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3 モナミちゃんチュートリアルを聞く。

 説明回。無くても良いよな気がするけれど。



 今日も私は頑張った。自分で自分を褒めてあげたい。というか労りたい。


 なのでナマコだー!



「さっそくログインと行きますわ!」


 学校から帰ってきてお風呂に入って……準備は万端。私の足は蒸れてない! ケアもちゃんとしたし。


「待ってモナ! モナはナマコに毒されてるの! 目を覚まして!」


「お黙り!」


 百合子が邪魔してきた。なんて子なのかしら。私の楽しみを奪おうだなんて。やはりピーするか。


 というか何で百合子は体操服なんだろう。家の中だからどんな格好でも大丈夫と言えば大丈夫なんだけど……うちの学校の体操服じゃない所に百合子の闇を感じるわ。


 ……眼鏡に体操服って属性盛りすぎよね? まぁ家の中だから良いけどさ。


「絶対におかしいって! なんでそんなにノリノリなのよ!? おかしいでしょ!」


 百合子は熱く叫んでいる。でも体操服だから何となくスポコンな感じがする。ならばと私も熱く叫ばせてもらう。


「ナマコが私を呼んでいるの。南国パラダイスで癒されよと囁いてくるの。レッツバカンスとね!」


 あの太陽と海風とナマコボディが恋しくて仕方ない。今日は授業中でさえ、ずっと気もそぞろだったのだ。あの夏の日差しが私を呼んでるの。


 カモン! バッカンス! とね。


 夏の日差しはナマコにとっては良くないとは思うけど……そこはきっとゲームだもん。というかナマコって水中生物じゃん。絶対にダメよね。干しナマコになるわ。


「それは絶対に不味いやつだってば!」


「お黙り!」


 私は引かない。いざとなればこの赤ブルマ眼鏡百合子を……殺っちゃうよ?


「くっ……私はモナのためにも引く気はないわ! どうしてもと言うなら私の屍を踏み越えて……」



 あら、好都合。やったれ。



「おらぁ!」


「ごふっ!?」


 邪魔物は片付けた。先制パンチで黙らせた。百合子は頑丈だ。だから問題はない。ついでに縄で縛り付けておこう。確か父さんの書斎にそれっぽい物があったはず。さてさて……。


「モ……モナ……」


「とぅえい!」


「はがっ!」


 よし、ダウン攻撃で痙攣した。いわゆる『スタン』ね。死んでない、死んでない。


「相変わらずしぶといわねー。でもこれで安心。というか何で百合子はナマコに対してそこまで嫌悪感を持ってるのよ。あなたがこのナマコゲームを持ってきたのに」


「…………」



 返事がない。百合子は屍のようだ。



「……えい」


 ちょっと顔を踏んでみた。勿論、素足の生足だ。私の足は蒸れてない! むしろ石鹸の香りがするはずだ!


「ぐふっ……ぐふふ……モナたまのナマ足……ぐふふ……」


 百合子は幸せそうに笑っていた。白目だ。眼鏡の奥が人外魔境だ。


「……意識が無いはずなのに、この反応……早く縛らないと」


 とりあえず駆け足で父さんの書斎に突撃した。そして書斎の壁に掛けてあった頑丈そうな縄を発見。急いで戻り、変態を縛っておいた。


 その後。私は逃げるようにシアタールームへと駆け込みダイブマッスィーンに寝転んだ。


 ……父さんの書斎に何故頑丈な縄が置いてあったのかは考えないことにする。ゲームでもそういうことはよくあるし。うん。うちも闇が深いなぁ。


 ではマシン起動っと。



 ピロリン♪ 

 


『あー、モナミじゃん? まだ情報処理中じゃん。一応セーフガードがあるけど緊急停止をあんまりやると危険じゃん? 今度からは気を付けるじゃん』


「……なぬ?」


 ダイブマシンに寝転んで、スイッチ入れて……意識が遠くなっていき、気付いたら電子的な空間にいた。近未来的というか……まさにデジタルな世界というか……。


「目がチカチカするんですけど」


 目の前には、いつもの起動画面とはまるで違う、デジタルな世界が広がっていた。漆黒の闇の中、光るフレームがあちこちを縁取るヘンテコな空間。なんじゃこれ?


