集落への説明
「見届けたいのね」
「ええ」
翌日の昼下がり。
村長の家には、それぞれの集落の代表ともいえる人達が集まっていた。村人全員じゃないのは、全員に伝えきれないから。
馬車で村長の家までやってきて、私は家の中へ。
セシリアも一緒にやってきている。
「急に集まってごめんなさい」
私は代表達にそう謝罪する。
すると私を注視していた彼らは身構えていた。
「現状として、東の集落は霜が早く収穫量が少なく、西や南は比較的安定しているところにあります」
「知っている」
私が説明すると、代表の一人がそう言葉を飛ばした。
「どの集落も均す前に削っている状況で、それが帳簿に残っていません」
「やっていることだな」
頷きながら言及していた。
ここまでは説明。ここからが本題。
「助け合いをやめる、ではありません。”毎年、同じ形で均す”のをやめます」
代表達はじっと見ながら、私の宣言に耳を傾けていた。
誰も何のヤジを飛ばさず、反発も起きなかった。
ただ首を傾げ、疑問点が浮かんでいるような表情をしていた。
「では、今年はどうされるのですか?」
「倉は使えなくなるのでしょうか?」
「西が余っても、東には回らないのでしょうか?」
彼らは次々に質問を投げかけた。
私は一つ一つ答えたい。けれども、私が話していくことで、答えるような形にする。
「村の倉庫は、『最後の砦』に戻す。各集落の判断を、正式に認める。帳簿は『成果ではなく、『状態』を書く。均しは『緊急時』のみ。以上が領主、メリッサ・ビュージンゲンとして提案したいものです」
それを聞いた代表達は沈黙した。
彼らがやってきたこと、今までは公に認められなかったもの。私が正式に認める形にしたから。
沈黙の後、誰かが口を開いた。
「それで……誰かが失敗したら、どうなるのです?」
やはりそう来たね。
ここは領主として答えないと。
「その判断を許したのは、私です。責任は集落ではなく、領主である私が負います。だから、判断を隠さなくてもいいからね」
私のこの発言を聞いた途端、左右を見て困惑していた代表達が、目を見開いて納得したように”理解”していった。
モルガンはまだ何も発言していなかったが、ここで重い口を開いた。
「これは、強制では無い。だが、領主様は逃げないと言っておる」
耳を傾けていた代表達は、反論をしなかった。そして賛成の言葉も唱えなかった。
沈黙ともつかない間が、村長の家に流れていく。
決議も起こらないし、拍手も起こらない。
「さて、これで私が伝えたかったのは以上よ」
だからこそ、私がこの場を終わらせた。
代表達はそれぞれ考え込んだ顔をしながら、帰っていった。
「……分かったような、分からんような話だな」
やっぱり納得はしていないよね。
「お疲れ様でした」
「ありがとう」
セシリアがそう私にねぎらいの言葉をかける。
疲れたわね。
前世でこんなスピーチみたいなことをしたことなかったし。
でも、メリッサとしてはしたかな。舞踏会とか学院とかで。
「良いものじゃった」
「ええ。これからですけれど」
モルガンの感想に、苦笑いしながら答える。
「これで良くなるのかな」
「分からないです。ただ、少なくとも農村は、良くなると思いたいです」
私の呟きに、セシリアは考えを述べていった。
「そうね」
この村は良くなる。私はそう信じたい。
(拍手がないのは、失敗じゃない。でも成功でもない)




