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転生特典なし悪役令嬢、辺境でなんとか暮らしてます 神様、便利スキルはいつ届きますか?  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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13/22

帳簿と現実は、だいたい合っていない

 書類を順調に片付けていく。

 片付けるスピードは書類のそれぞれで変わっていく。

 簡単なのもあれば難しいのも。

 そんな中。


「あれ?」


 私はとある書類が気になった。


「どうされましたか?」


 セシリアが様子を見て訊いてくる。

 私はその書類を見せながら、話していく。


「この”備蓄穀物・三ヶ月分”って書いてある欄なんだけど……数量、合わなくない?」


 一見すれば、合っているように見える。


「合わない、とは?」


「帳簿だと”倉庫に50袋”ってあるのに、昨日見た感じだと、どう数えても40袋くらいしかなかった気がするのよね」


 でも実際の数とは誤差とはいえないくらい。

 それを聞いて、セシリアは沈黙した。

 何かを知っているのね。


「……気づいてしまいましたか」


 セシリアは苦笑いをしながら、私に正解を出していた。

 クイズだったら、ピンポンという音が流れていたと思う。


「もしかして、気づいちゃいけないやつ?」


 『君のような勘の良い領主は嫌いだよ』って言われるパターン?

 私は、亡き者に?

 ここにやってきて早々、この世界からも退場なの?


「”皆、気づかないふりをしていたやつ”です」


「そっちね」


 流石にそんな展開はあり得なかったか。

 考えすぎよね。

 でも、気づかないふりをしていたって、それも問題だけれども。


「倉庫で実際に見てみましょうか」


「ええ。確認したいから」


 私達は書斎を出ていって、倉庫に向かう。

 セシリアの表情的に重い感じじゃない。


「さて現物を見ましょう。数字は嘘をつかないから」


 書類の数字が間違っているかもしれないけれど、現物の数字は合っている。

 だからこそ、数字は嘘をつかない。


「現実的なお考えですね」


「もう現実に殴られ慣れてるだけよ」


 私は呆れながら、袋を数えていく。

 正直な数字を確認する。


「1、2、3……」


 適当にならないように、微妙に位置をずらしながら。

 重いけれどね。


「こちらで、40袋目です」


「やっぱり40袋。帳簿より10袋足りない」


 問題は起きていた。

 それをどうして記録していないのだろうか。


「これの理由はいくつか考えられます」


「盗難?」


 こっそりと盗んだのだろうか。

 空腹に耐えかねて食べたのか、高値で売ろうとしたか。


「確かに盗難は有り得ますが、売却目的は低いです。この辺境で、穀物を盗んで売れる場所はありませんから」


 それくらいここって何も無いのね。

 売れないなんて。


「じゃあ?」


「”去年の冬が厳しかった”、”港町に回した”、”誰かが判断して使った”、だいたいどれかです」


 食べるために持っていった。誰なのかは分からないけれど。

 そっちの方が現実的だし。


「全部、帳簿に書いていない理由ばっかりね」


 記録に残せないような理由。

 だからこそ、不突合になっているのだろうか。


「はい。”生きるために使った分”は、記録されていない事が多いです」


「なるほどね、”不正”っていうより、”現場判断”なのね」


「そうです、良くも悪くも」


 セシリアは頷きながら答えた。


「怒るべき案件かしら?」


「そうなると、皆が萎縮します」


 でしょうね。

 私が悪魔のような人物だって思うかもしれないし。


「じゃあ、黙認すべき?」


「黙認すれば、また同じようなことが起きます」


 何も言わないと、やってもいいって思うよね。


「うん、めんどうくさい」


「はい」


 対処方法が分からない。

 脳が疲れる。

 でも何かしないといけない。

 私は考えた後、セシリアに伝える。


「こうしましょう。”足りない10袋”を探すのはやめる。でも、これから使った分は、必ず理由だけ残す」


 在庫を把握できた。

 修正するにしても、理由が必要になる。


「理由、ですか?」


「数量じゃなくていい。”寒かったから”、”港に回した”、”人が増えたから”、それだけでいい」


 単純だけれども、はっきりとした理由。


「それは、随分と優しい帳簿ですね」


 セシリアは肩の力が抜けるようだった。


「帳簿は正確じゃなくていいの。”嘘をついていない”なら、それで十分」


 現在の状況が分かればいい。

 ずっと乖離したままだと、どこかで危険になるから。

 どこかで合わせないと。


「前の領主様達は、”数字が合わない”とだけ言っていました」


 セシリアは私の目を見ないで呟く。明後日の方向を見ているようだった。


「そして少ししたらいなくなりました」


 何人も変わっているのを見ているのね。


「私は数字より、人の判断を見たいの」


 現物だけが正直だから。


「この領地には、向いている考え方です」


 今度セシリアは微笑みながら、私を見る。


「向いているのか、染まっているのか分からないけどね」


 まだ私が来て一日も経っていない。

 これから染まっていくのかもしれないけれど。


「では、帳簿を書き直します」


 これでこの問題は解決する。


「お願い。あ、でもその前にーー」


「はい?」


「この”三ヶ月分”って表記、正直に”二ヶ月半”に変えておきましょう」


 リミットが短くなる。

 だけどそれでいい。

 数字は正しい方が良い。


「よろしいのですか?」


「希望的観測で生き残れるほど、私は神様に好かれていないのだから」

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