 まさかマシンの起動時でこんなことになってるなんて思わなかった。


 まさか壊れた?


 昨日は百合子が邪魔してあのあとマッスィーンに接続すら出来なかった。だからこんな事になってるとは思わなかった。思ってたまるか!


 なんとも不思議な風景にモナたんは固まっていた。真っ黒な空間に光の文字みたいなのが流れ星のように規則正しく流れていく。光る文字は英語っぽいし、数式にも見える。


 ……これはデバッグモードなのかな。これ……プレイヤーが見ていいのかな。


『普通のソフトならここまでの修復は要らないじゃん。でもフルダイブシステムは根本的に他のゲームとは別物だからこの辺から治す必要があるじゃん……治ったじゃん!』


 光る文字と暗闇の世界から、いつもの真っ白な世界へとラグりながら戻っていく。


 あっという間だ。あっという間にいつもの風景に変わっていた。真っ白な大地に青空がどこまでも広がる電脳世界。


 うん、この真っ白にして、真っ青な空間こそがダイブマシンのいつもの起動画面だ。アバターの私もちゃんと表示されてる。


 モコモコのウサギちゃん……それが私のアバターだ。モコモコウサギだけど人間サイズで二足立ちしてるから、この上なくシュールではあるけれど。


 でもこれが今の技術の最先端だったんだよね。人間サイズのものにしか感覚を移せない。だからこそナマコはおかしいのだ。まぁそんなことはどうでもいい。ゲームが出来ればな!


「よかった。元に戻って。それはともかくよ。何であなたがここに居るの? ここはまだナマコの世界じゃないでしょうに」


 まだソフトの起動もしてないのに何故ダイブマッスィーンのホーム画面に光の玉が居るのだろう。あの独特のしゃべり方から察するに間違いなくナマコ世界の光玉だ。ゲームを始めてからずっと一緒だったあの光る玉だ。なんか光る虫っぽい。あえて蛍とは言いたくない。なんか大きいし。


『これでもミーは次世代型の高性能AIじゃん。このマシンのOSに任せてたらあと三日は修復に掛かるじゃん。本体の設定でミーをここに出て来れなくするようにも出来るけど……』


「でかしたわ。さあ私の桃源郷に行くわよ。ハリーハリー!」


 細かいことは気にしない。三日もお預けなんてノーサンキュー! 


『……せめてチュートリアルはクリアして欲しいじゃん。じゃ、ナマコオンラインを起動するじゃん! 開けー! ナマコー!』


「ちょっ、なにその起動ワード!?」


 不穏な気配たっぷりの起動ワードに白い世界が歪んでいく。私の肉体も……感覚も全てが溶けていく。青空もシュルレアリスムの絵画のように溶けていく。


 あぁ、うさたんが……私のうさたんも溶けていくー……というか私がうさたんなのだけどー。どろりー。


『あ、デイリーログインボーナスでナマコスキルポイントが貰えるじゃん! ちゃんと説明するから、きちんとスキルを取るじゃん。これもチュートリアルじゃん』


 光玉の陽気な声が聞こえた。とろける世界にとってもミスマッチ。そしてデイリーログインとかマジか?


「ソシャゲか! 私は攻略に興味ないし。南国リゾートでのんびりしたいだけなんですけど」


 気付いたら私は南国の小さな島でナマコになっていた。砂浜の上にリアルなナマコがちょこんである。なんとも驚きだが、ここまでシームレスだ。他のゲームではこんなにスムーズにゲームが始まることは無い。必ず何らかのワンクッションがある。というか違和感が。


 だからこそ、このゲームはすごいのだ。何の違和感も無くナマコになっているし……いや、すごい違和感はあるけどさ。感覚がナマコだし。手も足も出ないし。


 視覚に関しては俯瞰視点だから周りがよく見えてる。ナマコに目ってないもんね。この辺はゲームよね。うんうん。


 今日も南国リゾートは眩しくてぬくぬくだわ。マイホーム……最高です~。


『ステータス画面を出して、そこからヘルプを選んで……聞いてるじゃん?』 


「はいはい、分かったわよ。チュートリアルが終わったら好きなだけのんびりさせてもらうからね」


 私はこのゲームに癒しを、癒しだけを求めているのだから!

