とにかく暑い、夏着物
着付け教室?行ったことないです。
行きつけの呉服屋さん?そんなのとっくに廃業してしまいました。
和裁?高校の時の家庭科で浴衣は縫ったので、同じ方法でウールも縫えるはず。
家に和室は一つだけ。あんこが苦手だから茶道に興味なし。日舞はやってるけど永遠の初心者の還暦おばさんの、ゆるい着物生活です。
「いつもお着物なんですか?」
式典でも会合でもない時に、田吾作みたいな絣着物で出てくる私への社交辞令はたいていこれ。すかさず答える。
「いいえ、夏は暑いですから。」
ここ三十年程の南関東の夏は本当に暑い。
夏の着物は大きく分けて二種類ある。透ける着物と透けない着物だ。
透ける着物はうすものと言われる。
よく蝉の羽のようだなどと言われて、長じゅばんを重ねて透明感を楽しみながら涼を演出するようにできている。蝉の羽と言ってもよくいるアブラゼミの茶色い木屑のような羽のことではなくて別の種類のもっと奇麗な蝉の羽のことなんだろうけど、言葉自体は美しい。
しかしいくら薄くても、二枚重ねてその上帯まで締めたら暑いです。
もちろん着姿はすごく立派になる。
とくに中高年が和装すると、洋装の何倍も何十倍も立派な姿になる。多分うすもの二枚重ねより美しくて立派でどこに行っても重んじられる夏の衣服は世界中どこにもないだろう。
でも、この暑い夏にそこまで頑張って立派に見せなきゃならない集まりなんて一生にそう何回もあるものじゃないのだ。
そこで、頑張らなくてもいいがちょい立派に見せたいときには、透ける着物のうちで浴衣としても使えるとされている本麻や紅梅織を冷感キャミソールと裾除けで着るか、透けない夏着物である浴衣や高機能ポリエステルのセオアルファなどを最低限の下着で着るかの二択になるだろう。こうして着れば、首元に半襟が見えない姿になるわけだが、暑いさなかに半襟があるかどうかなど人はあまり気にしない。デニムやチノパンでいかれる席だったらこれで十分だし、着物の色がらをよく選んで帯に帯締めをして足袋をはけばレストランランチや墓参りだって問題なかったりする。
なので、夏の着物は気の張る席は薄物二枚重ねに立派な夏帯、デニムチノパン席は半襟がなくても胸と脚が見えなければオッケーなわけだ。
しかし、長じゅばんがなくても帯を締めるとやはり暑い。帯がいかんのだ。
となると一番涼しい和装はやはり甚平だろう。帯がないのはやはり大きなアドバンテージだ。
市販の女の甚平は磯丸水産の制服みたいに派手で素材も厚ぼったいしズボンが短くて脚が出るので中高年には厳しい。
肌に張り付かなくて涼しい綿麻や絞りなどの古い浴衣を縫いなおしてロング甚平にすれば、市販品より涼しいものが作れそうだ。
何枚か作って教室をやるときや、買い物などの時に着てみたいと思っている。