書類仕事1
マドレーヌが女神であったと分かった翌日。
私は書斎で書類を片付けていた。
「……私は昨日、女神に会ったのよね」
「女神、ですか?」
独り言をセシリアが耳にしていた。
半信半疑の表情で、私を見ている。
「何でもない」
流石に信じないよね。
いくら異世界でもファンタジーすぎるし。
「そうですか」
微笑みながら、私を受け流していた。
「にしても、普通に仕事するの、変な感じ」
何か特別な変化があるかと思ったけれども、そんな事はなかった。
ただ書類を片付けていくだけ。
税務や港湾に関するものなど。淡々と片付けていく。
「結構、前まで溜まっていた書類はある程度片付きましたね」
「そうね……」
どれくらいあるのよ。
何日かかっても片付けられないって。
まあ、私も中断させまくったりしていたし。
「それでも未処理が多すぎない?」
「はい。これが”通常”ですから。それを納得していたのでは?」
セシリアは平然としながら手伝っている。
「そうだけれども……」
「判断を保留していましたので。このマドレーヌ辺境領を見ていたら……」
確かに。
それで来たときには、あんなに溜まっていたのね。
「つまり未来の私に押し付けたって事ね」
苦笑いしながら、書類に署名をしていく。
「結果的には」
表情を変えずに返事をしていた。
「第三桟橋の猫が増えすぎた件」
結構片付けているのに、こんなのが出てくるなんて。
港湾に関する書類。
「……猫?」
どこで増えたのかしら。
去勢は出来ていないのかしらね。
「港の実質管理者です」
結構前よね。
そっちには行っていないから、見ていなかったけれど。
見てみようかしら。
魚を取られて、増えているのかな。
「漁で獲れた魚のサイズ、どこから大物扱いか」
税務からの書類。
こんなの分かるわけない。
「ねえ、これ……領主の判断なの?」
魚によって変わりそうだけど。
「前任は、三年保留しました」
そっか。って、ならないけれども。
かなり意味が分からない。
「保留って」
「大物になると、個人の獲物ではなく、”領地の資源”になりますから」
確かに大きかったら、何人とか何十人に分ける必要があるから。
資源になりそうね。
クジラとかマグロとかの話だけど。
「つまり?」
「帳簿に入ります」
港町の帳簿にね。
「女神像の帽子、変更願い」
教会から。これは港町の女神像ね。
昨日本人に会ったばかり。
「……本人に聞いた方が早くない?」
マドレーヌに聞こうかな。
帽子、何がいいのかなって。
「誰にですか?」
「いや、なんでもない」
危ない危ない、セシリアが知っているわけない。
マドレーヌ=女神というのは、隠さないと。
まあ、マドレーヌがバラしたら話は別だけど。
「なんでこんな細かいこと、領主が決めるの?」
小さいのに。
面倒じゃない?
「誰も決めないと止まるからです」
「……ほんと、地味」
これまで処理したのも、同様だったけれど。
「はい。でも止まると崩れます」
とりあえず片付けていくことにする。
いや、後回しにしようかな。
「他国航路・契約確認」
「なにこれ」
港町に関することだよね。
「前領主が最後まで触れなかったものです」
さっきのよりは重要そう。
マドレーヌがそう言葉にしていた。
「もう時間が過ぎているから……」
私は別の書類を見ていった。
もうちょっと後にしよう。
しばらく片付けていって、昼過ぎになった。
疲れが出てきている。
「転生特典ほしい……書類を瞬殺できるスキルとか……」
でも無いのは確定している。
「それはわたしも欲しいです」
セシリアは転生のことには触れなかったけれど。
「え、欲しいんだ」
「はい」




