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白霊(しろたま)の巫女

その姿は、見る者の心を奪う。

長く艶のある白髪は、満ちる前の月光をそのまま編み込んだように輝き、銀の糸刺繍が施された純白のローブは風にたなびくたび、儚げにきらめく。肌は透き通るほど白く、銀に近い瞳にはどこか神聖な冷たさがある。全ての人が息を呑むその佇まい。まるで塵一つ触れてはならないような清らかな存在。


しかし、何よりも彼女を特別にしているのは――その身に宿る特異な力である。


「浄化」。


彼女の力は、この世界でも、人々が語り継ぐ伝説でもなく、遥か昔「異世界」から突然現れた種の一つ、**「白の古代種」**によって生まれたものだ。

あらゆる魔法、呪い、封印……そして生命そのものに纏わりつく“闇”を洗い流す力。触れるだけで黒い瘴気を払い、大地に生命の光を甦らせるその力は、見る者すべてに敬意と畏怖を抱かせた。それは「救済」であると同時に、強大すぎる魔力を操る彼女自身を、他者と決定的に隔てる“領域”でもあった。


人々は彼女をこう呼んだ。


――“白霊の巫女”。


世界を滅ぼす「闇」を消し去るために選ばれた“神の器”。その役割を称え、崇める者が絶えたことはない。


彼女の力によって、多くの荒廃した都市が息を吹き返した。絶望に支配された魂が救われた。人々は願い、祈りを込めた声を収めた壺を彼女に捧げ、「光」を求めた。


だが、その清らかさに揺らぎなく見える巫女とて、“神”ではない。ただの人の心を持つ存在だ。そして心の奥深くには、言葉にならない小さな苦悩が渦巻いていることを知る者は誰もいなかった。


彼女自身、ずっと問うている。


――浄化とは、本当にすべてを救うものなのか?


彼女の浄化は「必要な闇」すら消し去ってしまう危険を孕んでいた。善であるはずの光が、ただ破壊に等しい結果を招くこともあった。それでも人々の期待の声に応えるため、彼女はその疑問を胸の奥深くに押し込め続けた。


「私は光をもたらす者。ただ光を届けるために、私の手は動く。何も迷う必要はない……」


その言葉に確信はなかった。けれど、心の中に迷いがあろうとも、周囲から寄せられる祈りの声だけは彼女に届く。それがどれほど重い責務であれ、背負わなければならないのが彼女の“存在意義”なのだと信じきるしかなかった。


純粋に見える白と、触れるたび複雑に絡む“闇”。

その狭間で揺れながら、彼女は今日もまた新たな祈りに応えるため、剣を手にして歩み始める――。


そう、彼女の名は“ソラ・ルミナス”


彼女の生み出す光がどこに導かれるのか、それはまだ誰も知らない

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