王都からの書簡4
準備となると、どうしようかな。
三日しかないし。
殿下とヒロインにワインを飲ませまくって、ベロベロに酔わせて判断力を奪おうかしら。
いや、確実に反逆罪で捕まりそうね。
真面目に考えないと。
「とりあえず、見せられるところを整理しましょう」
殿下達が見ていくであろうコースを。
「そこを私が上手く説明して……」
考えつくのは、そんな感じ。
殿下を怒らせないように帰ってもらわないと。
「問題があります」
セシリアが口を挟んだ。
「は?」
思わず、声が出てしまう。
どうして何とかしようとしているのに、そんな事を。
「その前に、メリッサ様は殿下にどうお見せしたのでしょうか?」
「勿論、問題が起きていないマドレーヌ辺境領よ」
セシリアの問いかけに対して、そう答える。
だって、現状を見せたら色々とややこしくなるから。
「ですが取り繕ったとしても、どこかで綻びは出ます」
「そうだけれども」
農村の人達に均しは続いているって言わせるようにしたって、どこかでバレる可能性がある。
それに、それが後々面倒なことになるかもしれない。
「難しいのね」
「はい。とりあえず、現状を確認しましょう」
セシリアがそう提案する。
「農村は?」
「均しは終わっている」
「港は?」
「余剰がありません」
「帳簿は?」
「前提が変わっています」
彼女の質問に対して、私は淡々と答えていく。
完全に殿下が見ようとしているものとは、正反対の状況。
『昔の成功モデル』はどこへやら。
「詰んでいるわね」
「はい、間違いなく」
殿下からどんな事を言われるのかな。
胃が痛くなりそう。
「メリッサ様……」
一息吐いてから、セシリアがゆっくりと言葉を出していく。
「これは視察ではありません、確認です」
はっきりと言った、確認の言葉。
一瞬、私は彼女の言葉が分からなかった。
「何の?」
思わず聞き返してしまった。
「成功が続いているかどうかの」
だから確認ね。
でも。
「……続いていないんだけど」
だからこんなに悩んでいるし。
沈黙が流れた。
「また」
窓の外で、マドレーヌがパンを食べていた。
さっき去っていったのに、いつの間にか戻ってきている。
だから何をしに、こんな屋敷の側で食べるのかしら。
「マドレーヌさん、見ているだけなら何か手伝いなさいよ!」
この飛び地に関わる事が起きているんだから。
サボっている様子を見せつけるだったらね。
「一回くらい、楽させてよ!」
女神なんだから、それくらいやってほしい。
「メリッサ様、空中に向かって命令しておられますが」
セシリアが私の様子を疑問に思って、問いかけてきた。
えっ、今のマドレーヌって見えていないんだ。
「ううん、ちょっとムカついたから」
何もない場所に吐き出した感じに伝えてみた。
「はぁ……」
苦笑いしながら、軽く言葉を出した。
「…………」
すると風が一度、窓のカーテンを揺らした。
「しているじゃない」
するとマドレーヌはパンを差し出した。
港町で売っているパンを。
「はい?」
「空腹で判断すると、だいたい失敗するの」
はっきりと、パンは感触がある。
マドレーヌは私を見て微笑んでいる。
「それに私はあなたが逃げてないの、ちゃんと見てるから」
ただそれを言って、去っていった。




