殿下の視察1
(ああ、胃が痛い……)
次の日。
まだライオネル王太子はやってきていないけれども、書斎にいた私は、不安で押しつぶされそうだった。
一度だけじゃなくて、二度も殿下から糾弾されるかもしれないから。
ゲームのように婚約破棄されているのに、その後で同じようにされるなんて。
正直逃げたい。
でも、逃げるわけにはいかない。
(なるようになる、しかないのかしらね)
深く呼吸をして、殿下が来るのを待っていった。
「到着しました」
そして、ミカエラの声で立ち上がって、セシリアと共に屋敷を出る。
昼前くらいに、馬車が屋敷の前に到着した。
馬車は王家の紋章が入っているが、豪華すぎないデザインをしている。
「ほう、ここが辺境領の屋敷か」
降り立った殿下はそう第一声を放った。
少々つまらなさそうに。
「立派な建物ですね!」
感動しているかのように、殿下の次に降りてきた婚約者のカメリア・テンブロンはそう言葉を。
私は二人を見ながら、挨拶をする。
「遠路はるばる、ご苦労様ですわ。辺境は退屈ではなくて?」
最近はこんな喋り方をしていないけれども、私は殿下に見せつけたかった。
素の私を見せるのが、少し怖かったから。
それに悪役令嬢として見せることで、”嫌われ役”として主導権を握りたかったのもあるけれど。
「メリッサ様?」
セシリアがきょとんとしながら、私のことを見ている。
いつもと違うからね。
でも、通すしかない。
婚約破棄のような
「ほう、変わらないな。君も」
苦笑いをしながら、私を見る殿下。
何とか主導権は握れたかな。
「楽しみにしていました」
にっこりと、私を見つめていた。
泣き虫のカメリアが嬉しそうにしているなんてね。
「どうしますの? お茶でも飲んでからにしましょうか?」
「ああ、長旅で疲れたからな」
殿下は軽く頷いて、屋敷の中へ。
「セシリア、紅茶を用意しなさいな」
私は彼女に命じる。
ただ、いつもだったら先んじて用意しているけれどね。
「分かりました」
という事で、最初は応接室へ。
殿下とカメリアは近くに座って、愛し合っているのを感じさせた。
イチャイチャしすぎてない?
「お似合いですわね」
少ししたらセシリアが紅茶を持ってくる。
「良い香りがする」
「落ち着きます」
二人は香りを感じながら、飲んでいった。
「精神安定用よ」
「そのようだな」
私が説明すると、感情を出さずに殿下は返答した。
それに対して、カメリアはにっこりとしている。
「美味しいですね」
彼女って天然だからね。
だからこそ、ヒロインなのかしら。
「ねえ、あなた達の動向はどうなっているのかしら?」
私は単純に気になったのもあって、訊いてみることにした。
「知らないのか?」
「ええ。ここではそこまであなた達の情報を知らないのよ」
直球的に理由を伝える。
「そうだな。私はカメリア嬢と愛し合っているし、メリッサ嬢がいたときよりも、王都は動いている」
殿下は軽く笑いながら、話していった。
動いているのね、そっちは。
「あら、それは良いわね」
「さて君の領地も、動いているんだろうな」
殿下の問いかけに対して、私は動じなかった。
まあ、それくらいは大丈夫だから。
「そうね。これから見ればいいのよ」
「分かった」
飲み終わって、私達は立ち上がって屋敷の外へと向かう。
ああ、これからバレていくのかしらね。
だからこそ、悪役令嬢として振る舞いましょう。




