夜空の答え
「マドレーヌさん……」
女神は去っていった。
呼び止めようとしたけれども、止めた。
話が終わったと思ったから。
手だけが少し動いただけ。
「……行っちゃった」
マドレーヌはどこに家があるのかな。
それとも、天上に住んでいるのかな。
「すっかり夜ね」
私は彼女よりも周りを眺めてみる。
もう真っ暗で、港町の家々で灯る光だけが見えていた。
空は星が見えていて、綺麗だなっていう感想だけ。
広場には、まだ人がいた。
ベンチに座って、夜風を浴びている。
「静かね」
耳に入ってくるのは、海から聞こえてくる波音だけ。
港は落ち着いていた。
「はぁ……確定かぁ……」
私には転生特典がない事がはっきりした。
チートとかを使って、色々と問題を解決する事は出来ないわけ。
しかも、特典がないのに観測者の立場を押しつけられた。
帳簿にかけないものを見届けるっていう。
ほぼ、地獄を見続けてって言われているようなもの。
「それに、逃げられない……」
三週目で特典がもらえるとしても、女神からは見捨てられる。
どっちにしたって、詰んでいるのがはっきりする。
「最悪じゃない……」
少し、海の音が聞こえる。
「……いや、最悪か」
私に乾いた笑いが出てきた。
少し笑った後、深く息を吸って海の香りを入れる。
「……あれ?」
いつの間にか、肩に入っていた力が抜けていた。
胸が軽く感じる。
「なんで……?」
さっきまであった、”焦り”が少し減っていた。
「そっか」
理由がなんとなく分かった。
「……答え、探さなくていいんだ」
正解を探していたけれど、マドレーヌが否定した。
だから探す必要はないって、思えるようになったんだ。
「見ていればいいだけなんだ」
私は港の方へ向いているベンチに座る。
背もたれに身体を預けながら、空を見てみた。
「綺麗ね」
空は黒に近いけれども、ちりばめるように星が輝いている。
さっきよりも多いような。
「……ずるいけど」
さっきよりもはにかむ感じで笑った。
「ちょっとだけ、楽」
しばらく私は、港の夜空を見ていた。
星を追っていくように。
「明日、答えを出さなくてもいい」
見ながら呟いた。
少しの間、風の音だけが聞こえる。
「……明日も、見るだけでいい」
しばらくして、空気が冷え込んできたから、立ち上がった。
そろそろ戻ろうかな。
「……見てなさいよ、女神様」
立ち上がったら、海に向かってそう言い放った、私。
言葉には反抗や信頼、意地など様々なものが混ざったような感じで。
そう言ってから、私は少しだけ空を見上げた。




