天才の事情
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石原はびしょ濡れになりながらコックピットで採血検査の結果を待っていた。離陸したところでレオリコがコリンジャルスの毒に犯されていることが判明した。即席でワクチンを作ってレオリコに注射すると、少し楽になったようで寝息をかいて眠り始めた。
石原は安堵した、のも束の間。レッドアラートが鳴った。石原は何事かと思ってコックピットのモニターに目をやった。そこにはまさに驚愕の光景があった。状況を理解した石原は「目には目をアーマーにはアーマーを・・・・」と呟いてシャトルをオートパイロットに設定し、ワイヤレスイヤホンを耳にはめ、スーツに着替えた。
シャトルの上部ハッチから翼の上に立つ石原にはオートコンピューターの警鐘のおかげで相手がどこにいるか手に取るようにわかった。
後ろから迫り来るバウンティハンターの攻撃をかわし、足にブラスター攻撃を仕掛けるとまんまと引っかかり、体勢を崩した。お次はエレクトロニクスワイヤーで相手を縛り上げ、電流を入れた。
敵は右翼から転がって落ちそうになったがジェットパックでなんとか落ちるのを免れ、攻撃を繰り出そうとした。しかし、石原のアームミサイルによって武装解除され、肉弾戦を余儀なくされてしまった。
敵は「はぁ・・・はぁ・・・」と荒い息遣いで石原に飛び掛かってきた。石原は「うりゃっ!!」という掛け声と共に相手を迎え撃ったが突然の雷によって翼全体に衝撃が行き渡り、二人は倒れてしまった。
石原の上に敵が倒れてきた時、ふとした違和感を感じた。
チェストアーマーの部分に妙な膨らみがあり、ヘルメット越しに見た敵の目は女のようだった。肩を覆い込んでくる手つきもまるで恋人と交わる若い女のようだ。
こいつはなんなんだ。と密かに思った。自分達の命を狙うバウンティハンターに違いはないのだが、どこか・・・・良い匂いがする。
しばらく抱き合いながら倒れていると相手が真紅のマスクを脱いだ。
そこに現れたのは美しい長い赤い髪と整った顔立ちの上に浮かび立つルビーのように輝く眼、できもの一つない白く美しい肌、男を誘惑するような口元の動き、それになによりも見ているだけで幸せな滑らかな首筋・・・石原は無意識のうちにその首筋を撫でていた。
なんということだ。この卑しいバウンティハンターは絶世の美女だったのだ。
女はくすぐったそうに体をうねらせた後、再び雷が鳴ったタイミングでマスク越しに石原へキスをした。
だめだ。マスクを脱いではいけない。殺される。だが・・・しかし・・・・
相手は尚その口づけを止めようとしない。石原は欲望に負け、ナノテクマスクを取った。その後二人はその唇が枯れるまで激しく交わっていた。
それはまさに何ヶ月ぶりかのご馳走にありついた獣のようだった。
それぐらい二人の美男美女の交わりには罪があり、それでいて美しいものだった。もう一度雷鳴が響いた時二人は我に帰った。そして気まずそうにお互いから離れた。しかし、レディアーミテイジはもう一度後ろから抱きつき、交わることを始めた。
石原はこれ以上このようなことをしているとバチが当たると思った。しかしそんな考えに反して石原は乱暴に彼女の唇を吸い尽くしていた。
何より誰かに対しての申し訳ない気持ちが大きかった。舌で自分の口の中を全て持っていきそうなこの女と生きていくべきか、それとも反乱に一生を捧げるべきか。彼は一世一代の決断を綺麗な足を自分の体に絡めてくる淫女に迫られていた。
時折目を開けて、見る彼女は本当に美しく、欲を駆られるものだった。まるで餌に食らいついた野生動物のように大雨に濡れながら、雷に照らされながら唇を奪ってくる。
彼は決断した。
石原が彼女の綺麗な頬を味わい始めると、彼女も自分の耳と頸を味わい始める。そして石原は彼女の装甲服の繋ぎ目を見つけて外し、中の伸縮自在のストレッチスーツの上で手をうねらせ、膨らみとでっぱりを卑しく何度も何度も弄った。
彼女はビオラのような綺麗な声を上げると彼の耳を優しくかじった。
その次の瞬間。石原は彼女の下になり、彼女を船の外側へ放り投げた。
彼女は最後の絶頂を迎え、大雨の流れ注ぐ、大海原へと落ちていった。装甲をつけていない彼女はもはや生きて伸びることは出来ないだろう。
石原は少しの後悔と少しの満足感を噛み締めて、これでよかったのだ。と自分に言い聞かせてハッチから船内へ戻っていった。
スーツを脱いだ石原はレオリコが寝ている部屋へと入った。
すやすやと眠るレオリコの顔を見て石原は思った。美しいと。どこか幼げなその顔は何かへ縋りたい気持ちで一杯のようだった。
石原は彼女に毛布をかけ、おでこに優しく接吻して部屋を出た。石原の、雨の惑星、レイニルナでの甘酸っぱい思い出であった。
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