殿下の視察9
セシリアの話だと、王都が不足するのではなく、農村が不足することになる。
それなのに、本国の農村は均しの吸い上げは、何とかなっている。
カメリアの言葉は、均しだけの問題ではないことを示唆しているようなもの。
屋敷は疑問に思っている状態で、何を言おうか迷っている。
「続けてくれ」
それを殿下が口を開いて、カメリアに続きを促した。
「はい。不足しているのであれば、地方から先に崩れるはずです」
カメリアは窓の外で景色を見ながら、述べていった。
「確かにそうですね」
セシリアが頷く。
「そうだな。だが報告は来ていないし、崩れてはいない」
この本国では、矛盾が起きている。
穀物が王都に届かないけれども、農村は平穏。
「でしたらそれこそ、別の問題が起きているのでは?」
私はそう考えた。
「例えば?」
目を閉じて、少し考えた後に殿下は訊いてきた。
「均しが原因なら、地方から崩れますわよね?」
「はい。食べ物は”遠いところ”から消えますから」
カメリアが答えた。
こんなにすらすらと言えるなんて。
泣き虫だったカメリアとは思えない。
「輸送距離が長いほど、供給は不安定になります」
セシリアは帳簿をめくって、視線を帳簿に向けたまま話していく。
「ですが本国農村は安定しています」
息を吐いて、殿下をはっきりと見た。
「つまりーー」
間が流れていく。
「穀物は存在している」
殿下が言い放った言葉、それははっきりと乖離を示していた。
「存在しているのに、王都へ届かない?」
均しならば、ちゃんと届いているはず。
それなのにどうして?
「もしかして、途中で止まっているのでしょうか?」
カメリアが疑問に思いながら、話している。
「いえ、港では減っていないですよ」
再び帳簿を見たセシリアが呟いた。
「内陸輸送だ。本国は内陸国だ」
「そうでしたね」
港町があるマドレーヌ辺境領が変わっているだけで、マリーデグリー王国は内陸国。 陸上での輸送になる。
「王都へ向かうのは、河川輸送と陸路の小隊です」
書斎にあった地図を広げて、王国を見てみる。
異世界だから、一致しているような地図はないけれど。
指さしたのは王都に通じる道と、河川。
「港は関係ありません」
はっきりとセシリアは言い放った。
「ああ」
冷や汗をかきながら殿下は呟く。
「おかしいですね」
セシリアは、にらみつけるような表情をしながら、地図と帳簿を見合っていた。
「また?」
「地方出荷量は減っていません」
やっぱり、農村は異変が起きていないのね。
「だが、王都の備蓄は減っている」
殿下の持っている帳簿も見ながら、確認し合っていた。
「消えてる?」
カメリアは小声で言葉を。
そして書斎には沈黙が流れていく。
誰も否定していなかった。




