。
「さて……どこで音がなるかしら」