 

 で……ステータスってどうやって出すのかしら。え~と……分かんないわね。とりあえず心の中で叫んでみるか。



 ふぅぅぅ……ステェェェタスゥゥゥゥ! オォォォォォプゥゥゥゥンンンンン! 



 ……。



 ……出ないなぁ。結構叫んだのに。


「ステータス画面が出ないから、まったりする。これは引きこもれという神の意思よね!」


 サンキューゴッド。きっとアロハな神様だ。アロハー。


『……諦めるの早すぎじゃん。本編も少しは進めて欲しいじゃん』


「本編なんてあるの?」


 私はキョトンとしちゃうわ。ナマコだから目はないけど。


 今更だけど島にはナマコと空飛ぶ光る玉。


 ……なんつーかカオスよねぇ。ゲームだから気にしないけど。


『むしろ本編がこのゲーム本体じゃん!? 仕方無いじゃん。もう一回説明するじゃん』


 光の玉が説明していく。簡単にまとめるとこうだ。


 魔王が現れてお姫様を誘拐した。ナマコよ、ヘルプ! 


『簡単にまとめすぎじゃん!? もっと細々と話したじゃん!? この国の説明とか!』


 だって長いんだもん。国の名前とかお姫様の事とか興味無いし。勿論魔王も。ちなみにこれで二回目の説明らしい。最初の説明はゲームを開始してすぐにされたみたいだけど、その時は丁度ナマコショックで全く耳に入ってなかったみたい。当然だと思う。


 ていうかすごい王道展開にビビる。


「何でナマコに助けを求めたの? そこはもっと強そうな生き物にするべきじゃないの?」


 普通に考えてナマコは無い。魔王相手にナマコは無いわ。何を考えたら魔王対策でナマコ戦士を呼び寄せるのか。絶対に勝てないじゃん。だってナマコだよ? 魔王も苦笑するしかないわ。


『……ゲームの根幹にガチで突っ込んじゃいけないじゃん。その辺はスルーして、とりあえずお姫様を救出して欲しいじゃん』


「それは絶対に助けないと不味いの? 助けたら物語が終わってしまうわよね?」


 そうなるとゲーム終了……魔王が討伐なんてされたら私のナマコライフが消えてしまうのでは? 


 この手のオンラインゲームは基本的に終わりがない事が多い。配信コンテンツを増やし続けるのがオンラインゲームの宿命とも言える。だからこそ、この王道展開に驚いた。『終わりがある』というのは結構冒険だとモナたんは思います。


『そこは大丈夫じゃん。ネタバレするから詳しくは言えないけど、このゲームは基本的にエンドレスじゃん。終わりなき最後のファンタジー的な感じじゃん。でも人気が無くなってサービス終了は……普通にありえるけど』


 光玉の語尾から『じゃん』が消えた。これはマジか。本気のトーンだ。


「ガチか。だったらなおのこと何故ナマコにしたの? 普通に人間キャラで良かったじゃん」


 この小さな島でもナマコオンラインのすごさは身に染みてよく分かる。本当に南国に来たような暑さや、日差しの温もりをナマコボディに感じるのだ。海風の潮の匂いやヤシの木の葉が揺れる音やナマコボディに触れてる砂浜の砂粒一つ一つの感覚もあるのだ。ナマコボディでも全身でそれが分かる。分かっちゃいけない気もするけど、すごいと言えばすごいよね。


『……このゲーム……ナマコオンラインじゃん。原作の人が押しきったじゃん。実は原作者が社長じゃん』


 すごい事実が告げられた。


 社長……ナマコ大好きなのね。しかも原作者って。どこから突っ込んだらいいのかしら。


『だからナマコ推しじゃん。統轄AIも反対してたじゃん。でも賭けに負けて押しきられたじゃん。ミー達も頑張ったじゃん。だから王道ファンタジーじゃん。RPG要素はミー達AIの総意じゃん。なんとか捩じ込んだじゃん。だからこの世界観を楽しんで欲しいじゃん』


