記憶の娘
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赤と青のポータルが開く。そこには別次元の石原春がいた。黒と茶色のベルトの付いたブーツ、真っ黒なレザーレギンスに巻き付いたシルバーの留め金とホルスターロープのぶら下がったベルトから垂れる腰のローブ。
それに繋がる濃茶のサスペンダーの下に広がる黒の半羽織。白のグローブにシルバーのベルト。ベルトから弛む袖。色白な顔、首、襟足が白化しているオールバックの茶髪。
忘れもしない。いいや、忘れるわけがない。
あの男だ。S-210-A諸悪の根源。全次元の中で最も石原らしい石原。天才の中の天才。次元移動ということを教えている。
記憶の中の石原は興味がなさそうに聞いている。
そして「パスだ。」といった。S-210-Aは憤慨して理由を尋ねる。
しかし「違うタイプの石原みたいだね。」と穏やかにいうだけだった。冷酷なこの男を納得させるには充分ではないものだった。
S-210-Aは「よかろう」と呟いたのち、ポータルの中に入って帰っていった。
これが終わりをもたらす引き金なのだ。顛末は分かっている。しかし、別の結末を待っている自分がいる。
その時ガレージの扉が開く。前髪を綺麗に揃えた友だ。白のスカートとネイビーのカーディガンが似合う奇麗な子だった。
記憶の中の石原と友は会話を交わす。この会話も覚えている。全て鮮明に覚えている。あの時、友がどんな顔をしていたか。どんな事をどんな口調でいったか。
それに対して、自分がどのような返答をしたか。
自分とサトリアーニはまだ存在している。記憶の中でも歩いていける。今見ている記憶の中の石原春も生きている。生きているからこそ今自分がいる。
だが、この記憶の中にいる友はもうどこにも存在しない。全てはとっかえの効くもの。全ては取り繕うことができるもの。別次元に移って生きていけば良いもの。
それが石原のポリシーの一つでもあった。
だが彼にとって友はとっかえの利かない者だった。いくら平行世界が無限にあるからといって、彼にとって別次元の友はただの別人でしかなかった。
次の瞬間。記憶の中の石原は後方へ吹き飛ばされる。彼は目を覆った。
天井から赤と青のポータルが現れる。
そこからピンクの光を放つ爆弾が落ちる。光が点滅し、ピ、ピ、ピという音が鳴る。
友はそれが自分の命を奪う鋼だということに気づいていない。
爆弾を覗き込む。記憶の中の石原は既にそれが爆弾であることに気づいていた。そしてその爆弾をあつらえたのはS-210-Aであることにも気づいていた。
次の瞬間。記憶の中の石原の感情、普通の人間が持ちうる”普通”その全てを失うことになる。
静寂の中のピ、ピ、ピという音を突き破って、巨大な破裂音が辺りを支配する。
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