表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生特典なし悪役令嬢、辺境でなんとか暮らしてます 神様、便利スキルはいつ届きますか?  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/81

女神の告白と、特典が無い理由

「どういうこと?」


 私が問いかけると、マドレーヌは空を見上げた。

 橙色だいだいいろが残っていた空は、藍色あいいろに染まっていて、最初の星がにじむように浮かんでいた。


「もし特典があったら、あなたは”正しい答え”を探した」


 マドレーヌは私にそう言い放った。

 当たり前じゃん。


「……悪い?」


 そう言い返した私。

 机の上に答えが無かったとしても、探すんだから。


「悪くないわ。ただーー」


 私のことを否定しないマドレーヌ。

 少しだけ息をして、言葉を出していった。


「その場合、あなたは”人の判断”を見なかった」


 マドレーヌの言葉を耳にした瞬間、胸の奥が少し揺れた感じがする。


「農村も、港町も、帳簿の外の人も。全部、”正解”で処理して終わってた」


 私は何も言えなかった。

 ほんのちょっとだけ、沈黙が流れていく。


「それは救いじゃない。整理よ」


 はっきりとした、逃げ場のない言葉だった。


「私は奇跡を配る役じゃない」


 配る役じゃないって、貴女は女神じゃないの?


マドレーヌ辺境領(ここ)を壊さず、続かせる役」


 なにそれ。

 ただ続けているだけってことじゃん。


「だからあなたには、何も渡さなかった」


 マドレーヌ・エスティアはそう私に説明していく。

 転生特典を渡さなかった理由を。


「……ずるい」


 私はその説明に対して、率直そっちょくに感想を伝える。


「ええ。神様って、だいたいずるいの」


 否定するわけでもなく、肯定していた。

 「撤回てっかいしなさい」って、言われるかと思ったけれど。


「でもね」


 声のトーンがやわらかくなった。

 落ち着いた感じ。


「あなたが今日、ここで愚痴ぐちを言えた時点で、もう”役目”は始まってる」


「役目って……」


 なんなのだろう。

 特典が無いのに役目って。


「帳簿に書けないものを、見続ける役」


 貧乏くじを引いたかもしれない。

 責任だけが加算されているって。


「特典は?」


 私はもう一度確認してみた、


「無いわ」


 短くはっきりと。


「一生?」


「ええ、一生」


 マドレーヌは言い切ってしまった。

 これで私には転生特典は得られないのが確定。


「……ほんと、最悪」


 私は深くため息を吐いた。


「そうかもしれないわね」


 微笑ほほえみながら私をじっと見ている。


「三週目、行きたい気分。特典がないんだったら、見続けるなら」


 今度は得られるかもしれないから。

 心の中では冗談っぽいけれど、ほんのわずかだけあったりはする。


「できるわよ」


一瞬だけ、想像してしまった。

農村に行く前の私。

帳簿を見る前の私。

まだ、何も知らなかった私。

全部やり直せるなら――

楽かもしれない。


「え?」


 それに対してマドレーヌは、はっきりと肯定していた。

 どうしてなんだろう。


「記憶を持ってやり直すのも、選択のひとつ」


 一瞬だけ間が流れる。


「あなたが三週目を選ぶなら、私は止めない」


 すると、マドレーヌは真顔まがおになっていた。


「でもーー私はもう、あなたを見ない」


 何故かこの時だけ、冷たい感じの目をしている。

 それは軽蔑けいべつに近いものを感じた。


「やり直しを選ぶ人は多い」


 息を吐いた。


「でもね。見続ける人は、少ないの」


「冗談。逃げるわけにはいかないから」


 本気じゃない。

 乙女ゲームの悪役令嬢になったのも、面白いから。

 領主になっているし。


「そう。なら、私は見てるから」


 すると微笑みを戻して、温かさを戻した。


「逃げない限り、ちゃんと」


 マドレーヌは立ち上がった。

 微笑みを続けながら。


「それ、応援?」


 広場を後にしようとしているマドレーヌを、呼び止める。


「いいえ」


 立ち止まるマドレーヌ。


「確認よ」


 そして振り返った。


「壊さない人か、どうかの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