 光の玉は必死になって説明した。ピカピカうるさくて多少ウザい。泣きそうな声を出すな。うっとおしい。


 だが、この慟哭で合点がいった。


 だからこんなへんてこな感じなのか。このゲームに無理矢理感があったのは本当に無理矢理付けたからだったのだ。


 そんなの私に言われても困るわー。


 何で私はゲーム内でナビキャラの愚痴を聞いているのかな。この光の玉は本当にAIなのかしら。開発の人とか運営の人とかが中に居そうで怖い。


『チュートリアルも徹底して作ったじゃん。ちゃんと進めていけばなんとかなるようにAI会議で頑張ったじゃん……連日連夜の大会議だったじゃん。でもチュートリアルすら受けずにゲームを辞めてく人が多すぎじゃん……ミー達も頑張ったのに……』


 光の玉は泣きだした。


 うわぁ……既にそんな事態になってたなんて。ど、どうしよう。光玉がすっごい落ち込んでる。さっきまでふよふよと中空に浮かんでいたのに今は地面すれすれで今にも地に触れそうだ。


 私もこの南国リゾートをなんとしても守りたいけれど……どないせぇ言うんや。


「ひょっとしてこのゲームって結構ピンチだったりするの?」


 いきなりサービス停止とか……普通にありそうだ。だってナマコだし。モナミちゃんは、ちょっと不安になりました。


『実はそうでもないじゃん。このゲームは環境シュミレーターとしても活用されてるじゃん。だからソフトが無くてもフルダイブマシンさえあれば観客としてこの世界を楽しむことが可能じゃん』


 光の玉は意外にもケロリと復活した。軽いなぁ、こいつ。


「へー。なんかすごいねー」


 モナミちゃんは細かいことを気にしない。


 しっかしマシンさえあれば観客として楽しめるのかぁ。水族館みたいなものかな。


 ん? ということは……もしかしてナマコになってまでこのゲームをやらなくても癒しは得られるのでは? モナミちゃんは気付いてしまったわ!


『あ、感覚は全く無いから映像作品みたいな感じじゃん。それに観れる場所は限られてるじゃん。大半がナマコ視点じゃん』


 シット! やはりダメか。というかナマコ視点とかアホか。


「ちっ、どこまでナマコ推しにしたいのよ。このリゾート感を五感全てで得るためにはナマコになるのが必須って事なのね」


 なんて厄介な。私はナマコでも大丈夫だけど普通の人はハードル高すぎよ。


『……じゃん』


 ……あれ?


 光玉は急に言葉の歯切れが悪くなった。あれー? これは……あれかしら? この手のゲームを幾つも攻略してきた百戦錬磨の私は何となく察知した。これは何か裏があるわね?


「……このゲームってナマコ必須なのよね?」


 確認という名のだめ押ししてみましたー。


『…………じゃん?』


 光玉は挙動不審な感じで、ぴっかんぴっかんした。


 その微妙なあざとさにモナミちゃんはイラっとした。


「……おらぁ! 秘密にしてることをきりきりと吐けやぁ! 吐けおらぁ! ナマコだからって舐めんなおらぁ!」


 ちょっと脅してみた。モナミちゃんは現役美少女高校生ゆえ。


『じゃーん!? モナミはヤクザじゃん!? そこはネタバレで言えないじゃん! というかチュートリアルを終わらせれば分かるじゃん! さっさとステータスを開くじゃん!』


 あ、このやろう逆ギレしやがった。私もキレてやるー!


「ステータスが開けないんじゃー!」


 叫んでも出ないんじゃー! どうなっとるんじゃー!


 南国の砂浜でナマコが叫ぶ。中身は現役美少女女子高生のナマコだ。でも見た目はガチの生ナマコ。いや、気にしちゃいけないわ。女子高生はノリに乗る生き物だからね。


『声に出してステータス! って言えば視界に出るじゃん! 説明したじゃん!』


「……そうだっけ? ステータス!」


 泣いてる光虫から思ったよりも冷静な突っ込みを受けたので私も何事も無かったかのように振る舞う事にした。


 ぬ?


