王都からの書簡2
「大丈夫でしょうか?」
私がため息をついたのを見て、セシリアが心配そうな表情をしていた。
表情で気づいたのね。
「まあ、大丈夫よ」
苦笑いしながら、返答する。
「……本当、最悪」
私は心の中で思った愚痴を吐いた。
何でここで乙女ゲームの攻略対象とヒロインが出てくるのよ。
悪役令嬢の私をバカにしようとして来たのかしら。
ただ、ライオネル殿下は王太子だから、視察っていうのもおかしくない。
カメリアが一緒っていうのが、気に入らないけれど。
「大丈夫じゃなさそうですが」
気づくよね。
するとセシリアは書斎を出ていった。
どうしたんだろう。
「パンより重いわね」
何とか心を落ち着けようとする。
けれどもモヤモヤしていた。
少ししたら、セシリアが書斎に戻ってきて紅茶の入ったカップを置いた。
「……ありがとう」
紅茶は、精神安定用だからね。
ゆっくりと、紅茶を飲んでいく。
温かくて、より落ち着いてきた。
「見てよろしいでしょうか?」
セシリアは書簡を手に取った。
「ええ」
そしてじっくりと、見ていった。
「正式な王族の視察ですね」
「分かっているわ」
「拒否不可です」
セリシアの補足は当然だけれども、のしかかってくる。
拒絶するなんてできない。飛び地とはいえ、マリーデグリー王国なんだから。
「殿下達は知らないでしょうね。均しをやめたのを」
「まあ、報告していませんでしたし」
そうなったら、殿下から叱責されるのだろうか。
勝手にシステムを変えて、報告しなかったって。
ただでさえ、婚約破棄の際に色々突きつけられていたのに。
ゲームの先でも言われちゃうのかしらね。
「……王都は、均しが続いている前提で予定を組んでいますね」
そうセシリアは推測した。
「普通に来るだけだよね?」
均しの事じゃなかったら、ただマドレーヌ辺境領を見るだけだよね。
適当に農村や港町を見るだけだよね。
「あと、断罪とかないわよね?」
重箱の隅をつつくような感じに、問題を指摘される。
そしてそのまま拘束されて、王都で裁判にかけられる。
王都に戻れるけれども、あの世の経由地にならないよね。
私は事情なんて知らない、セシリアに何度も問いかけた。
「視察ですので」
彼女はその返事をするだけ。
そう言葉にしながらも、セシリアは書簡の端をもう一度見直した。
ーー珍しく、確認するように。
「何でこのタイミングなのかしらね……」
農村で均しをやめて、港の物流が変化した。
新しいパンが人気になったけれど、港町は猫が増えた。
「タイミング悪すぎない!?」
私は書簡に向かって突っ込んだ。
「メリッサ様……」
すると、セシリアは落ち着いた感じで私に説明していく。
「王都は”成功例”を見に来るつもりかもしれません」
「成功例……」
均しで上手くいっているという。
それか、マドレーヌ辺境領で崩壊が起こっていないっていう状況を見ようとしているのかしら。
「でも、変えようとしているんだけど」
だから現状を、殿下達は受け入れてくれるのかしら。
分からないわね。
「はぁ……」
私は書簡を見るのをやめて、窓を見てみた。
港町はいつもの日常が流れていた。
「……パン、食べに行った翌日にこれ?」
落差が激しいんじゃないの?
昨日も昨日で、マドレーヌが屋敷にやってきたけれど。
「はい、視察ですので」
セシリアは平然と言葉にした。
「絶対、面倒になるわ」
(でも、ただの視察じゃない気がする)
苦笑しながら、景色をしばらく見ていたのだった。
「誰も間違っていないから、難しいの」
どこかで女神が呟いた。




