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転生特典なし悪役令嬢、辺境でなんとか暮らしてます 神様、便利スキルはいつ届きますか?  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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20/23

農村の挨拶

 男性が帰った後、ミカエラがやってきた。

 どうしたんだろう。


「農村の村長がご挨拶に来られました」


「分かったわ」


 私は向かう途中、セシリアに小声で話しかける。


「農村ってあるのね」


「勿論ですよ。このマドレーヌ辺境領は、港町のタレスブールと農村のアイゼンポールの二つで成り立っているんです」


 簡単にセシリアが説明する。


「港町は人口が多いですが、港町も農村もどっちが優位というわけではなく、持ちつ持たれつの関係で成り立っています」


「欠けてもいけないのね」


 そう感じた。

 この場所はバランスで成り立っているのね。

 考えながら、とりあえず応接室へ。

 年配の男性と私よりも若い少女が座っていた。


「お待たせしました。領主のメリッサ・ビュージンゲンです」


 二人は立ち上がって、年配の男性が頭を下げた。


「わしはアイゼンポールの村長、モルガン・ジローナと申します。こちらは娘のルシアじゃ」


「よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 私は頭を下げて、会話が始まった。

 セシリアは町長達と同じように紅茶を置いていった。


「新しい領主様がお越しになったと聞きました。遅くなりましたが、ご挨拶を」


 当たり障りのない感じの言葉。

 何回も経験しているからかもしれないけれど。


「アイゼンポールでは去年より種籾が少ないため、来年の収穫に影響が出る可能性があるのじゃ」


 モルガンは現状を私に報告していく。

 種籾が少ない以外にも。

 それを私は遮ることなく聞いていった。


「失礼ですが、領主様はこれを”問題”だと思われますかな?」


「そうね。確かにそれは思うわね」


 何も無いというのはおかしいから。


「では、どうされるつもりですかのう?」


「すぐには動けないけれども、把握はしたいの」


 それを聞いて、モルガンは表情を変えなかった。

 ルシアは頷きながら聞いている。


「感謝します。ただ約束は要りません。覚えていてくだされば」


 頭を下げずそう言った。

 これって、期待を裏切られた事があるのね。


「遅くなりましたが、こちらお祝い代わりの手土産として……」


 渡してきたのは、小麦が入った布袋。

 重みはないものの、ちゃんと入っている。


「今年はここまで育っています」


「ありがとう。是非ともいただくわね」


 私は布袋を受け取る。


「もしよろしければ、こちらも。通常のもの食べられますので」


 今度は割れた干し肉を。


「良いの。ありがたいわ」


 するとほんのちょっとだけ空気が緩んだような気がする。


「少ないと申しましたが、何とか生きているのは女神様のおかげかもしれませんな」


 モルガンは天を一瞬だけ見て、呟いていた。

 女神がいるのね。

 会ってみたいわ。


「さて、領主様もお忙しいようなので、これで」


「本日はお越しいたいてありがとう」


 モルガンとルシアが頭を下げたら、私も下げる。


「また、季節が変わる頃に」


 そう言い残して、帰っていった。

 空になったカップをセシリアが片付ける。


「これで港町も農村も、代表者が挨拶をしたのね」


「そうなりますね」


 形の上だろうけれど、しなかったら関係が悪化するかもしれない。

 だからこそかも。


「どっちも課題があるのね」


 じゃなかったら、ここは天国かもしれない。

 そうじゃないから。


「ひとつひとつ解決していきましょうか」


 時間はたっぷりあるだろうから。



「港町は”今”を生きている。農村は”来年”を生きているのよね」


 どこかで誰かがそう呟いた。

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