 お、おお? なんか視界に色々出てきた。透け透けのウィンドウが幾つもポップしたわ! カテゴリーが沢山あって……ん? なんか目の端にゲージがある。これは浮かんでる……のか?


「なにこのゲージ。二本あるけど……片方は空っぽ?」


 視界の左上の方に何となく浮かんでる。意識するとはっきり見える。意識が外れると何となく見えなくなる。


 ……なんかすごいけど。なにこれ。こんな技術は初めて見た。


『……チュートリアル開始じゃん。本当なら開始して直後にやるやつじゃん。二本並んでる上のゲージがHPじゃん。黄色いバーが尽きると死ぬじゃん。下のバーはNPじゃん』


 光虫の説明が始まった。ナビボイスに滲む疲労感は無視させてもらおう。うむむ。この黄色いのがHPか。


 ……で、その下の灰色ゲージは何だ?


「えぬぴー?」


 なんぞ? それ。エヌってなんだろう? 


『ナマコポイントの略じゃん。MPみたいなもんじゃん』


「MPで良くない?」


 何故わざわざ名を変えた。エヌとエムで紛らわしいというのに。


『ダメじゃん。このNPはナマコっぽい事をすることで溜まっていく性質があるじゃん』


 ……不味い。理解が出来なくなってきた。


『ナマコムーブを行いナマコポイントを溜める。そして溜まったポイントを使用してスキルを発動する。これがナマコオンラインの基本じゃん』


「せんせー! スキルってなんですかー」


 ナマコムーブも気になるけどー!


『NSPを消費して覚えるナマコスキルじゃん。色々あるからぜひ楽しんで欲しいじゃん』


 何となく光の玉は自慢気だ。更にイラっとしてきたが我慢することにした。


「……えぬえすぴーって何よ」


 モナミちゃんは大人の女ですから人前で醜態を晒さないの。怒気を抑えて頑張るのですわ。じゃないと話が進まないからね。


『NSPっていうのはナマコスキルポイントの略じゃん。これは実績を積んだり、称号をもらった時にガッツリ貰えるじゃん。デイリーログインボーナスでも貰えるからもりもり溜まっていくじゃん! だからガンガン使っていくじゃん!』


「……うん。分かったよ」


 モナたんは疲労感に包まれた。何でこんなにナマコ推しなのかと。あ、社長か。社長のせいか。何でもナマコ付けりゃ良いと思ってんなー。


『ステータス画面にスキルの欄があるじゃん? そこに意識を集中させるとコマンドが開くじゃん』


 どれどれ……ぬぅん!


 おぉ、本当に選択出来たし、ウィンドウが開いた……って。


「……なにこのスキル数は」


 ウィンドウがデカイ。今の私は自分のナマコボディを後ろから俯瞰するような視点だけどそれでも視界の半分がリストで埋まった。劇場の大スクリーンみたいだ。


『初期状態でも5千を越えるスキルがあるじゃん! 基本的に今現在の状態で使えるスキルしか載ってないじゃん! ポイントが足りないのはお愛嬌じゃん?』


 うわぁ……カーソルが……どこまでも……うわぁ……集中すると勝手にフォーカスされるのね、これ。『踊る』とか『いじける』とかあるけど、それってスキルなの? 


『チュートリアルで覚えられるスキルが幾つかあるじゃん。だからチュートリアルが終わってから取得するのをお勧めするじゃん!』

 

 いまだかつてないほどにナビボイスが弾んでいた。確かにこれは……すごいかも。


「……うん。なんかすごいね。執念に近いものをこのスキルリストに感じるよ」


 なんか『甘える』とか『すねる』とか『跳ねる』とかあるけど……若干狂ってね? ナマコに何をさせたいのかしら?


『ふふふ、チュートリアルは、まだ始まったばかりじゃん。あとステータスも説明しとくじゃん』


「まだやんの?」


 モナたん、なんか疲れて来ちゃった。少しは休みたいなー。折角の南国リゾートなんだからさ。ぷへー。



 

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