殿下の視察6
馬車に乗り込んで、港町へ向かう。
一応、農村での視察は終わったみたい。
殿下やカメリアが何を話しているのか分からないけれども、マドレーヌ辺境領の事を色々と言い合っているんだろうね。
同乗している書記官達と一緒に何かと確認しているのかも。
「アイゼンポールでの評価って、何とかなったのかしらね」
私もセシリアと一緒に、馬車に乗り込んでいた。
彼女にさっきの事を呟きながら、セシリアを見つめていた。
「否定されていませんね」
「ええ、そうよね」
軽く頷いて、セシリアの発言に同意する。
「ですが肯定もされていません」
「そうね」
どっちともいえない。
それが殿下の視察において、言われたことだった。
「難しい状況かもしれないわ」
「はい」
港町での視察で評価が変わるかもしれない。
だから、気を抜けない。
それぞれの馬車だから、向こうの馬車の中で何を言っているのか分からないっていうのももどかしい。
同乗なんて出来ないから。
「さて、これから港町の視察ね」
馬車は港町に着いた。
庁舎近くの通りに停車して、ここから視察をしていく。
降り立った瞬間に、いつもの活気を受け取った。
「我が王国って、ここ以外に港町が無いから新鮮だ」
殿下が馬車から降りてきたとき、そんな一言を口にしていた。
「ですわね。私も新鮮味を感じましたわ」
微笑みながら早速、港町の庁舎へ。
中に入ると、町長のハンスと書記のラルフが出迎えていた。
「ようこそ殿下!」
「王都と違って何もないですが、ごゆっくりと」
二人は視察が来るのを知っているから、こうしてすぐに出迎えが出来ている。
「早速だが、港湾管理の帳簿を準備してもらおうか」
「え?」
いきなりそう言ってきた。
どうしてそれをいきなり?
「ある程度視察してから、再び見たい。それまでにお願いしたい」
「は、はい!」
二人は棚から書類を探すために、奥へと戻っていった。
その間、殿下達は庁舎を出ていって、港町を視察していく。
私も一緒に港町を歩いていく。
農村とは違い、何人もの人々とすれ違っていた。
「船もしっかりと出入りしているな」
「もちろんですわ、港町ですもの」
流石に当たり前よね。
港を見ていって、船や荷物を見ていく。
「市場、こんなに露店があるのか?」
「ええ」
いつの間にか、露店がいくつか増えているようだった。
まあ、ここって、増えたり減ったりするけれど。
「皆、余裕がありますね」
見回したカメリアが感想を。
「急いでいませんし」
農村と同じ事を言っているのかな。
「そうですのね」
私自身が逆に気がつかなかった。
「あれは、何だ?」
すると先日訪れたパン屋の前を通りかかった。先日のように、パン屋は行列が出来ていて、繁盛しているみたいだった。
「パン屋ですわ。新しいパンが売れているみたいですの」
「新しいパン、ですか」
カメリアはきょとんとしているけれど、興味はあるようだった。
「海藻と小魚の潮風パン、というらしいですわ」
「ほう、港町ならではだな」
殿下も笑みを見せている。
「お食べに?」
「ああ」
「では買ってきます」
セシリアが行列に並んで、買っていくことにしていた。
その間、殿下達は視察を続けていった。
「メリッサさん、こんにちは」
リュシアが話しかけてきた。
荷物を持っていて、仕事中みたいね。
「ごきげんよう」
「どうしたのですか?」
いつもと違う感じだから、リュシアはきょとんとしている。
状況的にこのままだとマズいから、耳打ちしながら話すことに。
「実は王太子殿下が視察に来ているの。ちょっとだけ芝居しているから、気にしないでね」
「殿下が!? わ、分かりました」
リュシアは驚いていたけれども、受け入れていた。
「どうしたんだ?」
この状況に殿下はきょとんとしている。
「いえ、知り合いだったので粗相がないよう、言い聞かせていましたの」
「そうだったのか」
気にしていないようで安心した。
「殿下、ようこそタレスブールに」
「ああ。君こそ頑張っているのだな」
「光栄です! では僕はこれで」
そしてリュシアは、去っていった。
良かった。
「お待たせしました」
すると、セシリアはパンを持ってきた。
無事に買えたみたいね。
「ありがとう」
「感謝します」
二人はパンを食べていった。
美味しそうにしていて、口に合ったみたいね。
「海の幸を使っているのに、パンに合っているな」
「邪魔していませんね」
感想を簡単に言っていた。
「セシリア、ありがとうね」
再び耳打ちしながら、感謝を伝える。
「いえ、大丈夫ですから」
微笑みながら、セシリアは返事をしていた。
「さてこれで十分だろう。戻って帳簿を見たい」
「分かりましたわ」
私達は庁舎へと戻っていった。
そして町長達が用意した帳簿を見ていくことに。
じっくりと見ていって、興味深そうな目をしていた。
「王都向けの輸送は?」
目を通した後、殿下は質問してきた。
「減っています」
ラルフはそう答える。
「余剰穀物の搬入量は? 去年との差は?」
「同様に減っています」
続けての質問に対しても、ラルフは同じような回答していった。
同じような回答になる質問なのね。
「やはりか」
そして殿下はそう言葉を発した。
「……何がですの?」
少し戸惑いながら、私は問いかける。
「私は成功例を見に来たのではない」
少し間が空いて、殿下は言葉を続けた。
「余剰が消えた理由を確かめに来た」




