マドレーヌが見ていた書類
「メリッサ様、マドレーヌ様をお見送りしてきました」
「ありがとう」
マドレーヌが帰った後、セシリアが書斎に戻ってきた。
玄関まで見送ったのかしらね。
「……帰ったわね」
「はい」
少し間が流れていく。
静寂ってほどじゃないけれども、落ち着いた雰囲気になっていた。
「普通に帰ったのよね」
失踪するように帰ったわけじゃないのね。
「ええ、普通に」
セシリアの話を聞くからに、玄関から見えなくなるまで、歩いて帰ったみたいね。
「いつも通りね」
「はい、いつも通りです」
見送った後にセシリアが持ってきてくれた麦湯を飲みながら、心を落ち着いていく。
「……嵐が通り過ぎた感じね」
ちょっとマドレーヌが色々していたから。
「穏やかな嵐でしたね」
セシリアが感想を述べていく。
「穏やかな風って何」
ただ、答えなかった。
「にしても、何を見ていたのかしら」
さっきマドレーヌは書類を見ていたっけ。
逆方向からだったらか、どんな書類を見ていなかったけれど。
大体の位置なら分かる。
「崩したら、直してくださいね」
「分かっているわ」
セシリアにそう言われながら、探していく。
「これかしら」
私は見当をつけた書類を取り出して見てみることにする。
二枚ほど出したけれど。
「どれどれ、普通の報告書ね」
内容は、港の市場における販売報告及び食料物流。
一見したら普通の報告書と変わらない。
「あれ?」
新しい商品が増えていたこと。
お店だからおかしくないけれど。
「これ、前からあった?」
「最近です」
知っているんだ、この書類って。
というか、あの山にあったんだね。
「問題は無いのかしら」
「一応は」
そうセシリアは付け加えた。
「無いのね」
私はそう思うことにした。
続いて、取り出したもう一枚の書類を。
「港町のパン屋で、新パン爆売れ」
これも、日付からすると最近のものかしら。
報告書だけれども、新聞の記事みたいなタイトルね。
というか、マドレーヌの話題そのものだけど、これを見ていたのかしら。
「セシリア。パンで報告が来るの?」
そう訊いてみた。
「税収に影響するためです」
セシリアがそう説明する。
パンが売れたら、その売り上げから税金を持っていくから。
確かに、その理由だったらおかしくないか。
と、思いたいけれども。
「領主ってパンの流行も管理するの!?」
そんなのどうでもよさそうな気がする。
まとめて持ってきても良いような。
「ああ、お腹空いてきた」
パンの話題も出てきたし、お昼くらいになっているし。
「昼食にしましょうか」
時間も察したのか、セシリアがそう提案してくる。
「ええ。あと、港町のパンが食べたい」
私は同意した後、マドレーヌの話や報告書のパンが食べたくなってくる。
食べないで港町へ行けば、パンは美味しいけれど。
空腹で倒れないか不安になる。
「食べてから行かれては?」
「そうね。そうするわ」
満腹で食べられない事にならなければ良いけれど。
「記録上は視察にします」
「やめて」
視察って、ただパン食べにいくだけど。
お出かけっていいじゃない。




