王都からの書簡1
「おはようございます」
翌朝、朝食を終えた後に、セシリアが書斎へ麦湯を持ってきた。
机の上には書簡が置いたまま。
「セシリア、おはよう」
にっこりとしながら、私は彼女へ挨拶を行う。
「お疲れの程は、大丈夫でしょうか?」
「何とかね」
いつものように返事を行う。
そして、書簡の方を見つめる。
「開けなきゃね」
私は机の上に置いた書簡に手を伸ばした。
封を開けて、中身を見ていく。
「どれどれ? 辺境領の物流状況かぁ」
内容は、特段変なものじゃなかった。
このマドレーヌ辺境領における、領内外を行き来する物資の確認だった。
「普通ね?」
思わずそう呟いてしまうくらいに。
「はい。普通の監査です」
セシリアもそう返事する。
だよね。
王家の紋章がついた封蝋があるから、気にしちゃった。
さらに内容を確認していった。
「あれ?」
書類を見てみると、何かへんてこに感じた。
どうしてだろうって、思ったら……。
「何でこの担当者なのよ」
「メリッサ様、どういうことでしょうか?」
「担当者が変わっていないの」
よく見てみると、書類の作成者が古い。
書類の日付は輸送を考えたとしたら、おかしくないのに。
「本当ですね」
財務局のゴメスって。
彼は私がライオネル殿下と婚約破棄される前に、別部署へ異動になっている。
悪役令嬢としての記憶だけのタイミングだったけれど。
どうして、彼の名前を使っているのかしら。
「分からないわ」
「どうして、なんでしょうね?」
私も首を傾げてしまう。
でも、分からない。
「あっ」
書類をさらに見てみた。
『余剰均し制度の継続状況について、報告されたし』
これ、私が農村の均しをやめたのを、知らないってことか。
確かにセシリアが帳簿には書いていたけれど、それを送っている訳じゃないから。
「伝わっていないのは当たり前だけど」
定期報告には書いていない。
王都がそれを知っているなんて、ありえないと思っていたから。
まあ、ずっとずっと継続しているから把握している可能性はあるよね。
「そうですよね、情報は伝わっていませんし」
セシリアも認めているわね。
私もだけど。
『貴領の余剰均し制度は、王国モデルとして高く評価されている』
そう評価しているのね。
面倒くさいわ。
(誰も間違っていないから、難しいの)
女神の声が聞こえるようだった。
「どう報告しようか」
知っているんだったら、報告しないと。
「素直に報告するしかないよね」
「……なるほど、そうですね」
セシリアは書簡をもう一度読み返した。
ほんのわずか、彼女の眉が寄った。
私は書類を作成していく。
だって、もうやめているのに何も言わないのはおかしいから。
「まあ、仕方ないわ」
出来上がると、定期報告の中に入れる。
「さて書簡の方はこれで……」
中にはもう一枚あった。
開けたけれど、こっちには気づかなかった。
「危ない危ない」
中身を見ていく。
「こっちは余計重要じゃない……」
思わず、私はため息をついたのだった。
「部屋を片付けないと」
『ライオネル殿下と婚約者カメリア・テンブロン嬢。近日マドレーヌ辺境領を視察』




